フィーチャーフォン時代と酷似する韓国スマホゲーム市場
本記事の内容は、取材に集まった日本メディア陣に向け、ネクソンコリアのモバイル事業部副部長ソ・ヨンソク氏が韓国のゲーム市場、特にモバイルゲームにフォーカスした過去の市場の動き、現在の状況、そして近い将来の予測について語られ、その後、質疑応答が行われたものである。
ソ・ヨンソク氏は、フィーチャーフォン時代からネクソンのモバイル事業に携わっており、現在はモバイル事業部副部長として、ネクソンコリアのモバイル事業を総括している人物だ。
韓国のモバイルゲーム市場の始まりは、1998年あたりまでさかのぼる。
当初は白黒のゲームから始まり、カラー出力が可能な携帯電話の普及にともない、ゲームもカラー化。
と同時に、無料コンテンツが主流だったモバイルゲーム市場に、買い切り型の有料コンテンツ登場。
2000年代に入ると、今現在スマホゲーム市場でも主流のfree-to-play(基本プレイ無料)のビジネスモデルも表れ始め、スピーディーに市場規模を大きくしていった。
ゲーム性については、最初はシンプルなカジュアルゲームが主流だったが、徐々にスポーツ、ストラテジー、タイクーン(経営シミュレーションゲームのタイトルに使われる単語)といったゲームが表れ、フィーチャーフォン時代終盤にはRPGやアクションRPGなど、コアなゲームが多く登場するようになった。
特にアクションRPGは、フィーチャーフォンからスマートフォンへ移り変わろうとしている時期に、フィーチャーフォンゲームの歴史の中でも最大の売り上げを記録したという。
そして、スマートフォンが普及し始めると、フィーチャーフォン向けのアクションRPGをスマートフォン向けに移植しはじめる動きが見られたというが、それらは成功を収めることはできなかった。
その原因のひとつとして、『Angry Birds』などのハイクオリティで低価格なタイトルが韓国市場に参入してきたことが挙げられた。
※『Angry Birds』はリリース当時は有料タイトルだった
そうして、韓国でiPhoneが発売された2009年からの約2年間は、海外の有力タイトルに遅れをとってしまったのである。
しかし、今現在は盛り返し、韓国ゲームメーカーのタイトルが人気を集め、好調な売り上げを見せている背景には、Google PlayやApp Storeといったオープンマーケットの定着や、「カカオトーク」が提供するようなカジュアルゲームが定着したことが挙げられた。
スマートフォンゲーム市場の成長スピードはフィーチャーフォン時代の比ではなく、1年単位で急速に発展していったとのこと。
売上高もすさまじく、例えば『Anipang2』というパズルゲームは、1日に1億ウォン(約1000万円)、『みんなでチャチャチャ』は1日に10億ウォンもの売り上げを記録するほどの規模にいたったという。
なお、ここで挙げた2タイトルはいずれもカジュアルゲームなのだが、カジュアルゲームから火がつき、徐々にコアなゲームが定着していくという流れは、スマートフォンゲームとフィーチャーフォンゲームで共通しているのが特徴的だ。
そして現在はスマートフォンでもアクションRPGが市場を席巻し、膨大な売り上げをあげているのだが、その規模はフィーチャーフォン時代を大きく上回る。
フィーチャーフォンにてビッグヒットしたタイトルの3年間の売り上げを合計すると約300億ウォン(約30億円)ほどになるとのことだが、スマートフォンのアクションRPG市場ではわずか1ヶ月ほどで同等の売り上げを達成しているという。
市場の規模こそ違えど、成長の過程を見ると共通する部分が多いフィーチャーフォンゲームとスマートフォンゲームだが、異なる点ももちろん存在する。
代表的なのが、MMORPGの出現だ。
『リネージュM』や日本でも人気の『リネージュ2 レボリューション』など、PC向けのMMORPGのIPを利用したモバイルタイトルが台頭している状況は、フィーチャーフォン時代には見られなかったムーブメントと言えるだろう。
ヨンソク氏は、今後数年の市場については、アクションRPGが陰りを見せており、収集型RPGとMMORPGが牽引すると予測する。
『リネージュ2 レボリューション』は日本でも人気だが、人気MMORPG『黒い砂漠』のモバイル版が韓国でサービス開始され人気を博すなど、既存IPを活用したMMORPGの人気は今後も続くものと思われる。
公表されていないが、すでにモバイル向けに移行する計画がいくつも立ち上がっているという。
Q&A
――日本ではコンソールタイトルのモバイルへ進出しているが、韓国では同様の動きはありますか?
ヨンソク氏:韓国では、モバイル市場にコンソールタイトルが入ってくる事例は少なく、PCゲームやオンラインゲームがモバイル向けにサービスされています。
他社の事例では『リネージュM』『リネージュ2 レボリューション』『黒い砂漠』など、自社(ネクソン)では、『メイプルストーリー』『アラド戦記』『カートライダー』『テイルズウィーバー』などが挙げられます。
――日本のスマートフォンゲーム市場において、韓国産のゲームが年々増加し、支持を集めています。この傾向は今後も続きますか?
ヨンソク氏:今後も、日本のゲーム市場に韓国のゲームメーカーが積極的に進出すると思われます。
『HIT』のサービスをとおして感じたが、近い国なのに、ユーザーの性質がかなり違います。
ネクソンでは日本法人でカルチャライズを行って成功を収めましたが、改めて大きな市場だと感じました。
これからも、ネクソンは日本のゲーム市場にトライしていきます。
――逆に、韓国で人気のある、日本のゲームタイトルはありますか?
ヨンソク氏:バンダイナムコエンターテインメントさんのIPタイトルは人気です。
日本で人気の『パズル&ドラゴンズ』や『モンスターストライク』は、韓国では日本ほどのヒットを収めることはできませんでした。『Fate/Grand Order』も人気はありますが、日本ほどではありません。
日本の数多くあるゲームの中には、韓国のゲームユーザーにとって魅力的な世界観やゲームシステムに感じられれば、ヒットする可能性はあると思います。
個人的には、ポケラボの『シノアリス』は韓国でもヒットするのではないでしょうか? それ以外にも成功する可能性を秘めたタイトルはあるでしょう。