開発も手探り状態「VRで生まれるヒットゲーム」
セッション3の「VRで生まれるヒットゲーム」では、「Mogura VR」の編集長を務める久保田瞬氏が司会を担当。
コロプラの代表取締役社長、馬場功淳氏、バンダイナムコエンターテインメントのゲームディレクター、原田勝弘氏、レゾネアのCEO、水口哲也氏の3名が登壇した。
最初に、3社それぞれのVRに対する取り組みについて、セッションが行われた。
始めに答えたのは、コロプラの馬場氏。馬場氏はOculus RiftとHTC Vive向けにリリースされたコンテンツを、年表とともに紹介。ゲーム以外のコンテンツについても言及した。
現在でも、VRゲームの新作が4、5本進行しているとのこと。馬場氏いわく、もっとVRゲームを作りたいが社内リソースが足りないため、「Colopl VR Fund」を作ったそうだ。
続いて原田氏も、バンダイナムコエンターテインメントの取り組みを、年表とともに解説した。
美しい女性キャラクターが話題となった「サマーレッスン」や、ニコニコ超会議に出展していた「アーガイルシフト」など、話題のVRゲームを次々と送り出す原田氏。
社内でのVRに対する評価も高いようだが、いまだ先行投資の部分が多いため、研究費の予算には苦労しているそうだ。
次に答えたのは、アメリカに会社を設立した水口氏。
まず水口氏は、アメリカにVRゲームの会社を立ち上げたメリットとして、以下の3つを挙げた。
- VRの情報が早い
- ユーザーからすぐに反応を得られる
- 契約もスピーディ
日進月歩で進むVR業界は、スピード感のあるアメリカに会社があったほうが、日本にいるより何倍も有利に立ち回れるのだろう。
また水口氏は、今年の10月にリリースするVRゲーム「Rez Infinite」を紹介。
Rez Infiniteの元となった「Rez」は、水口氏がセガに在籍している際に製作したシューティングゲームで、そのときからVR化を考えていたそうだ。
開発者から見たVRゲームの面白さ
続いて久保田氏は、なぜVRゲームを作ろうと思ったのか、そしてVRの面白さについて質問した。
馬場氏がVRゲームを作った理由は、VRというプラットフォームが広がるなら、必ずゲームをしたいと思うに違いないからだそうだ。
原田氏がVRで注目したのはキャラクター。
普通、ゲーム内のキャラクターが、プレイヤーを意識することはない。しかしVRでは、例えばプレイヤーが目をそらすと、何を見ていると言われるなど、何らかの行動をとってくる。
原田氏は、そのプレイヤーとVRのキャラクターとの関係性を面白いと感じたそうだ。
一方、水口氏は、ゲームというより、VRという新しいことを作るのが楽しいと語った。
それを受けて原田氏も、「やりたいと思っていたことに、やっとハードなどの技術が追いついた」と述べた。
VRゲームを作る難しさ
次に議題にのぼったのは、VRとモバイルゲームとの違いについて。
馬場氏はVRゲームを製作している際、わざわざVRにする必要がないのではないか、と思う瞬間があるのだという。
今は、玉が頭上でクルクル回るなど、ゲームにVR感をいれることで解消しているが、VRならでは、となると難しいと感じているそうだ。
ただ、VRが当たり前になったら、VR感をわざわざいれなくとも、今のゲームをそのまま移植しても大丈夫ではないかと、自身の見解を述べた。
また馬場氏は、VRコントローラーである「Oculus Touch」向けのゲームをレビューした際、ほとんどがボタン操作だった経験を話し、開発者側もVRにまだ慣れていないことを指摘。
同じように、最初、戸惑ったスマホゲームを例に挙げ、VRゲームも製作に関するガイドラインができたら、そのようなこともなくなるのではと語った。
水口氏は、今までのゲームは、ずっと四角い画面に押しこめてきたが、VRになることでその制約がすべてなくなったと発言。
それに対し原田氏は、VR空間におけるユーザーの視線誘導の難しさを例にだし、細部まで完全に作り込む必要性から、VRゲーム開発の難しさを語った。
まだ投資段階にあるVRゲームの将来は!?
次に久保田氏は、VRゲームを製作するコストについて、登壇者に質問した。
これに対し馬場氏は、現在は作り手側が慣れていないため、ノウハウを吸収するまではコストが上がると述べた。
またVRの映像のほうでは、4Kの動画を大量に撮影することになるため、データをバックアップするだけでも、かなりのコストがかかるそうだ。
ただ、海外で見られる、リアル映像から取り込む方法だとコストが下がるとのこと。
コストに人一倍こだわっていた原田氏は、作る物によってコストは変わってくると指摘。
VRの「プリレンダリングムービー」だと、1分変更するだけで、数百数千万ものコストがかかってくるそうだ。
また、VRでは情報量を増やし、密度を上げるほど、臨場感は高まってくる。
MMORPGのように、ダンジョンに行った後、たき火を囲むといった体験をVRでもしたいが、今のコストでは無理だと原田氏は残念がった。
コストの増加を不安視する2人に対し、水口氏は想定の範囲内とし、コストが増えた分もテクノロジーがサポートしてきていると述べた。
さらに水口氏は、無視できない問題として、VRゲームでユーザーからお金を払ってもらう仕組みについて言及。
今までのゲームは、1本いくらで購入するか、ゲーム内で課金する形式だったが、VRゲームは今までにないものになるのではないかと、予想した。
また、欧米のコアゲーマーたちは、お金を払わないことで、きちんとしたゲームが提供されないことを怖がるという、日本のソーシャルゲーマーとの違いを指摘。
VRゲームをグローバルに展開するなら、何がユーザーにとってリーズナブルで満足できるかによって、かけられるコストも変わってくると語った。
VRゲームをミドルゲーマーに普及させるには
VRはまだ先行投資やフィードバックをしている段階だと話す久保田氏。今後どういうふうにVRが普及していくかを、登壇者に聞いた。
この質問に原田氏は、「それにスラスラ答えられたら、もっと投資してもらえるはず」と弱音を吐くも、「VR ZONE」の話になると一転。
想定していたよりかなり好調らしく、試みとしては成功だそうだ。
ただ、VR ZONEを訪れるのは、コアなゲーマーかゲームの初心者のどちらからしく、取り込むべきミドルコアのゲーマーではないとのこと。
ユーザーの中心となるミドルコア層までVRを普及するためには、今のゲームのように、自宅でプレイできるようにならないと難しいと語った。
原田氏は、「PlayStation VR」を選んだことで、コア層からミドル層へとアプローチを変えたという。
水口氏も、「PlayStation VR」は、VRの入口としては非常にはいりやすいと話すが、欧米と日本、それぞれのユーザーの違いについても言及。
欧米では、ゲームの姿勢がマッチョになるため、モバイルでは満足しない人が多いそうだ。
水口氏はアメリカで、海外のコアゲーマーたちが新しい体験を求めていることを、ひしひしと感じているという。
さらに水口氏は、「PlayStation」の1から4まできたが、四角い画面は変わっていない。今が大きな機転だという話を、海外のコアゲーマーから聞いたことを紹介。
彼らがVRゲーム業界をけん引すると語り、そういう人々が喜ぶものを作らなければならないと語った。
開発者が考えるマーケット、そして作りたいゲームとは
久保田氏の次の質問は、どのマーケットに向けてゲームを作っていくかという内容。
最初に答えた水口氏は、欧米中心と即答。
その理由として、VRを好きな人が多いことを肌身で感じている点と、「PlayStation」の普及率を挙げた。
続いての質問は、VRゲームをリリースするデバイスについて。
馬場氏は、どこでも配信をしたいが、VRならではの体験を100%体験してもらうには、今のモバイルデバイスでは難しいと述べた。
そのため、ハイエンドのデバイスになるという。
原田氏は、VRの特性を100%生かすなら、『アーガイルシフト』のような筐体のVRゲームがパーフェクトだと述べた。
しかし、筐体を家庭に普及させるのはさすがに無理なので、「PlayStation VR」など、映像を担保できる、ハイスペックなデバイスで作りたいと語った。
水口氏は、あまりハードとかは意識しないようにしているそうだ。
モバイルもドンドン進化しているため、ハードに縛られず、高いクオリティを保つことだけを考えているという。
最後に久保田氏は、今後、どのようなVRゲームを作っていきたいかを質問した。
馬場氏は、現在、新作のVRゲームを4、5本作っているそうだが、アクションや格闘など、ジャンルはバラバラだそうだ。
その理由として馬場氏は、何が合っているか、またユーザーが何を好むかがまだわからないので、いろいろなジャンルを作り、その反応を見たいからだとした。
続いて原田氏は、作りたいゲームとして、ごく個人的なものを挙げた。
その内容は、アクションの派手なものではなく、滅びた世界でずっとボーっと外を眺めて、誰かが通ったら、スナイパーライフルで頭を撃つようなゲームだそうだ。
内容を聞くだけだとかなり特殊に思えるが、原田氏はリラックスした状態で時間と世界を切り替えられるゲームを作りたいのだという。
最後に水口氏は、作りたいゲームがたくさんでてきたという。1年やってきて、OKのものとダメなものの境目が見えてきたため、そこからいろいろ広がってきたのだそうだ。
今は、作りたいゲームが6つほどあり、それらを最速でどうやって作るかを考えているのだそうだ。
以上で、Session 3は終了となった。
今回のセッションでは、国内外で活躍するVRゲーム開発者の生の声を聞くことができた。その中で感じたのは、欧米と日本とのVRに対する熱量の差だ。
欧米では日本と比べ、数倍の盛り上がりを見せており、VRのスタートアップも多数誕生しているという。
かつてゲーム大国として名を馳せた日本が、VRゲームでも最前線に立つことができるのか。
それはゲーム開発者だけでなく、我々ユーザーの肩にもかかっている。
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