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セガ、gumi、スクエニのキーマンがスマホゲーム業界の今後を語る! マイネットの新レーベル「PARADE」の発表も

ゲームタイトルの企画・開発・運営を行うゲームサービス事業を展開するマイネットは、「スマホゲーム業界の今後を読む」をテーマにしたカンファレンスを7月1日に開催した。

ゲームサービスカンファレンス ~1兆円に迫るスマホゲーム業界の今後を読む~

本イベントにおける登壇者は、セガゲームスの岩城農氏、gumiの川本寛之氏、スクウェア・エニックスの渡辺泰仁氏の3人。

スマホゲーム業界の2016年上半期の総括や業界の今後の展望、新たな役割であるゲームサービス業について、パネルディスカッション形式でトークが繰り広げられた。

登壇者

  • 岩城農氏
    株式会社セガゲームス取締役
    株式会社セガゲームス セガネットワークス カンパニーCOO
  • 川本寛之氏
    株式会社gumi 代表取締役副社長COO
  • 渡辺泰仁氏
    株式会社スクウェア・エニックス
    第8~12ビジネス・ディビジョン担当執行役員

左から、gumiの川本寛之氏、スクウェア・エニックスの渡辺泰仁氏、セガゲームスの岩城農氏

まずは主催者であるマイネットの上原仁氏がモデレーターとして登場し、「スマホゲーム産業の構造変化とゲームサービス業の誕生」についての基調講演を行った。

イベントの司会進行を務めたマイネットの上原仁氏

近年、スマートフォン市場は拡大を続けており、数年前までゼロだった市場がいまや国内1兆円の規模に迫ろうとしている。

新作タイトルのリリースペースも衰えることなく、毎週のように新しいタイトルの情報を目にするのが当たり前という状況だ。

上原氏によると、2015年は新作をリリースしても大型IPのタイトル、あるいはトップパブリッシャーのタイトルでなければランキング上位に入るのは難しかったのに対し、2016年上半期には新規IPのタイトルや中小パブリッシャーのタイトルも上位ランキングに食い込んできており、市場の潮目が変化している。

これにより、いいものを出しても売れないという状況から、いいものを出せば売れる「安全な市場」になってきていると語る上原氏。

「事前登録」からゲームの「チューニング」、そして、「TV CM」の展開から「IPものとのコラボ」へと展開する「成功法則」が確立されつつあるという。

そんな市場の中での戦略について、新規タイトルへの合理的な投資、いわゆるポートフォリオマネジメントが可能になってきていると上原氏は分析する。

それぞれの企業で、ヒット率やマーケティングコストのベースとなるモデルケースというのが、数値でコントロールできるようになってきたと話す上原氏

しかし、そんな中で全体の市場規模は頭打ちになることが予測されており、規模拡大より効率性を狙うターンに移りつつある。

収益をしっかり計算していくためにも、次なるホームランを狙うためのリソース分配が特に重要だとの説明が行われた。

そこで上原氏が提案するのは、「ゲームサービスソリューション」の活用だ。

利益を確定し、人員を再配置して次なるホームランやヒットを狙いにいくのが、ゲームメーカー経営の新たなサイクルになるという

マイネットはゲームサービスに特化した事業を展開しており、現時点で21タイトルの運営を行っている。

利益率の下がってきたタイトルを獲得して「リビルド」し、継続的に利益が出る構造に変えていくのが主な事業で、その結果、獲得前よりも多くの利益を創出しているという。

また、場合によってはゲームのサービス終了を「エンディング」と位置づけ、大団円に向けたストーリーやエンディングムービーなどを用意することで、ユーザーが納得するラストを演出するとのこと。そして、そのノウハウをためていくことで、よりよいサービスにつなげていく形となっている。

そしてマイネットは、ゲームサービスに特化した事業をゲーム産業のインフラとして根づかせることを目標に掲げている。

その新たな展開として、マイネットが運営するゲームタイトルを統合するレーベルが発足することが上原氏から発表された。その名も「PARADE」。

「長く、ワクワクする空間を提供する」をテーマに掲げたレーベル「PARADE」が登場

PARADEタイトル(17タイトル)一覧(2016年7月現在)

レーベルマネージャーを務めるマイネット執行役員の西久保氏は、「単に名前をつけただけでなく、価値を具体化していく」と、ユーザーにとってのメリットをはっきりと伝えていくことをアピールした。

オンライン型ゲームはユーザー参加型クリエイティブであると語る西久保氏。クリエイターが発信した素材に対して、ユーザーがコミュニティーを使って変化させていく。このオンラインコミュニティの存在が、ゲームという商品にとっての強い価値であるという

マイネットの「PARADE」では、オンライン型ゲームのユーザーの資産であるコミュニティーを守っていくのが、大きな使命となる。今後の展開に注目だ。

リビルド力、集客力、データドリブン、キャラ力の4つの強みを軸にして、メーカーがつくりユーザーが発展させたコミュニティーをさらに発展させていく「PARADE」。がさらに続くこと。上原氏は「ぜひ多くのメーカーの参画を」と述べて講演を締めくくった

各社の現状が語られたパネルディスカッション

続いて、この日のメインとなる岩城農氏、川本寛之氏、渡辺泰仁氏によるパネルディスカッションが行われた。

テーマ1:2016年上半期の振り返り

gumiの川本氏は、2014年12月の株式上場後はかなり苦労したと語り、早い段階でのグローバル展開や、急速にマーケットが成長する中での過剰投資が「成長痛」につながったと話した。

また、『ブレイブ フロンティア』などの一部の基幹タイトルが全体の売り上げの8割にもおよび、コントロールが難しいとのこと。

ここ2年半ほどの間で仕込んできたタイトルがようやく市場に出せる段階となり、10タイトルほどのリリースの中で6~7本がヒットにつながったそうだ。

現状、ユーザーの求めるコンテンツのレベルが高くなってきており、開発当初は想定していなかった追加開発が必要になることも多いという。

今後は拡張期から成熟期に移行していることを踏まえ、しっかりと利益を回収できることを意識した会社経営に力を入れるとのことだ。

今年の3月に代表取締役副社長に就任した川本氏。これによりgumiは代表取締役2名による経営体制となり、代表取締役社長の國光宏尚氏は新規開発に専念できる環境が整ったとのこと

さらに川本氏は「ヒットの秘訣は?」と聞かれ、売れた・売れないの差は「タマシイ」の差であると述べた。クリエイターのこだわりがにじみ出ているタイトルこそがヒットにつながっているという。

続けてスクウェア・エニックスの渡辺氏が質問に回答。同社では『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』シリーズといったIPもの以外のタイトルは成績が振るわず、かなり苦しい状況が続いていたそうだ。

しかし、そんな中で『グリムノーツ』のヒットがあり、渡辺氏は「ゲームもよかったが、マーケティングが成功した」と分析する。その経験をもとに、一部のチームでできていることを、どうやってほかのチームに伝えていくかに取り組んでいるそうだ。

そして、ユーザーといっしょにゲームを盛り上げていくことが、これからのテーマとして掲げているという。

「グリムノーツのマーケティングの肝は?」と尋ねられ、渡辺氏は「思いついたことは全部やった」と回答した

セガゲームスの岩城氏は、「ゲーム業界は5年くらいの周期で回っていて、調整が必要な期間が必ず訪れる」と前置きし、「どれくらい早くから突っ込んだ話ができるか」を強く意識しているという。

現在は「海外展開をしない理由」を考えていて、スタッフに対しては「自分がイメージできるお客さん、すなわち日本のユーザーを考えてください」と説明し、これを現在の戦略における大きな1つと核としているそうだ。

また岩城氏からは、ゲーム業界全体としてソーシャルメディアをうまく活用できていない、やっていないのではないかという問題提起もあった。ゲーム以外のメディアをうまく使えていない点を反省し、そういった仕組みを業界全体で底上げしていきたいというのが同氏の考え方のようだ。

コンテンツ編成の戦略を組み立てるとき、「どれくらいのお客がいるところに打ち込んでいけるのか」を意識するという岩城氏

テーマ2:今後1年の市場見通し

2つめのテーマは「今後1年の市場見通し」について。各社の戦い方を聞くことができた。

川本氏は、「シェアの奪い合いが起こるのでは?」という前提に立ち、メガヒットを狙うのは難しいので、確実なヒットを狙う戦略が必要になる可能性があると話した。

gumiでは今年の3月にラインを整理し、ここ1年ほどで8タイトルをしっかりと高いクオリティーでリリースしていく計画であることを明かした。

「とにかく今年は黒字を」というのがgumiの課題であり、その立ち位置をしっかいと内外に示していくそうだ。

ちなみに、同社の海外展開について、「国内でヒットしたタイトルを海外に持っていくのは、実際にやってみると難しい」という話も飛び出し、特に開発を担当しているのが他社の場合はコンテンツの追加や運営スタイルの変更などが難しく、『ブレイブフロンティア』の展開とはまったく違った結果になってしまったとのことだ。

そのため現在準備中の『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』も、gumiの傘下であるエイリムの開発に切り替わっている。

昨年まで事業部長を務めていた渡辺氏は、第8~12ビジネス・ディビジョン担当執行役員に就任して、各ディビジョンにそれぞれのナレッジがあり、それぞれの戦略があることをあらためて実感したとのこと。

しかし、これまでのやり方を続けていくのは難しいので、何らかの横ぐし的な仕組みがほしいと話した。

スクウェア・エニックスではそれなりの本数がヒットにつながっているが外れも多く、その精度を上げていくことに取り組んでいるとのことだ。

岩城氏は、セガネットワークスが設立されて今年で4年を迎えたことに触れ、「去年くらいからステージが変わったので、戦い方も変えていく」と述べた。もっと早い判断で、もっと熱のこもったもの、もっとラインの強みを生かしたタイトルを打ち出していくという。

また、新興国のマーケットの魅力にも触れ、「日本のコンテンツの魅力や素晴らしさを届けて、真のグローバル化を狙っていく」と語った。

テーマ3:ゲームサービスソリューションの使い方

実際の事例として、gumiが昨年にWeb事業から撤退し、『ドラゴンジェネシス』を含む数タイトルがマイネットの運営に移管されている。その際に、運営チーム自体の移籍も行われたそうだ。

川本氏の考えでは、開発と運営は似て非なるものであり、今後はその需要も増えていくだろうとのことだ。

また渡辺氏は、利益を出しているタイトルのオペレーションには優秀な人材がかかわっており、人的リソースをうまく配分することで後から参加したスタッフの成長も期待できるという。そのためにも、そういったサービスを活用していきたいと述べた。

さらに岩城氏は、ゲームにとって最大の資産はお客さまとの関係値であり、できるだけ大切にしたいという考えのうえで、「こういったソリューションがあるのはいい」と話した。

テーマ4:これから1年の抱負

ディスカッションの締めくくりは「これから1年の抱負」について。

川本氏は、開発中のゲームを世に送り出し、利益を最大化すること。そして海外展開もしっかり取り組み、gumiの強みを生かしていくことを目標として掲げた。

さらに次のステップアップについて、VRをはじめとする将来への種まきを続け、3年ほどの期間で回収していくと語った。

渡辺氏は、執行役員に就任してみて、全体にばらつきがあることがわかったという。『ミリオンアーサー』を例に挙げ、「チームがユーザーといっしょに遊ぶのがうまい」と話し、それをほかのチームに浸透させていくことを課題にしているとのことだ。

岩城氏は、コンテンツ面を充実させることを目標に挙げた。基本無料のゲームが全体の売り上げに占める割合が多い現状だが、このビジネスモデルを変えることにチャレンジしていきたいというのが、岩城氏の考えだ。

ゲームの世界観を伝えることに注力し、コンテンツのパッケージングにも工夫を加え、グッズのセールスにつながるような面白い試みに挑戦していくという。

各社の置かれた状況の違いや、考え方の違いなどが明らかになった今回のカンファレンス。ゲームビジネスの新たな取り組みのヒントが、この中に隠されているかもしれない。

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