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オセロニアとマッスルショットで実践されたDeNAのマーケティングリサーチ術【CEDEC2016】

開発者にとって、プレイヤーがゲームに対してどのような感想を持っているかは気になるポイント。CEDECで行われた片瀬大氏のセッションでは、『逆転オセロニア』や『キン肉マン マッスルショット』で行ったマーケティングの事例が紹介された。

ユーザーと開発者の架け橋となるマーケティングリサーチ

ユーザーの要望に応え、よりゲームを楽しんでもらいたいのは、ゲーム開発者に共通する思い。

「スマホゲーム分析の一歩先へ ~ユーザー行動ログとユーザーの感情を結びつける新しい分析手法~」と題して行われたセッションでは、DeNAのリードマーケティングリサーチャー片瀬大氏から、ユーザーアンケートと行動ログを使ったマーケティングリサーチの手法が紹介された。

ディー・エヌ・エーのマーケティングリサーチチームのマネージャーを務める片瀬氏

ユーザーの満足度を上げるために逆転オセロニアが行った事例

片瀬氏が最初に事例として紹介したのは、『逆転オセロニア』(以下、オセロニア)の事例。

オセロニアでは、サービスを開始後1ヵ月の段階で、ユーザーの満足度を高めるため、さらなる改修を予定していた。

しかし、サービス開始後1ヵ月というタイミングは、最もリソースが不足する時期でもあり、ユーザー要望のうち、どこから対応していくのか判断する必要に迫られていた。

SNSやイベントなどユーザーとの交流を大切にする運営方針がオセロニアの大きな特徴

そこで、行ったのがユーザーアンケートによる調査。

ゲーム内の要素を20に分けてユーザーアンケートを行い、そこから導き出されたユーザーの満足度と、重要性のCSポートフォリオ分析を実施して、満足度により効果がある順に対応を行ったという。

CSポートフォリオ分析とはユーザーの満足とゲーム内での重要性により要素をグラフ化し、何を優先すべきかを切り分ける手法

マッスルショットのCM方向性決定の事例

続いて、片瀬氏が紹介したのは、『キン肉マン マッスルショット』(以下、マッスルショット)のCMの事例。

2015年3月にサービスを開始したマッスルショットでは、2016年5月にテレビCMの放送を予定していた。

ここで、問題となったのが「15秒間という限られた時間で、どんな層にどのような情報を見せるのか」ということ。

往年のキン肉マンファンをターゲットとするか、キン肉マンを知らない層をターゲットとするべきか。また。ゲームのどの部分を見せるのがいちばんユーザー獲得につながるのか。

候補に挙がったのは、「キン肉マンのスマホゲーム」「キン肉バスターなどの必殺技」「アクションやゲーム性」「超人たちのミニキャラクター」の4つ

そこで、まず事前にマッスルショットを遊んでいないユーザーに対して、以下のようなアンケートを行った。

キン肉マンのファンであるか?

  • 今もずっと追いかけているキン肉マンファン(コア)
  • 昔はキン肉マンが好きだったが今はそれほど好きではない(ミドル)
  • すごく好きというわけではないが知っている(ライト)
  • キン肉マンについてあまり詳しくない(認知だけ)

キン肉マンのスマホゲームが出たら遊んでみるか?

  • 興味がある
  • 興味がない

キン肉マンのスマホゲームのCMでどの要素に興味を持つか?

  • キン肉マンのスマホゲーム
  • 必殺技
  • アクションやゲーム性
  • 超人たちのミニキャラクター

このアンケートの結果、ユーザーの市場ボリュームでは、キン肉マンをついて詳しくない人が最も多かった。

しかし、ゲームに対して興味を持つ人は全体の1%と最も少なく、市場ボリュームがいちばん少ないコアファンは、多くの人がゲームに対して興味を持った。

結果、CMのターゲットは獲得余地が高いコアなキン肉マンファンとなった

そして、CMはコアなファンからもっとも関心が高かったミニキャラクターを押し出したものに決定した

CMの放送の結果、ゲームのDL数は想定していたものの130%にも上り、その多くはコアなファン。CMを見て始めた理由で最も高かったのは、ミニキャラクターの効果だった

ユーザーの行動ログとアンケートを組み合わせた試み

ここまで紹介された事例は、アンケートの効果によるもの。

しかし、片瀬氏によれば、アンケートだけでは、ユーザーの把握はしきれないのだという。

あくまでアンケートはユーザーの主観によるもののため、「1ヵ月にどれくらいバトルをするか」や「ヘビーユーザーかどうか」などユーザーを分類するのは難しい

そこで、ユーザーの行動ログをアンケートと合わせて取得する方法を、DeNAでは実践しているという。

たとえば、ゲームをプレイする頻度とプレイヤーの年齢層の比較。こちらのグラフではライトユーザーに10代、20代がライトユーザーに多く、ヘビーユーザーの多くは30代。このような年齢層とユーザーの層の割合はタイトルによって大きく異なるという

逆に行動ログでは、どのイベントも参加率は高いように見えるが、アンケート結果を合わせることで、一部のイベントではユーザーは不満を持ちながらも参加していることが見えてくる

行動ログをさかのぼることで、ゲームをやめてしまったユーザー離脱の原因の把握もスムーズに行うことができるという

片瀬氏は、ゲームにおけるマーケティングリサーチは、「ユーザーと開発者をつなぐ架け橋のようなもの」と話す。

かゆいところに手が届くようなゲームの改善アップデートや、ユーザーを盛り上げるイベントの陰には、ユーザー心理をつかむ、効果的なマーケティングリサーチが行われているのかもしれない。

CEDEC2016

  • 日程:2016年8月24日(水) ~ 8月26日(金)
  • 会場
    パシフィコ横浜 会議センター
  • 主催
    一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)
  • 共催
    日経BP社
  • 予定セッション:200
  • 後援
    経済産業省
    横浜市
    一般社団法人情報処理学会
    人工知能学会
    NPO法人 ソフトウェアテスト技術振興協会(ASTER)
    日本バーチャルリアリティ学会
  • 協賛
    <プラチナスポンサー>株式会社Cygames
    <ゴールドスポンサー>エピック・ゲームズ・ジャパン
    <シルバースポンサー>株式会社ディー・エヌ・エー、任天堂株式会社、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント