イースIIクロニクルズ【ゲームレビュー】

日本を代表するアクションRPG『イースIIクロニクルズ』を、フランスを拠点に活動するDotEmuがスマートフォン向けに移植した本作。長年のファンにもうれしい2種類のグラフィックモードを選択できる機能が搭載され、特定の条件をアンロックすることでもう1つのゲームモード「タイムアタック」もプレイできる。

往年の名作RPGが新旧のグラフィック、BGMを切り替えて楽しめる!

『イース』とは、日本ファルコムが1987年6月に発売したホビー用PC向けのアクションRPG『イース Ancient Ys Vanished Omen』からはじまる、今もなお根強い人気を誇るシリーズだ。1986年5月に『ドラゴンクエスト』が、1987年12月には『ファイナルファンタジー』の第1作がそれぞれ発売されているが、日本国内のRPG黎明期とも言えるこのころ、『イース』は独特のバトルシステムやアニメチックなキャラクターデザイン、また本編中にADVのように登場するイラストなど、他とは一線を画す趣向で当時のユーザーに大きな衝撃を与えた。

以降、『イース』シリーズは正式ナンバリングタイトルが7本(2016年夏に8本目となる最新作も発売予定)、番外編や派生作品がリリースされているが、自社リメイクや家庭用ゲーム機向けにも数多く展開されている。実際にゲームをプレイしたことがなくても、多くの人が1度は耳にしたことのあるタイトルではないだろうか。

これまでリリースされたナンバリングタイトルは以下のとおりで、本作『イースIIクロニクルズ』のストーリーは『イースII Ancient Ys Vanished The Final Chapter』と同様のもの。しかし、ゲーム中のグラフィックが2種類用意されていたり、BGMが3種類から選択できたりと、1作目と2作目を1本にまとめた『イースI&IIクロニクルズ』(PSP版タイトル)がベースになっていることがわかる。

  • イース Ancient Ys Vanished Omen
  • イースII Ancient Ys Vanished The Final Chapter
  • イースIII(ワンダラーズフロムイース)
  • イースIV MASK OF THE SUN(ファルコムの原案を元にトンキンハウスが開発・発売)
  • イースIV The Dawn of Ys(ファルコムの原案を元にハドソンが開発・発売)
  • イースV 失われた砂の都ケフィン
  • イースVI ナピシュテムの匣
  • イースVII
  • イースVIII -Lacrimosa of DANA-(2016年夏に発売予定)

※リメイク作品、移植作品がそれぞれに多数存在。また外伝的タイトルも複数発表されている。

本作は有料タイトルのため広告やゲーム内課金などがいっさいなく、純粋にゲーム内容を楽しめる

タイトルに『イースII』と付けられていることから分かるように、本作は以前にiOS/Androidでリリースされた『イースIクロニクルズ』のエンディングから続く物語となっている。

前作の冒険で6冊すべての「イースの本」を集めた主人公・アドルは、本の力によってはるか上空に浮かぶ「イース」へと飛ばされ気を失う。そこで出会った人々や繰り広げた冒険により、前作で残されていたさまざまな謎が紐解かれ、古代王国イースのすべてが明らかになっていく……というのがストーリーの概要だが、ゲームとしては前作を知らなくてもじゅうぶんに楽しめる内容だ。しかし、より『イース』の世界を楽しみたければ、前作もプレイしておいた方がいいだろう。

前作に続く、後編の物語が描かれていく本作。主人公は気を失っていたところを、ランスの村の少女・リリアに発見される

操作やシステムはシンプルだが……

最近のゲームでは、複雑な成長システムや街作り要素など本編以外の要素もてんこ盛りで、すぐに全体を把握するのが難しい場合がある。だが、本作ではそうした心配はいっさい不要だ。人々に話を聞きながら頼まれた物を入手してきたり、あるいはフィールドやダンジョンで敵を倒したりしながら主人公を成長させて冒険していく、シンプルで王道なRPGを楽しむことができる。

マップ上でほかのキャラクターとぶつかることで話が聞けるほか、アドベンチャーゲームのように会話の選択肢が現れることもある

バトルは『イース』独特のシステムで、基本は敵に体当たりしてダメージを与えていくという方式。若干クセのある操作なので、ちょっと油断したすきにゲームオーバーになってしまうというのも、このゲームならではだ。仮にゲームオーバーになった場合でも、敵との戦闘直前などからやり直すことができるので、「習うより慣れろ」といった感じで何度でも挑戦してみるといいだろう。ちなみに、難易度は「EASY」から「NIGHTMARE」までの4段階から選択可能だ。

ボスキャラ以外は、わりとゴリ押しでも勝つことができる。が、油断すると一瞬でゲームオーバーになることも

レベルアップ以外にも、通常のRPG同様に、お店で武器や防具を購入することでキャラクターを強化していくことができる。さらに、冒険の途中で魔法が使用できる杖などを入手することもある。宝箱を発見したら、ぜひチェックしておこう。

宝箱などから特別なアイテムを入手することができる

ゲームパッドでのプレイにも対応

戦闘で減ってしまった体力は、フィールド上ならば立ち止まっているだけで回復していく。しかしダンジョン内での体力回復は、薬草などの回復アイテムに頼ることになるので、これらアイテムの補充は小まめに行なっておきたい。ただし、あまり多くは所持することができないため、ダンジョンの探索ではシビアな展開が多くなるかもしれない。

一見フィールドのようにも見える「ノルティア氷壁」だが、ダンジョンと同等の扱いのため、自動で体力の回復はしない

中でも、特にキツいのがボス戦だ。キャラクターのコントロールは、画面をなぞりながら移動し、タップで魔法やアイテムを使用するのが基本だが、ボスキャラの場合はその攻撃が強力なうえに体力も多い。最初のうちは問題ないのだが、長時間戦っていくうちに手汗などで画面をなぞって動かすのが難しくなってしまう場合がある。

それでもクリアは可能だが、より快適にプレイしたい場合はBluetooth対応のゲームパッドも利用できるので、そちらを試してみるといいだろう。

最初に対峙することになるボスキャラ「ベラガンダー」。「ファイヤーの魔法」でしか倒すことができない。最初に両手を破壊し、目を狙っていこう

2種類のグラフィックモードと3種類のBGMモード

『イース』といえば、上記で挙げたようなストイックなアクションのほか、音楽も印象的だ。オリジナル版を当時プレイした時に、今ではゲーム音楽の大御所となった古代祐三氏によるメロディーとともに、透き通るような音色に心を奪われたものである。それは本作でも楽しむことが可能となっており、環境設定のサウンドで「クロニクルズ」「オリジナル」「PC-88」の3種類から自由に選択することが可能だ。

また新たにゲームを始めるときのみだが、「クロニクルズモード」と「オリジナルモード」の2種類からグラフィックを選択することができる。さらにゲームをプレイしていくことで「タイムアタック」モードも開放され、ストイックなプレイを楽しむことが可能となる。昔からのファンはもちろんのこと、本作で初めてこのシリーズをプレイするという人にもおすすめだ。

こちらは「オリジナルモード」の画面

こちらが「クロニクルズモード」の画面。キャラクターデザインが今風になっているほか、イラスト自体が「オリジナルモード」とは異なっていることが分かる

ドット絵のグラフィックは懐かしさを感じる部分もあるが、これのベースとなったタイトルは1988年にリリースされたというのだから驚きだ。当時「アクションRPG」というジャンルはまだ模索の段階であったが、『イース』シリーズは後の『テイルズ オブ』シリーズなどにもつながる、アクションRPGの礎と言ってもいいだろう。

また、本作のベースとなる『イースII』は、ストーリー重視型RPGの先駆けとも言われている。RPG好きなら、ぜひプレイしておきたいタイトルだ。それにしても、名作ゲームがスマートフォンでわずか数百円で手に入るというのは、本当にいい時代になったものだと思う。

  • 使用した端末機種:Xperia Z2
  • OSのバージョン:Android 4.4.2
  • プレイ時間:約4時間
  • 記事作成時のゲームのバージョン:1.0.0

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