ゲーマー向けSIM「LinksMate」が目指すものとは?LogicLinks春田氏に聞く

『グランブルーファンタジー』の元プロデューサー、春田康一氏が代表を務めるLogicLinksがMVNO事業に参入。スマホゲームユーザーにとって、まさに理想とも言えるMVNOサービスの特徴や、今後の展望について聞いてきた。

スマホゲーマー待望のSIM「LinksMate」が7月1日より正式サービスイン

価格競争やサービスの多様化で、認知度・利用者数を伸ばすMVNO業界に、この夏、新たな勢力が参入する。

『グランブルーファンタジー』や『Shadowverse』で知られるCygamesの子会社、LogicLinksが手掛けるMVNOサービス「LinksMate」だ。

「ゲームプレイヤーのためのSIMカード」を謳うこのMVNOの特徴は、カウントフリーオプション。

カウントフリーオプションとは、特定のアプリやサービスを利用した際に発生する通信量が90%オフになるもの。

他のMVNOでも同様のサービスが提供されているが、LinksMateの場合、ゲームアプリがカウントフリー対象の中心となっているのだ。

カウントフリー対象コンテンツ

ゲーム

  • あんさんぶるスターズ!(Happy Elements)
  • 一血卍傑-ONLINE-(DMM.com)
  • グランブルーファンタジー(Cygames)
  • 剣と魔法のログレス いにしえの女神(Marvelous)
  • 実況パワフルサッカー(KONAMI)
  • Shadowverse(Cygames)
  • 千年戦争アイギス A(DMM.com)
  • 刀剣乱舞-ONLINE- Pocket(DMM.com)
  • BanG Dream!ガールズバンドパーティ!(ブシロード・CraftEgg)
  • みんゴル(ForwardWorks)

SNS

  • Twitter
  • Facebook

その他コンテンツ

  • Abema TV(CyberAgent)
  • AWA(CyberAgent)
  • App Store(Apple)※
  • GooglePlay(Google)※

※カウントフリー対象コンテンツのダウンロードに限る

また、対象のゲームと連携することで、ゲーム内で特典を受け取ることができる。

このカウントフリーオプションとゲーム連携により、ゲーマーにとって魅力的なMVNOサービスとなっているわけだ。

今回、LogicLinksの代表取締役社長を務める、『グランブルーファンタジー』元プロデューサーの春田康一氏に、MVNO事業に参入する理由や今後の展望などを聞いてきた。

ゲームユーザーとデベロッパーのためのカウントフリー

――本日はよろしくお願いします。まず最初に、LogicLinksを立ち上げるまでの経歴を簡単にお聞かせください。

春田康一氏(以下、春田):ご存知の方も多いと思いますが、Cygamesでプロジェクトマネージャーからプロデューサーまでやらせていただきまして、代表的なタイトルとして『グランブルーファンタジー』(以下、グラブル)のプロデューサーをやらせていただきました。

2016年の11月にグラブルのプロデューサーを卒業しまして、同月にLogicLinksを立ち上げて現在は代表を務めております。

――LogicLinksの事業内容は「ゲームデータ分析・ゲーム開発サポート事業」とのことですが、具体的にどういったことをされているのでしょうか?

春田:ゲームデータ分析事業の方は、もともとCygamesにあった1つの事業をそのまま譲渡する形でスタートしております。Cygamesが持っているノウハウだったりツールだったりをゲーム業界全体に活用していただきたいな、という想いで活動を行っています。

ゲーム開発サポート事業については、僕自身がグラブルを運営してきて、感じたことであったり学んだことを、特に新しい会社だったりゲーム事業がなかなかうまくいかないと感じられている会社さんに、役に立てていただけることがあれば、お伝えさせていただいているという形ですね。

――では、LinksMateについて、どういったサービスなのかご紹介いただけますか?

春田:LinksMateというサービスは、MVNOという事業になりまして、お客様が携帯電話やWi-Fiルータを使われる際に、端末の中に入れるSIMカードを発行して貸し出すサービスを行っています。

ドコモ・au・ソフトバンクといった大手キャリアさんから通信網を借りて、我々のお客様にデータ通信や音声サービスを提供するという形です。

LinksMateでは、ドコモさんより通信網をお借りしています。

――すでに数多くのMVNO事業者がサービスを展開していますが、それらと比較してどのあたりに強みを持っているのでしょうか?

春田:やはりゲームとそれに付随するエンタメコンテンツ・SNSがカウントフリーになることが最大の強みかなと思っております。

ゲームをずっと楽しんでいただきたい、通信制限や速度制限を気にすることなく、さまざまなコンテンツを大いに遊んでいただきたいという想いがきっかけで、このようなサービスを提供させていただいております。

僕自身もグラブルを運営していていたときに、通信制限がかかってゲームが遊べないということが起きたことがありましたし、ゲームによっては起動すらしないこともあります。

もちろんお金を払って通信容量を追加すればまた遊べるのですが、やはりそれはストレスなので、快適に遊んでいただいた方が、お客さまにもゲーム業界全体にも良いと思いましたので、我々の1つの特徴的なサービスとしてカウントフリーオプションを提供させていただいています。

――契約しているプランの通信量を使い切った後も、カウントフリー対象のゲームは低速にならないのですか?

春田:ならないですね、高速のままお使いいただけます。

――スマホでゲームを遊ぶ人にとっては魅力的なSIMですね。

春田:そうですね。

ゲームがしたい人に特化したSIMカードを目指しておりますので。

――ゲームの通信量がカウントフリーになるSIMはこれまでなかったので、MVNO各社はゲームに関しては積極的ではない印象を持っていました。

春田:各社さんそれぞれの戦略や事情はあると思いますが、ゲームの通信をカウントフリーにしようとすると非常に複雑な場合が多いのは、その一因かもしれません。

自社コンテンツを自社サーバーでやっているものとか、TwitterやFacebookのような世界的に普及しているコンテンツの通信テンプレ化されているものとかは、カウントフリーの対象とするのも容易なのですが、ゲームの場合はそうでもないのです。

ゲームによって通信の仕方が違うので、我々はそれぞれに対応したシステムを自社で構築してカウントフリー化するサービスをご提供しています。

MVNO各社さんもできないわけではないと思いますが、それに見合うコストなのかといった、ビジネス的な判断なのかな思います。

我々としては、ゲームをプレイするお客様が、通信容量を気にせずに遊べて、そういったお客様がいるからゲーム側も発展して、ビジネスとして規模が大きくなって経済状況もよくなり、その結果、新しいゲームにチャレンジし、そのゲームがさらにお客様に遊んでもらえる。

この循環が、生まれてほしいんです。

そのために、弊害となっていると思われる通信容量について、うちのサービスならそれを気にしないで遊べます、っていうのをやっているだけなんですよね。

――カウントフリーオプションは、他社の場合は「通信量がタダ」や「使い放題」という表現をしますが、90%オフという表記は何か理由があるのでしょうか?

春田:これはですね、ゲーム単体で言えば対象の通信は100%カウントフリーなのですが、ゲームを立ち上げた際にOSが発生させる通信だったり、広告の通信だったりといったような、ゲーム以外の別のトラフィックが発生していることがあるんですよ。

なので、厳密に100%オフにするということはできないのです。

我々は、アプリケーションを立ち上げてから終了するまでの通信量を90%オフにしますということを伝えたいので、このように表現しています。

グラブルを例にすると、グラブル単体の通信だけで見れば100%オフになります。

ただ、アプリを立ち上げると、iOSをご利用のお客様がAppleと通信をしますし、Androidをご利用のお客様はGoogleとの通信が発生します。

Twitterはもっと込み入っていて、Twitterの中で読み込んでいる画像や動画というのも、ものによっては別サイトのものだったりするんですね。

これらをどこまでカウントフリー化しますかというのは、各社の提供に仕方によって変わってくるのですが、我々はそこにおいては基本的に90%以上という形でやっています。

アプリの中で他のサイトに行くパターンで、飛んだ先までカウントフリー化はしていないですけれども、Twitterを見るうえでの画像や動画などに関してはカウントフリー化しているという状況です。

――Twitterを閲覧するクライアントは公式のアプリ以外でもカウントフリーにもなるのでしょうか?

春田:ここがカウントフリーオプションの仕組みについて、お客様と事業者側の差異があるところだと思っています。

MVNOとしてカウントフリーオプションを提供するにあたって、Twitter社と通信をする部分をカウントフリー化しますという会社と、Twitterアプリかサービスを使ったらカウントフリーにするという会社があります。

前者のTwitter社との通信をカウントフリーにする会社の場合は、それ以外の通信はカウントするというのと同義なので、画像や動画が別サイトだった場合は通信容量のカウントが発生します。

Twitterの場合はその容量が結構大きくて、例えばGIF画像って完全に別会社の通信なんですけど、これに関する通信が20~40%を占めている場合があります。

我々は逆に、Twitterを利用している中で、Webビューなんかは除きますが、基本的には90%以上をカウントフリーにする形で提供しますとお伝えしている形です。

なので、LinksMateはTwitterのアプリだったりブラウザだったりは関係ないです。

――MVNOユーザーとしては、やはり通信速度が気になるところです。7月1日に正式サービスを迎えるわけですが、快適に利用できる速度を提供できる見込みはいかがでしょうか?

春田:まず前段をお話したほうがいいと思うのですけども、我々はMVNOの中でも、MVNEがいません。

なので、お客様の通信状況の管理もすべて自社でやっています。

お客様の加入数に応じて、どれぐらいの通信帯域を設けるのかというのも、我々の方で管理、コントロールをしています。

現在、先行申し込みの受け付けをしておりますが、現状はまだまだ余裕がある状況です。

正式サービスが始まって、我々の予想値を上回るお客様が集まった場合でも、耐えうる速度、帯域はいったんご用意したつもりです。

ですが、通信帯域はどんなに広く用意をしていても、たとえばTwitterで注目を集めるトレンドが現れたりして集中的に混雑すると、その瞬間はお客様のご満足いただけない速度になってしまうかもしれないです。

ただ、我々の設計上では最低限、ゲームが遊べなくなるような通信速度には絶対しない、というところを目指しています。

MVNEとは

Mobile Virtual Network Enabler(仮想移動体サービス提供者)の略称で、MNO(自社で回線網を持ちサービスを提供する事業者)とMVNOの間に入り、MVNOの支援を行う事業者。

MNOとの交渉や顧客管理システムなどを提供し、MVNO事業の全体的なコンサルティングも行い、MVNO側はコストの削減や、そもそも参入がしやすくなるといったメリットがある。

LogicLinksでは、これを自社で行っているということになる。

――カウントフリーの対象となるゲームの会社さんへお話をした際は、どのような反応でしたか?

春田:特に損のある話ではないので、「悪い話だなぁ」みたいな反応はなかったです。

――カウントフリーの対象になる場合、ゲームメーカー側が対応しなければならない作業はありますか?

春田:ほとんどないです。通信の計測などは全部我々がやりますので。

なので、ゲーム会社さんのリアクションとしては、やろうとしてることとしては非常にいいことなのは分かるんだけども、そもそもMVNOって何なのか、SIMカードってどういう風になってるの、我々に対するデメリットはないのか、というご意見をいただくことは多いですね。

ゲーム連携はゲーマーにとって理想のサービスへ

――もう一つの特徴であるゲーム連携について、どういったサービスなのか教えてください。

春田:お客様はマイページから、対象のゲームのIDとニックネームを入力することで、LinksMateの会員IDとゲーム側のユーザーIDを紐づけることができます。

そうすると、ゲーム内ではすでに実装されているアイテムなどになりますが、そういったものがプレゼントされるという形です。

契約するプランによって、連携できるゲームの数が変わってきます。

――連携対象のタイトルは増えていく予定はありますか?

春田:そうですね。

対象タイトルが増えるのもありますし、やることが増える可能性もあります。

僕が本来やりたかったのは、ゲームをプレイしてもらえれば、我々のほうがサービスをするという形です。

例えば、グラブルでレベルが1上がったら、高速データ通信量を1GB差し上げますといったものです。

連携なので、こちらから何か一方的に何かするだけでなく、ゲーム側からもフィードバックがあるような仕組みを作れたらと思っているので、そこはこれからですね。

極端な話、ゲームをやっていれば携帯代を無料にすることもできなくはないと思ってます。連携するってそういうことだと思うので。

ゲームユーザーにとってみれば理想じゃないですか。

もちろんデータ通信は生活に必要なインフラになってますので、水道やガス、電気と一緒で使えば使うだけお金を払うのは間違ってないと思います。

直近の20~30年を見るとインターネットの料金は非常に抑えられてきていますが、それを僕らは別の形でお客様にメリットがあって、サービス連携会社にもメリットがあるような中間ハブとして何か事業として起こせないかというのがLinksMateだと思ってもらえればうれしいです。

LinksMateは、SIMカードを提供するサービス名ではなくて、LinksMateというサービスの中にMVNOという1つのビジネスコンテンツがあって、LinksMate自体はもっと横にサービスを拡張していくと思います。

――その他に、今後どのようなサービスにしていきたいか、長期的なビジョンって何かお持ちですか?

春田:兎にも角にも、スマホに限らずゲームユーザーさんがゲームをやれる環境を整えるためのサービスをやっていきたいと思っています。

得意とするサービスやコンテンツ、インフラで、何かしらゲーム業界を盛り上げる、ちょっとした役にたてる存在になっていけばいいなと。

長期的に仕事を見るというよりは、まずは今のLinksMateとしてやっているMVNOサービスをゲームユーザーの皆さんにとって喜んでもらえるサービスにしていきたいっていう気持ちが強いですね。

喜んでいただけてないのに次のサービス考えても仕方ないじゃないですか。

なので、喜んでもらったのがみえたタイミングから、次のことを考えようとは思っていますね。

(C) LogicLinks, Inc.