JAGMOの第1章の集大成となる公演
「伝説の交響組曲 THE LEGENDARY SYMPHONIC SUITE」は、ゲーム音楽プロ交響楽団JAGMOの夏のフルオーケストラ公演。
クラシック音楽のコンサートホールとして日本最高クラスのサントリーホールを会場に、過去の公演で人気だった楽曲のほか、「マリオ」シリーズの楽曲が初演奏されるなど、豪華なプログラムでの公演となった。
プログラムは回ごとに異なっており、14日の昼公演では『スーパーマリオブラザーズ』に加え、『スーパーマリオカート』の楽曲が初演奏された。
懐かしの名曲が目白押し
開演前には、ステージ上で弦楽四重奏によるプレコンサートが催された。演奏する曲は『FINAL FANTASY』や『クロノ・クロス』などからで、オーケストラでの演奏が待ち遠しくなってくる。
プレコンサートで演奏された楽曲は下記のとおり。
- 「Melodies of Life」(FINAL FANTASY IX)
- 「ガルドーブ ホーム」(クロノ・クロス)
- 「ザナルカンドにて」(FINAL FANTASY X)
オーケストラの表現力でプレイヤーの記憶を表現
公演は、今回初演奏となる『スーパーマリオブラザーズ』のおなじみの出だしから幕を開けた。さらに、『スーパーマリオカート』の楽曲も演奏された。
ゲーム音楽の生演奏というと、ゲームの映像を演奏といっしょに流す演出を行っているイベントが多いが、JAGMOではあえて、ゲームの映像を流さない。
それは、観客の頭のなかにあるゲームを遊んだ記憶を追体験させるためだという。
そのため、今回の演奏中はBGMだけでなく、コインを取る音や、マリオカートのエンジン音などのゲームの効果音も再現しており、目を閉じれば当時、友だちの家にみんなで集まってレースをしていた当時の記憶が思い出される。
また、ほかの楽曲も、難易度が高いステージの曲であれば、明るい曲であってもどこか緊張感があるよう編曲にするなど、音楽の表面的な部分だけでなく、当時のプレイヤーの心理を表すような演出が散りばめられていた。
今回の公演を聞いて、改めてゲーム音楽のすばらしさとは、音楽単体のよさだけでなく、ゲームを遊んだという体験とのリンクも欠かせないと気づかされた。
なお、今回の公演で演奏されたセットリストは以下のとおり。
『スーパーマリオブラザーズ』より
- 「地上BGM」
- 「スターBGM」
- 「地下BGM」
- 「水中BGM」
- 「城BGM」
『スーパーマリオカート』より
- 「オープニング・タイトル」
- 「レーススタート」
- 「マリオサーキット」
- 「ファイナルラップ」
『サクラ大戦』より
- 「御旗のもとに」
- 「檄!帝国華撃団」
『キングダムハーツ』より
- 「Dearly Beloved」
- 「Roxas」
- 「Tension Rising」
- 「The 13th Struggle」
- 「Vector to the Heavens」
『クロノ・クロス』より
- 「CHRONO CROSS ~時の傷痕~」
- 「疾風」
- 「死線」
- 「勝利 ~春の贈り物~」
- 「星を盗んだ少女」
- 「夢の岸辺に アナザー・ワールド」
- 「運命に囚われし者たち」
- 「龍神」
『クロノ・トリガー』より
- 「クロノ・トリガー」
- 「風の憧憬」
- 「時の回廊」
- 「王国裁判」
- 「カエルのテーマ」
- 「魔王決戦」
- 「世界変革の時」
『FINAL FANTASY』シリーズより
- 「閃光」(FINAL FANTASY XIII)
- 「Force Your Way」(FINAL FANTASY VIII)
- 「ハンターチャンス」(FINAL FANTASY IX)
- 「J-E-N-O-V-A」(FINAL FANTASY VII)
- 「ブラスdeチョコボ」(FINAL FANTASY X)
- 「風の追憶~悠久の風伝説~」(FINAL FANTASY III)
- 「Melodies Of Life」(FINAL FANTASY IX)
- 「Eyes On Me」(FINAL FANTASY VIII)
- 「Kiss Me Good-Bye」(FINAL FANTASY XII)
- 「素敵だね」(FINAL FANTASY X)
- 「ザナルカンドにて」(FINAL FANTASY X)
- 「シーモアバトル」(FINAL FANTASY X)
- 「Otherworld」(FINAL FANTASY X)
- 「召喚獣バトル」(FINAL FANTASY X)
JAGMOの「第1章」の集大成
公演終了後、楽屋におじゃまさせていただき、JAGMOプロデューサーの泉志谷忠和氏にインタビューさせていただいた。
――今回の公演「伝説の交響組曲」のコンセプトを教えてください。
泉志谷氏(以下、泉志谷):今回の公演を「最高の生演奏を届ける世界一のゲーム音楽交響楽団を目指す」という目標に向けての最初の1章の集大成と位置付けています。
2014年の立ち上げ時は室内楽の小さな公演をしていたJAGMOが、2015年2月にフルオーケストラ公演(公演タイトル「伝説の交響楽団」)ができました。
その後、「伝説の戦闘組曲」「伝説の狂詩曲」などコンセプトごとに公演をさせていただきました。
今回の公演は、さまざまな音楽を奏でてきた伝説の交響楽団が、集大成として「伝説の交響組曲」を作るというストーリーのように考えています。
――今回、マリオシリーズの楽曲の演奏が実現したきっかけを教えてください。
泉志谷:マリオシリーズの楽曲はずっと演奏させてほしいと思っていました。今回、ご縁があって、実現することができました。
これからも、ご縁に感謝して、もっとさまざまなゲームの楽曲の演奏も実現できるよう努めていきます。
――今回の公演では、過去の公演で人気だった楽曲が演奏されましたが、人気になりやすい楽曲に傾向はありますか。
泉志谷:公演にいらっしゃった観客の方が、よく遊んでいたゲームを懐かしんで、このタイトルの楽曲が聞きたいとアンケートに書かれることが多いのですが、とくに、現在、20~30代の方が子どものことに遊んでいたタイトルの曲が多いです。
――JAGMOの演奏家の方たちも若い方が多くいらっしゃいますが、ゲームをプレイされる人が多いのでしょうか?
泉志谷:演奏家もちょうど20~30代の世代が多いので、子どものころに身の回りにゲームがあるような環境で育ってきた人が多いです。
たとえば、今回の『マリオカート』ではゴールした瞬間に流れる「ピューン」という音をピッコロで入れているのですが、これを編曲家が担当者に説明しようとしたら「わかっています」と先に言われてしまいました(笑)。
――ゲームの思い出を共有しながらだと、音を合わせるのが楽しくなりそうです。
泉志谷:プロの音楽家としてより良い演奏をしようという厳しい面と、ゲームの思い出を共有する楽しい面が合わさってJAGMOの演奏につながっていると思います。
オフの日に話しているときなんかは、「このゲームが演奏したい」という声も演奏家から出てきますよ。
――最初に今回の公演は第1章の集大成と伺いましたが、最後にJAGMOの第2章はどのようなものになるのでしょうか?
泉志谷:まず、音楽の質を高めることと活動の地域を広げることの2つです。
特に、まだ首都圏でしか公演ができていないので、大阪や名古屋、北海道など全国で公演を開催したいですね。
また、「JAGMO WORLD PROJECT」を打ち出しまして、世界中にゲーム音楽を届けるのを目標にしています。
そして、ゲーム音楽の生演奏の歴史を、これからも作り続けていきたく思います。
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