ユーザーと開発者の架け橋となるマーケティングリサーチ
ユーザーの要望に応え、よりゲームを楽しんでもらいたいのは、ゲーム開発者に共通する思い。
「スマホゲーム分析の一歩先へ ~ユーザー行動ログとユーザーの感情を結びつける新しい分析手法~」と題して行われたセッションでは、DeNAのリードマーケティングリサーチャー片瀬大氏から、ユーザーアンケートと行動ログを使ったマーケティングリサーチの手法が紹介された。
ユーザーの満足度を上げるために逆転オセロニアが行った事例
片瀬氏が最初に事例として紹介したのは、『逆転オセロニア』(以下、オセロニア)の事例。
オセロニアでは、サービスを開始後1ヵ月の段階で、ユーザーの満足度を高めるため、さらなる改修を予定していた。
しかし、サービス開始後1ヵ月というタイミングは、最もリソースが不足する時期でもあり、ユーザー要望のうち、どこから対応していくのか判断する必要に迫られていた。
そこで、行ったのがユーザーアンケートによる調査。
ゲーム内の要素を20に分けてユーザーアンケートを行い、そこから導き出されたユーザーの満足度と、重要性のCSポートフォリオ分析を実施して、満足度により効果がある順に対応を行ったという。
マッスルショットのCM方向性決定の事例
続いて、片瀬氏が紹介したのは、『キン肉マン マッスルショット』(以下、マッスルショット)のCMの事例。
2015年3月にサービスを開始したマッスルショットでは、2016年5月にテレビCMの放送を予定していた。
ここで、問題となったのが「15秒間という限られた時間で、どんな層にどのような情報を見せるのか」ということ。
往年のキン肉マンファンをターゲットとするか、キン肉マンを知らない層をターゲットとするべきか。また。ゲームのどの部分を見せるのがいちばんユーザー獲得につながるのか。
そこで、まず事前にマッスルショットを遊んでいないユーザーに対して、以下のようなアンケートを行った。
キン肉マンのファンであるか?
- 今もずっと追いかけているキン肉マンファン(コア)
- 昔はキン肉マンが好きだったが今はそれほど好きではない(ミドル)
- すごく好きというわけではないが知っている(ライト)
- キン肉マンについてあまり詳しくない(認知だけ)
キン肉マンのスマホゲームが出たら遊んでみるか?
- 興味がある
- 興味がない
キン肉マンのスマホゲームのCMでどの要素に興味を持つか?
- キン肉マンのスマホゲーム
- 必殺技
- アクションやゲーム性
- 超人たちのミニキャラクター
このアンケートの結果、ユーザーの市場ボリュームでは、キン肉マンをついて詳しくない人が最も多かった。
しかし、ゲームに対して興味を持つ人は全体の1%と最も少なく、市場ボリュームがいちばん少ないコアファンは、多くの人がゲームに対して興味を持った。
ユーザーの行動ログとアンケートを組み合わせた試み
ここまで紹介された事例は、アンケートの効果によるもの。
しかし、片瀬氏によれば、アンケートだけでは、ユーザーの把握はしきれないのだという。
そこで、ユーザーの行動ログをアンケートと合わせて取得する方法を、DeNAでは実践しているという。
片瀬氏は、ゲームにおけるマーケティングリサーチは、「ユーザーと開発者をつなぐ架け橋のようなもの」と話す。
かゆいところに手が届くようなゲームの改善アップデートや、ユーザーを盛り上げるイベントの陰には、ユーザー心理をつかむ、効果的なマーケティングリサーチが行われているのかもしれない。
CEDEC2016
- 日程:2016年8月24日(水) ~ 8月26日(金)
- 会場
パシフィコ横浜 会議センター - 主催
一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA) - 共催
日経BP社 - 予定セッション:200
- 後援
経済産業省
横浜市
一般社団法人情報処理学会
人工知能学会
NPO法人 ソフトウェアテスト技術振興協会(ASTER)
日本バーチャルリアリティ学会 - 協賛
<プラチナスポンサー>株式会社Cygames
<ゴールドスポンサー>エピック・ゲームズ・ジャパン
<シルバースポンサー>株式会社ディー・エヌ・エー、任天堂株式会社、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント