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外国からやって来た4人のクリエイターが語る! タブーを恐れない日本人の発想が面白い!?【CEDEC2016】

Game Deetsの連載でもおなじみの黒川文雄氏によるセッションが「CEDEC 2016」にて開催された。テーマは「ガイジンクリエイターに聞く日本のゲーム産業」。日本における昨今のゲーム市場の特異性や、日本人ならではの発想が面白いという話も飛び出して――。

ガイジンクリエイターから見た 日本のゲーム産業、労働環境ってどうですか?

ゲーム市場をさまざまな角度から分析するジェミニエンタテインメント・代表取締役の黒川文雄氏によるセッションは、日本で働く4人の外国人クリエイターが、日本のゲーム産業を語るというもの。

開発環境のいいところや悪いところ、日本人では客観的に見ることのできない状況が、外国人の目から見たさまざまな視点で語られた。

【登壇者】

  • 黒川文雄氏(ジェミニエンタテインメント 代表取締役)
  • ハンサリ・ギオーム氏(Wizcorp Inc. 代表取締役)
  • コチョール・オザン氏(ウォーゲーミングジャパン パブリッシング・アジアパシフィック ヘッド・オブ・プロダクション)
  • ジェームス・ラグ氏(デジカ ゲームパブリッシング プロダクトマネージャー)
  • ウィリアムソン・ジェームス氏(アカツキ 3Dディレクター)

左から、ハンサリ・ギオーム氏、コチョール・オザン氏、ジェームス・ラグ氏、ウィリアムソン・ジェームス氏

それぞれの国のゲームの開発環境が、日本とどう違うのか?

最初に4人の参加者がなぜ日本で働くようになったのか、そのきっかけがそれぞれの口から語られた。

ハンサリ・ギオーム氏(以下、ハンサリ):約10年前、大学を卒業してすぐに日本へ来ました。もともとアニメや漫画、ゲームに興味を持っていたのがきっかけです。いくつかの会社で仕事をして、機会があって8年前に独立しました。

来日した当時は、就職に苦労しました。普通のシステムエンジニアとしては、英語力はプラスにならないし、日本語も決してうまくはありませんでした。そのため、仕事レベルの会話ができませんでした。

自分でゲーム会社を立ち上げたのは勢いです(笑)。日本はわりと起業しやすいと思います。私は妻が日本人なので、労働ビザの問題もありませんでした。

コチョール・オザン氏(以下、コチョール):13~14年前くらいに日本に来ました。最初はゲーム会社ではなく、動画配信やモバイル広告などの技術を持つフランスの会社の日本支社代表をやっていました。

当時は24歳。いろいろとハードルは高かったですね。4年半ほど苦労しまして、その後にゲーム業界に移りました。

実は、最初のゲーム会社としてハンサリ氏のWizcorpに就職したんです。そこそこうまくいって1年ほど勤め、現在のウォーゲーミングジャパンに立ち上げの際に加わりました

ここでは『World of Tanks Blitz』のパブリッシングプロデューサーを担当して成長させ、最近アジアパシフィック地域のすべてのタイトルを担当するゼネラルマネージャーになりました。

ウォーゲーミングジャパンは開発を行わないパブリッシング会社ですが、私自身も開発するよりモノを売るほうが向いていると思います。

ちなみに、ゲーム業界に働いている人だけのコミュニティーとして「Insert Coin」というイベントを2カ月に1回程度開催しています。

しばらくやっていないのですが(笑)、外国人と日本人の両方の目線で交流できればと考えています。

ジェームス・ラグ氏(以下、ジェームス):私の国ではあまり日本のゲームのローカライズがされていなくて、PCエンジンで遊びたくて日本に来ました(笑)。『ドラゴンボール』もきっかけの1つですね。あとは流れに任せて今に至っています。

日本の漫画やゲームというカルチャーに対しての思いは強かったですね。

当時遊んでいたゲームが日本メーカー製という意識はあまりなかったのですが、それはあとから知りました。アニメも英語に吹き替えされているので、アメリカで作られたものだと思っていたんです。

来日の理由は日本語を学びたかったからですが、ゲームにかかわる仕事もしたかったです。最初は人材紹介会社で働いていましたが、ある日突然、何か悪いことをしているような気になってやめました(笑)。

ゲーム開発の現場に近づきたいということで、そこから『パタポン』で知られるピラミッドに拾ってもらいました。そこで7年ほど開発進行などを務めました。

今年に入って、日本のコンテンツをより広く海外へ広めたいという気持ちが強くなり、現在のデジカへ移りました。今は弾幕シューティングなどのゲームを海外へ持っていく仕事をしていて、非常に幸せな日々を過ごしています。

ウィリアムソン・ジェームス氏(以下、ウィリアムソン):つい先日までスクウェア・エニックスに在籍していました。今はアカツキで3Dディレクションの仕事をしています。

高校生のときに日本へ1年間留学し、日本語を覚えたのが最初のきっかけです。

大学卒業後にワーキングビザで来日しましたが、いったんカナダに戻ってCGの勉強をして、その後に新卒でグラスホッパー・マニファクチュアに入社しました。

新卒ということで、当初は労働ビザがなかなかもらえずに苦労した思い出があります。

その後スクウェア・エニックスに12年間在籍。

アニメーションやモーションキャプチャー、フェイシャルアニメーション、パフォーマンスキャプチャーなどを手掛け、その後モバイルのクリエイティブディレクターなどを担当しましたが、CGの仕事に戻りたいということでアカツキに移籍しました。

日本のゲーム産業は外国人には門戸が狭い?

黒川文雄氏(以下、黒川):日本のゲーム業界は外国人に対して若干閉鎖的で、あまり広く受け入れを行っていない印象がありますが。

ジェームス:探すところや探し方によりますね。でも、受け入れてくれない会社も確かにあります。

コチョール:会社の方針にもよりますね。日本の市場のためにゲームを作っている会社が多いので、外国人としての付加価値が低いんです。

ハンサリ:最近はゲームの内容がコア化してきています。昔なら海外の発想を取り入れたりといったこともありましたが。

特にモバイルではゲーム内容が固まっていて、そこから外れるとプロモーションが難しかったり、誰がリスクを負うのかといった問題が起こったりします。

黒川:日本のゲームは、1990~2000年くらいの時期に比べて内容がマンネリ化している印象がありますか?

ハンサリ:はい。それには2つの理由があります。

1つは、昔はより大きな市場を目指して海外向けの展開を目指していたことです。

当時は日本市場もそれほど大きくはなかったですし。今は日本市場も大きくなって、海外に対して閉じた市場でも十分な利益が得られます。

もう1つは、20年ほど前はゲーム開発者が職業ではなく、アーティストだったということです。

今は幼いころからゲームに触れているので、ゲームをお手本にゲームを作っていることが多いです。それを繰り返してコア化しているわけです。

これは時代の問題で、今の少年が『パズドラ』や『モンスト』のようなゲームを作りたいと考えるのは自然だとは思いますが。

ジェームス:昔は『ドラゴンクエスト』のクローンのようなゲームがたくさんありましたね。当時は職人の意見が強かったですし、何より小人数で開発していたことが大きいと思います。

昔は海外の映画などに影響されたタイトルがあり、それを海外に持っていくと爆発的なヒットになることがありました。しかしライセンスや著作権の扱いが厳しくなってきたので、今は難しいですね。

ウィリアムソン:ビデオゲームの黎明期には、すべてのタイトルが新しいIPでした。しかし、それから長い時間が経過して、最近ではIPが固まってきています。

ファンがファンのために作っているという印象ですね。フリートゥプレイで多くの人を集めるのに強力なIPが求められる影響もあると思います。宣伝もしやすいですし。

そのため、あまり挑戦的なことができなくなっています。クリエイティブなものよりも、集客しやすいもの。

かつて海外から見た日本は、ゲームのあこがれの国だったんです。「日本のゲームはもうダメだ」なんて講演が話題になったりしましたが、海外のディベロッパーから見た今の日本の市場はそう見えるかもしれません。

オザン:ダメというのはゲームの質でしょうか、それとも利益? 売り上げという意味なら、今でも十分に日本はあこがれの対象です。

海外のファンが盛り上がっているから、見劣りするという側面もあるかもしれません。

特にモバイル業界では開発環境がよくなって、リリースされるタイトルの数も非常に多くなっています。

私はインディーズも含め、クリエイティブの面では成長していると思いますよ。日本は決してダメではありません。

ゲームクリエイターは職人という見方が日本ではまだ強いです。でも海外のヒット作を生み出したクリエイターも、同じ職人の魂を持っています。

例えば『World of Tanks』の開発スタッフは戦車に対する愛情が非常に深く、クラフトマンシップにあふれています。それは日本のクリエイターに似ていると思いますし、大ヒットとなった理由の1つかもしれません。

ウィリアムソン:日本の開発会社が、グローバルを意識しすぎなのかもしれません。それが、魂を売ったように見えたのかも。

日本のメーカーは、今は日本市場に集中して、その特性をよくわかっているゲームを作っています。

まずは日本市場。そして字幕などでいいので最低限は海外でも理解できるようにして持っていけば、リスペクトはされるはずです。今はダメではないですね。

今後新しいものも出てくるでしょうし、私は日本ならではの何かを感じています。

日本人は文化的なタブーをおそれない?

オザン:日本ならではということでは、世界各国にあるウォーゲーミングのオフィスでは、日本のスタッフの柔軟さが注目されています。発想が面白いということで、これは日本人の特徴の1つかもしれません。

『World of Tanks』で展開している『ガールズ&パンツァー』とのコラボは、最初はベラルーシの本社でまったく理解されませんでした。「戦車と女子高生と、どういう関係があるんだ?」といった具合です(笑)。

バンダイビジュアルさんが素晴らしい仕事をしてくれたということもありますが、アニメが非常に面白いということで、アジア地域全体でも展開しています。こういった発想は日本人しかできないですね。

ハンサリ:私も同意見です。海外の文化や宗教的なモチーフを混ぜてゲームに取り込むことに、日本人は抵抗感がありません。海外では歴史的な背景が重くて、下手なことができないんです。

でも、いいこともありますが、気をつけなければならないこともありますね。かつて『格闘超人』というゲームが回収騒ぎになったこともありました。

ジェームス:私はイギリス出身ですが、ヨーロッパや北米をライバル視するような空気はあります。移民も多いですし、ほかの国の文化に対する理解はあったりなかったり……。

でも、「まぜるな危険」ということがわかっているので、日本のようなことはできないですね。日本人はあまり抵抗感がないために、そこからいいものが生まれることもあるでしょう。

ハンサリ:例えば、BABYMETALは海外でもヒットしていますが、こんなバンドは日本でしかあり得ません。そういったオリジナリティーは海外でも期待されていると思います。

私はもともとメタルが好きで、バンドもやっていました。初めてBABYMETALを見たときには驚きましたが、だんだん面白くなってきました(笑)。

なんちゃってメタルなら、うまくいかなかったでしょうね。アイドルもメタルも本気で取り組んでいるから支持されるのだと思います。

文化や宗教の重さを感じないのは、日本のいいところです。

ウィリアムソン:縛りのない発想はいいですよね。海外向けのタイトルも日本向けのタイトルも手掛けたことがありますが、海外では大きな剣をいかにも重そうに持ち上げる演技が受けます。

でも、日本ではそれがない、重い剣を軽々と振り回すことに抵抗がない。面白ければいいんですね。

そして、それがいいと思っている人が新しい発想を出してくるんです。

日本は会議が多くて何も決まらない?

黒川:日本では会議が多く、しかも何も決まらないなんでことがいわれていますが、いかがですか?

ジェームス:「とにかく早く決めましょうよ、時間がもったいない」という感じですね。でも、イギリスも多少似ています。これがアメリカならイエスかノー。

どちらがいいかはそれぞれですが、私はその中間がいいと思います(笑)。

オザン:問題は目標設定ですね。それがなくても会議をするということがままあります。そういう場合は、ブレインストーミングにとどまってしまいます。

黒川:結論を先に延ばしにしがちなところは、日本的でよくないのではないですか?

ジェームス:私は日本でしか働いていないので分かりません(笑)。

ハンサリ:意思決定が難しいですね。誰の責任になるのか、とか。また、問題が起きたときにあまりサポートが得られなかったりとか。逆に、責められることも少ないのは日本らしいところです。

それぞれの未来のビジョンは?

黒川:この先、みなさんはどうなっていきたいですか? 故郷を離れてそれなりのポジションを築いているわけですが。今後のビジョンを聞かせてください。

ハンサリ:私が代表を務めるWizcorpはソフト開発寄りで、アートやクリエイティブ演出を手掛けていません。また90%以上が外国人で、エンジニアは全員です。

強みはソフトウェアエンジニアリング。この分野は、日本で専門にしているところがあまりありません。

歴史的な背景もありますが、理論を学んでいる人が少ないんです。今後のビジョンとして、ソフト開発の概念やフィロソフィーを広げていきたいですね。

オザン:未来は明るいと思います(笑)。新しいテクノロジーがどんどん出てきて、最近でも『ポケモンGO』が新しい遊びを作り出しています。

特にモバイルの分野はこれからも伸びていきます。モバイルとフュージョンしてデバイスが進化するでしょう。

私自身は日本で仕事を続けたいと思います。ウォーゲーミングは外資系ですが、日本市場にもっと力を入れて、日本のためにゲームを作っていきたいです。

ジェームス:私はシューティングゲームのパブリッシングをやれているので、今がとても幸せです(笑)。

『パタポン』を担当したとき、キャラクターデザインはフランス人で、日本のプログラマーが開発を担当しましたが、日本よりも海外で人気が出ました。

そんな風に、融合した何かを生み出すクリエイティブにかかわっていきたいです。日本と海外の架け橋になれたらうれしいですね。

ウィリアムソン:私はもっとゲームを作りたいです。作り方はいろいろあります。いいスタッフといっしょに働いて、幅広くて新しい体験と、新しい遊びを作れれば私は幸せです。

CEDEC2016

  • 日程:2016年8月24日(水) ~ 8月26日(金)
  • 会場
    パシフィコ横浜 会議センター
  • 主催
    一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)
  • 共催
    日経BP社
  • 予定セッション:200
  • 後援
    経済産業省
    横浜市
    一般社団法人情報処理学会
    人工知能学会
    NPO法人 ソフトウェアテスト技術振興協会(ASTER)
    日本バーチャルリアリティ学会
  • 協賛
    <プラチナスポンサー>株式会社Cygames
    <ゴールドスポンサー>エピック・ゲームズ・ジャパン
    <シルバースポンサー>株式会社ディー・エヌ・エー、任天堂株式会社、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント