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【Japan VR Summit】VRゲーム開発の第一人者が考えるVRゲームの展望

「Japan VR Summit」のSession 3「VRで生まれるヒットゲーム」では、VRゲームを開発する企業を代表するプレイヤーが登壇。VRゲームの現状から未来について、開発者側の視点で深く掘りさげる、有意義なセッションとなった。

開発も手探り状態「VRで生まれるヒットゲーム」

セッション3の「VRで生まれるヒットゲーム」では、「Mogura VR」の編集長を務める久保田瞬氏が司会を担当。

コロプラの代表取締役社長、馬場功淳氏、バンダイナムコエンターテインメントのゲームディレクター、原田勝弘氏、レゾネアのCEO、水口哲也氏の3名が登壇した。

Mogura VRの編集長、久保田瞬氏。Session 3は、久保田氏からの質問に、3名の登壇者が答える形で進められた

最初に、3社それぞれのVRに対する取り組みについて、セッションが行われた。

始めに答えたのは、コロプラの馬場氏。馬場氏はOculus RiftとHTC Vive向けにリリースされたコンテンツを、年表とともに紹介。ゲーム以外のコンテンツについても言及した。

コロプラの代表取締役社長、馬場功淳氏

コロプラが今までに手掛けたVRゲームは5タイトル。それ以外に、動画やVR専門ファンドも立ち上げている

現在でも、VRゲームの新作が4、5本進行しているとのこと。馬場氏いわく、もっとVRゲームを作りたいが社内リソースが足りないため、「Colopl VR Fund」を作ったそうだ。

続いて原田氏も、バンダイナムコエンターテインメントの取り組みを、年表とともに解説した。

バンダイナムコエンターテインメントのゲームディレクター、原田勝弘氏

相談もせず、勝手にVRコンテンツを作ったという原田氏。「鉄拳をHMD VRに対応させたら、目の前で格闘家が暴れまくるという最悪なコンテンツになった」という小話も飛び出した

2014年に行われた「史上最大のVR体験会」では、丸2日かけて1,000人分のフィードバックを回収。その内容は、今でも宝になっているという

美しい女性キャラクターが話題となった「サマーレッスン」や、ニコニコ超会議に出展していた「アーガイルシフト」など、話題のVRゲームを次々と送り出す原田氏。

社内でのVRに対する評価も高いようだが、いまだ先行投資の部分が多いため、研究費の予算には苦労しているそうだ。

欧米に比べ、日本では先行投資に二の足を踏む会社も多い。ここも、日本のVR業界がかかえる問題といえるだろう

次に答えたのは、アメリカに会社を設立した水口氏。

レゾネア代表、米国法人エンハンス・ゲームズCEOの水口哲也氏

まず水口氏は、アメリカにVRゲームの会社を立ち上げたメリットとして、以下の3つを挙げた。

  • VRの情報が早い
  • ユーザーからすぐに反応を得られる
  • 契約もスピーディ

日進月歩で進むVR業界は、スピード感のあるアメリカに会社があったほうが、日本にいるより何倍も有利に立ち回れるのだろう。

また水口氏は、今年の10月にリリースするVRゲーム「Rez Infinite」を紹介。

Rez Infiniteの元となった「Rez」は、水口氏がセガに在籍している際に製作したシューティングゲームで、そのときからVR化を考えていたそうだ。

Rez Infiniteでは、音楽と光、そして振動を、VR空間で感じることができる

Rez Infiniteをプレイする際は、26個のバイブレーションがついた「シナスタジアスーツ」を着用する

開発者から見たVRゲームの面白さ

続いて久保田氏は、なぜVRゲームを作ろうと思ったのか、そしてVRの面白さについて質問した。

馬場氏がVRゲームを作った理由は、VRというプラットフォームが広がるなら、必ずゲームをしたいと思うに違いないからだそうだ。

馬場氏は、3D酔いがあるため、移動や場面転換が少ないゲームが、VRに適していると語った

原田氏がVRで注目したのはキャラクター。

普通、ゲーム内のキャラクターが、プレイヤーを意識することはない。しかしVRでは、例えばプレイヤーが目をそらすと、何を見ていると言われるなど、何らかの行動をとってくる。

原田氏は、そのプレイヤーとVRのキャラクターとの関係性を面白いと感じたそうだ。

一方、水口氏は、ゲームというより、VRという新しいことを作るのが楽しいと語った。

それを受けて原田氏も、「やりたいと思っていたことに、やっとハードなどの技術が追いついた」と述べた。

VRゲームを作る難しさ

次に議題にのぼったのは、VRとモバイルゲームとの違いについて。

馬場氏はVRゲームを製作している際、わざわざVRにする必要がないのではないか、と思う瞬間があるのだという。

今は、玉が頭上でクルクル回るなど、ゲームにVR感をいれることで解消しているが、VRならでは、となると難しいと感じているそうだ。

ただ、VRが当たり前になったら、VR感をわざわざいれなくとも、今のゲームをそのまま移植しても大丈夫ではないかと、自身の見解を述べた。

また馬場氏は、VRコントローラーである「Oculus Touch」向けのゲームをレビューした際、ほとんどがボタン操作だった経験を話し、開発者側もVRにまだ慣れていないことを指摘。

同じように、最初、戸惑ったスマホゲームを例に挙げ、VRゲームも製作に関するガイドラインができたら、そのようなこともなくなるのではと語った。

水口氏は、今までのゲームは、ずっと四角い画面に押しこめてきたが、VRになることでその制約がすべてなくなったと発言。

それに対し原田氏は、VR空間におけるユーザーの視線誘導の難しさを例にだし、細部まで完全に作り込む必要性から、VRゲーム開発の難しさを語った。

まだ投資段階にあるVRゲームの将来は!?

次に久保田氏は、VRゲームを製作するコストについて、登壇者に質問した。

これに対し馬場氏は、現在は作り手側が慣れていないため、ノウハウを吸収するまではコストが上がると述べた。

またVRの映像のほうでは、4Kの動画を大量に撮影することになるため、データをバックアップするだけでも、かなりのコストがかかるそうだ。

ただ、海外で見られる、リアル映像から取り込む方法だとコストが下がるとのこと。

コストに人一倍こだわっていた原田氏は、作る物によってコストは変わってくると指摘。

VRの「プリレンダリングムービー」だと、1分変更するだけで、数百数千万ものコストがかかってくるそうだ。

また、VRでは情報量を増やし、密度を上げるほど、臨場感は高まってくる。

MMORPGのように、ダンジョンに行った後、たき火を囲むといった体験をVRでもしたいが、今のコストでは無理だと原田氏は残念がった。

コストの増加を不安視する2人に対し、水口氏は想定の範囲内とし、コストが増えた分もテクノロジーがサポートしてきていると述べた。

製作にあたって試行錯誤する時間がかかっており、それがコストになっていると水口氏は語る

さらに水口氏は、無視できない問題として、VRゲームでユーザーからお金を払ってもらう仕組みについて言及。

今までのゲームは、1本いくらで購入するか、ゲーム内で課金する形式だったが、VRゲームは今までにないものになるのではないかと、予想した。

また、欧米のコアゲーマーたちは、お金を払わないことで、きちんとしたゲームが提供されないことを怖がるという、日本のソーシャルゲーマーとの違いを指摘。

VRゲームをグローバルに展開するなら、何がユーザーにとってリーズナブルで満足できるかによって、かけられるコストも変わってくると語った。

VRゲームをミドルゲーマーに普及させるには

VRはまだ先行投資やフィードバックをしている段階だと話す久保田氏。今後どういうふうにVRが普及していくかを、登壇者に聞いた。

この質問に原田氏は、「それにスラスラ答えられたら、もっと投資してもらえるはず」と弱音を吐くも、「VR ZONE」の話になると一転。

想定していたよりかなり好調らしく、試みとしては成功だそうだ。

ただ、VR ZONEを訪れるのは、コアなゲーマーかゲームの初心者のどちらからしく、取り込むべきミドルコアのゲーマーではないとのこと。

ユーザーの中心となるミドルコア層までVRを普及するためには、今のゲームのように、自宅でプレイできるようにならないと難しいと語った。

「PlayStation VR」を選んだ理由として原田氏は、コンソールである「PlayStation」のユーザーが明確に見えており、そのためゲームが作りやすいからと答えた

原田氏は、「PlayStation VR」を選んだことで、コア層からミドル層へとアプローチを変えたという。

水口氏も、「PlayStation VR」は、VRの入口としては非常にはいりやすいと話すが、欧米と日本、それぞれのユーザーの違いについても言及。

欧米では、ゲームの姿勢がマッチョになるため、モバイルでは満足しない人が多いそうだ。

水口氏はアメリカで、海外のコアゲーマーたちが新しい体験を求めていることを、ひしひしと感じているという。

さらに水口氏は、「PlayStation」の1から4まできたが、四角い画面は変わっていない。今が大きな機転だという話を、海外のコアゲーマーから聞いたことを紹介。

彼らがVRゲーム業界をけん引すると語り、そういう人々が喜ぶものを作らなければならないと語った。

開発者が考えるマーケット、そして作りたいゲームとは

久保田氏の次の質問は、どのマーケットに向けてゲームを作っていくかという内容。

最初に答えた水口氏は、欧米中心と即答。

その理由として、VRを好きな人が多いことを肌身で感じている点と、「PlayStation」の普及率を挙げた。

馬場氏は、現状、日本では採算がとれないことを告白。しかし今は損をしていても、将来は必ず投資を回収できると信じていると、力強く語った

続いての質問は、VRゲームをリリースするデバイスについて。

馬場氏は、どこでも配信をしたいが、VRならではの体験を100%体験してもらうには、今のモバイルデバイスでは難しいと述べた。

そのため、ハイエンドのデバイスになるという。

原田氏は、VRの特性を100%生かすなら、『アーガイルシフト』のような筐体のVRゲームがパーフェクトだと述べた。

しかし、筐体を家庭に普及させるのはさすがに無理なので、「PlayStation VR」など、映像を担保できる、ハイスペックなデバイスで作りたいと語った。

水口氏は、あまりハードとかは意識しないようにしているそうだ。

モバイルもドンドン進化しているため、ハードに縛られず、高いクオリティを保つことだけを考えているという。

最後に久保田氏は、今後、どのようなVRゲームを作っていきたいかを質問した。

馬場氏は、現在、新作のVRゲームを4、5本作っているそうだが、アクションや格闘など、ジャンルはバラバラだそうだ。

その理由として馬場氏は、何が合っているか、またユーザーが何を好むかがまだわからないので、いろいろなジャンルを作り、その反応を見たいからだとした。

続いて原田氏は、作りたいゲームとして、ごく個人的なものを挙げた。

その内容は、アクションの派手なものではなく、滅びた世界でずっとボーっと外を眺めて、誰かが通ったら、スナイパーライフルで頭を撃つようなゲームだそうだ。

内容を聞くだけだとかなり特殊に思えるが、原田氏はリラックスした状態で時間と世界を切り替えられるゲームを作りたいのだという。

最後に水口氏は、作りたいゲームがたくさんでてきたという。1年やってきて、OKのものとダメなものの境目が見えてきたため、そこからいろいろ広がってきたのだそうだ。

今は、作りたいゲームが6つほどあり、それらを最速でどうやって作るかを考えているのだそうだ。

以上で、Session 3は終了となった。

今回のセッションでは、国内外で活躍するVRゲーム開発者の生の声を聞くことができた。その中で感じたのは、欧米と日本とのVRに対する熱量の差だ。

欧米では日本と比べ、数倍の盛り上がりを見せており、VRのスタートアップも多数誕生しているという。

かつてゲーム大国として名を馳せた日本が、VRゲームでも最前線に立つことができるのか。

それはゲーム開発者だけでなく、我々ユーザーの肩にもかかっている。

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