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VRの発展でPCもスマホもなくなる!? 「VR産業革命~第1回:広がるVRのセカイ ~」レポート

6月30日(木)、「VR産業革命~広がるVRのセカイ~」が開催された。海外におけるVR事情が語られたほか、VRの広がりについて企業や研究者によるパネルディスカッションも行われた。

Appleも参戦の動きも! 拡大するVRビジネス市場

VR が普及した未来は、生活にどのような影響を及ぼすのか?

今回イベントは、VRが起こしうる産業革命を予測し、経済への影響などについて語る講演「VR産業革命」シリーズの第1回で、VRビジネスの現在や、VR技術の発展で訪れる未来の展望について語られた。

最初にThe Venture Reality FundのTipatat Chennavasin氏が登壇。「海外最新VR紹介」と題し、現在の最新のVRの技術やビジネスシーンの動向について講演を行った。

Tipatat氏は、VR/ARのデベロッパーを経て、VR/AR業界のアドバイザーや投資家として1,200社以上のVRスタートアップに携わってきたVR/AR業界の第一人者

Tipatat氏は、30年前に発明された技術であるVRが、なぜ今になって注目を集めているのかの理由について、「スマホの進化」「3Dゲームの開発ツールや技術者、デバイスの発達」「GoProなど360度撮影できるカメラが登場したこと」の3つを挙げた

VRを体験したことがないユーザーが心配するVR酔いについて、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)などの技術面では対策がしっかり取られていることを説明。それでも、身体の動きと合わない映像が流すなど、ソフトウェアのデザインの問題でVR酔いが発生することはあるという

VRの技術的な説明のあと、Tipatat氏はVRの市場について解説。先日、28社のベンチャーキャピタルが「Virtual Reality Venture Capital Alliance」を結成し、VR/AR分野のベンチャー企業に最大100億の投資を行うことを発表するなど、これからも市場が激しく動くのではないかと予想した。

現在、多くの大手企業がVR/ARのハードウェア、ソフトウェアの両面でVR市場への参入を発表している。Tipatat氏は、AppleもARやVRの特許や技術者、デベロッパーを集めており、遠からず何か動きを見せるのではないかと話す

Tipatat氏は、VRの市場規模が拡大している理由として、「VRとARは我々の生活を永久に変える」からだと話す。

遠くない未来、VRとARが融合したメガネ型のデバイスが登場し、PCやスマホはなくなるだろうとTipatat氏は予想する

続いて、Tipatat氏はVR開発の現状としてさまざまな事例を紹介した。ハードとソフトの両方でVRの研究と普及は続いており、VR機器の操作はより直観的になっていくだろう。

また、現在はVRコンテンツはゲームが多いが、スポーツや音楽のライブ映像などのコンテンツも人気が高まっているという。HMDがテレビに代わる日も遠くないかもしれない。

インプットの方法も、コントローラー型から、実際に手でつかんだり、直接体に着用するなど感覚的な操作ができるデバイスの開発が進んでいる

興味深かったのは、国連が制作したシリア難民についてのVRのドキュメンタリー番組の事例で、VRでの視聴者は通常での視聴者よりも寄付をする人が2倍多かったという

最後に、Tipatat氏はVRの未来について展望を語った。

氏によれば、味や匂いを感じられるデバイスや、脳波を検知して思ったままに操作できるようになるデバイス、人間の平衡感覚をつかさどる「前庭」を刺激することで実際に動いているかのように錯覚させるデバイスなどの研究開発が進んでいるそうだ。

その場にいなくても、料理の味と匂いを体験できるVRコンテンツや、頭の中で思っただけで簡単に操作できるコントローラーなど、さらなるVRの機器やコンテンツが近い将来登場しそうだ。

日本発のVRを目指すgumiの取り組み

Tipatat氏の講演の後に、gumiの國光宏尚氏が登壇。gumiのVR事業への取り組みや、Tokyo VR Startupsの取り組みについて語った。

gumiの代表取締役とTokyo VR Startupsの代表を兼任する國光宏尚氏

Tokyo VR Startupsは、日本発のVRインキュベータープログラムで、ゲーム業界やエンターテイメント業界を代表する経営者がメンターに就任し、6ヵ月間のプログラムを通して、VRプロダクト・サービスの開発者を支援している。

Tokyo VR Startupsは、技術のある企業に対し出資や、ビジネス化についての助言をおこなっており、2016年1~6月に行われた第1期プログラムでは5社が採択された

7月1日(金)からは第2期プログラムに参加する企団体を募集している

投資家と研究者が展望するVRの未来

後半からはUEIの清水亮氏と東京大学大学院の稲見昌彦教授が参加。清水氏の司会のもと、「VRが変える世界」と題してパネルディスカッションが行われた。

UEIの清水亮氏。コンピューター3Dやゲームプログラム、AIの専門家であり、「HTC Vive」で配信されているゲームはすべて遊んでいるという

東京大学大学院教授の稲見昌彦氏。拡張現実感システムや触感インターフェースなど五感にかかわるユーザーインターフェースの研究者として、日本バーチャルリアリティ学会理事、情報処理学会エンタテイメントコンピューティング研究会主査など歴任している

パネルディスカッションの前に稲見教授からはVRの歴史が語られた。写真は世界初のHMDのもの。稲見氏によると15年周期でVRブームが起こっており、現在のブームは3回目なのだという。

稲見氏からは最新のVR研究についても紹介。うつ病患者の治療用に開発されたプログラムでは、HMDを装着した患者が、目の前で泣いている女の子を慰める言葉をかける。その後、HMDの映像は少女の視点に変わり、自分自身に慰められる体験ができるというもの

パネルディスカッションの最初のテーマは「VRとAIの関係性」について。

「携帯電話とインターネットからスマートフォンが生まれたように、同じ時期に出てきた技術は相関関係が生まれて融合する。VRとAIも融合するのではないか」と、VRとAIの両方に触れてきた清水氏は議題を提示する。

稲見氏は「AIが注目されいなかった1990年代に起こったVRブームのころから、VRとAIが融合したAlife(人工生命)の研究が注目されていた」と話し、今後も同じような研究が出てくる可能性は高いとした。た。

國光氏が「現在のVRコンテンツは、ただ単に人を驚かせるということだけに終始してしまっている。しかし、バーチャルペットなどAIを搭載したVRコンテンツが登場するのではないか」とコメントすると、Tipatat氏も「AIを使うことでVRのリアリティーを高めようという企業が登場している」と回答。

VR空間でAIのキャラクターとコミュニケーションが取れる時代は遠くないのかもしれない。

VRとAIの世界に引きこもりたいという清水氏と稲見氏に、國光氏が現実に戻ってくるよう呼びかけるシーンもあった

VR空間にMeta-verseは実現するのか?

続いて話題は「Meta-verseとしてのVR」という議題になった。

「Meta-verse」とはコンピューターによって生み出されインターネット上に存在する仮想世界のことで、『Second Life』などのサービスがこれにあたる。

清水氏は「VR空間にMeta-verseを作るような会社は現れないのか?」とTipatat氏に質問する。

Tipatat氏はVR空間でのMeta-verseの実現は現在の技術では難しいとしたうえで「Meta-verseにつながるサービスを開発しようとしている企業は出てきているため、いつの日か実現する可能性はある」と答えた。

國光氏も、VR空間でリアルな世界を再現しようとした企業の例を出し「VRでリアルを再現しようとしても、現在の技術では、違和感が先に立ってしまう」と語る。

リアルな空間ではなく、『Minecraft』の世界のような見た目の方が実現性があるのではないかという清水氏。

VRの中にほかのユーザーといっしょに入れる『Minecraft』のような空間が登場したら、現実に帰ってこられない人が続出するのは必至だろう。

VRブームはまだまだこれから

最後に、清水氏からVRの今後の展望について尋ねられると、稲見氏は「VRの研究や開発はまだまだこれから。もっとVRブームはこれからさらに盛り上がっていくだろう」と話した。

Tipatat氏は「これからはVRを使ってどのようなことをするのか、ということを考える時代が来る。VRは夢を実現するためのキャンバスだと思ってほしい」と話した。

清水氏からgumiのVRへの展開を聞かれた國光氏は「日本のユーザーは目が効くので、VRのコンテンツでも声優や2Dイラストなど3D以外の部分にも投資しなければ成功しない」と日本におけるVRビジネスの難しさを話しつつも、日米両方での展開を視野に入れていることを語った