ビーラインからカプコン・モバイルへ
カプコンといえば、『ストリートファイター』や『バイオハザード』など、無骨な格闘、アクションゲームが有名なメーカー。
しかし、今回紹介するカプコン・モバイルは、カジュアルユーザーに向けたモバイルゲームを開発・運営しているという、ある意味でカプコンらしくない会社である。
とはいえ、今後『モンスターハンター』や『戦国BASARA』など、カプコンの人気タイトルを活用したスマホタイトルをリリース予定ということで、注目度は高い。
そこで、開発部部長の狩野直士氏に、現在のタイトルの状況や新作の情報について話を聞いた。
――はじめに、カプコン・モバイルという会社の設立のきっかけからおしえていただけますでしょうか。
狩野:そうですね、ビーラインの成り立ちからお話ししますと、欧米を中心に『Smurfs’ Village』(スマーフ・ビレッジ)、『Zombie Cafe’』(ゾンビカフェ)といったタイトルをリリースしてきました。
これらの作品は、ゲームの内容や対象ユーザーが、カプコンのこれまでのゲームとは大きく異なっています。
そこで、カプコンブランドとの明確な差別化を図るため、ビーラインブランドを立ち上げました。
「ビーライン・インタラクティブ・ジャパン」は、その中で日本・アジア地域への開発・配信を行う会社として設立しました。
――ターゲットとしては、カジュアルユーザーだったんですね。
狩野:はい、カプコンのゲームを楽しんでくれているプレイヤーは、どうしてもゲームユーザーが多いので、カジュアル層にはあまり訴求できていませんでした。
モバイルゲームが出始めた当時は、海外も含めてカジュアルゲームが求められていました。
そこで、あえてカプコンの路線ではないカジュアルなブランドとして「ビーライン・インタラクティブ」が設立されました。
最初は『Smurfs’ Village』というタイトルが海外でヒットしまして、『スマーフ』のシリーズタイトルで、全世界で累計1億DLを記録しました。
海外にモバイルのタイトルを広めるという目的で、ロサンゼルスにオフィスを構えまして、開発のスタジオはトロントに設けてプロジェクトを進めていました。
ビーライン・インタラクティブ・ジャパンというのは、この海外で作ったタイトルを日本でも配信していくための会社です。
――カプコン・モバイルとビーライン・インタラクティブ・ジャパン(以下ビーライン)という会社は、会社名が変更されただけなのでしょうか。
狩野:組織としては、そうなります。
ただし、取り扱うゲームタイトルが、ビーラインではカジュアルユーザー向けのものだったのに対し、カプコン・モバイルではカプコンIPを使ったタイトルが加わる、という形です。
元々いたビーラインのメンバーに加えて、カプコンの開発チームが30人くらい合流しまして、今では総勢90人弱くらいのスタッフがいます。
そのうち開発メンバーは60人超といったくらいですね。
――今、メンバーの方はスヌーピードロップスなどの既存のタイトルを運営しているのでしょうか。
狩野:現在は主に、ビーラインとして出していた
- スヌーピードロップス
- スヌーピーストリート
- ゾンビカフェ
といったタイトルの運営をしています。
ミッドコアをターゲットにした展開
――カプコン・モバイルの主なターゲットは、どのような層なのでしょうか。
狩野:弊社はゲームユーザーに対して強い支持を受けるIPを持っているので、そういった「ミッドコアユーザー」をメインのターゲットとした展開を考えています。
「ミッドコア」というのは、昔ゲームを遊んでいたけど、最近の新しいハードではプレイしなくなった層という定義ですね。
ビーラインが今まで培ってきたカジュアルゲーム運営の実績と、そこにカプコンのIPを組み合わせて、ユーザーに提供していく、というのがカプコン・モバイルとしての狙いです。
――昔ゲームを遊んでいた、ということは、年齢層としてはけっこう高めでしょうか。
狩野:30代、40代のユーザーは、現在はモバイル端末でしかゲームをプレイしなくなっているという層も多いと思われます。
これらのユーザーも、ミッドコアの定義に含まれます。
実は、このユーザー層がものすごく広いのではないかと睨んでいます。
今だと、モバイルゲームはプレイするけど、家庭用のゲーム機をほとんど知らない、というようなユーザーも多いと思うんですよね。
ミッドコアの定義では、そういったユーザーも「ゲームユーザー」として捉えているので、潜在的なユーザー数はかなり多くなると思います。
カプコン・モバイルとしては、今後もビーラインブランドは継続してやっていくつもりです。こちらは完全にカジュアルですね。
今後の方針としては、カジュアル+ミッドコアの層を狙っていきます。
スヌーピータイトルに自信アリ!
――では、続いては現在展開中のタイトルについておしえてください。
狩野:ビーラインで出した『スヌーピーストリート』は、現在、全世界で1,300万を超えるDLを記録していまして、日本でも400万近くDLされています。
ビーラインとしては、スヌーピーを使ったタイトルは我々の大きな武器だと思っています。
スヌーピーストリートとスヌーピードロップスの中で使われているイラストや演出というのは、すべて内製で作っているんです。
原作者であるチャールズ・モンロー・シュルツという方の、ギザギザがあるような独特のタッチを、うまく再現して社内で作っています。
そのデザインに関しても、監修機構がありまして、そこのチェックを通すためのノウハウもかなりたまっていていますね。
版権元であるピーナッツさまとも、仲よくやらせていただいてます。
2年前に、スヌーピードロップスのプロジェクトが立ち上がった時は「徹底的にかわいいパズルゲームを作ろう!」というところからスタートしました。
当初、作ってみるまでは、パズルゲーム開発は比較的簡単なんじゃないかと思ってました。
ところが、作ってみるととても難しかったです(笑)。スヌーピードロップスを作る際、いちばん重要視したのは、手触りとか気持ち良さなんです。
最初は、エフェクトもこだわってガンガン出していったんですが、そうするとどんどん処理落ちしてしまって、ゲームが重くなってしまって。
――スペシャルドロップを作ると、消える範囲が広くてかなり爽快ですよね。そこに至るまで、さまざまな紆余曲折があったのでしょうか。
狩野:けっこう大変でした(笑)。正直、パズルゲーム甘く見てましたね。
最初のプロトタイプを作るときも、すごく力を入れてやりました。
あとは、いろいろ挑戦的なこともやっています。
リアルタイムの通信対戦も入れてますし、イベントの仕掛けもやってますね。
今は、ほぼ常に新しいステージの追加や新規イベントの開催をしているという状況です。
――リアルタイムの通信対戦も実装されていたんですね。
狩野:これはマーケティングの責任者がやりたいといい出して、決まりました。
パズルゲームでのリアルタイム対戦というのは、けっこう難しくて、ルールやシステムを決めるのも大変なんです。
でも、イベントのパターンの1つとしてはユーザーに飽きられずに遊んでいただけているかなと思っています。
スヌーピーストリートとゾンビカフェはパズドラ以上の長寿タイトル!
――では、スヌーピーストリートとゾンビカフェについてもお話を聞ければと思います。
狩野:どちらももう4、5年運営しているタイトルです。ゾンビカフェは、今度5周年を迎えます。
スヌーピーストリートも、4月に4周年イベントを開催しました。どちらも長期で続いているタイトルですね。
――ということは、『パズドラ』より長期ですか?
狩野:長いです。どちらもゲーム内容は、クォータービューの街づくりゲームで、ファンが多いジャンルですね。
スヌーピーの原作の世界観をそのまま表現していて、かつ当時は動いているスヌーピーが見られるアプリがこれしかなったんです。
スヌーピーストリートをここまで継続してやってきたことで、スヌーピードロップスを作る実力がついたんじゃないかと思っています。
絵のデザインや、世界観的なところの設定についてのノウハウですね。
【ラッキーディップ開催中!】4周年記念の特別なラッキーディップを開催中★☆4/4(月)~4/5(火)9:59まで! pic.twitter.com/iwD8ByDm62
— スヌーピーストリート【公式】 (@snoopy_street) 2016年4月4日
4周年記念イベントでは、特別なラッキーディップが開催されていた
ゾンビカフェはカプコンコラボが人気
――ゾンビカフェに関しては、スヌーピーのシリーズと比べるとだいぶ異色な印象ですが、どういった経緯で開発が始まったのでしょうか。
狩野:移植モノなので、これも元々は海外のタイトルですね。
海外だと、Smurfs’ Villageのようなクォータービューの街づくりゲームが人気があって、それに加えてゾンビゲームをビーラインっぽく作ろう、というのが始まりだったと思います。
向こうが考えるゾンビというのは、日本と違ってブラックジョークやユーモアがあって、すごく人気が出るそうで、それでゾンビで行こうということに決まりました。
日本にゾンビカフェを移植した際には、舶来感のあるビジュアルや、コミカルなゾンビのブラックジョークが受けて、すごい人気が出たんです。
当時はアプリ自体が少なかったので、そんな中でけっこう目立つ存在としてヒットしました。
ゾンビカフェをプレイしている方は、長くずっとプレイしてくれているユーザーさんたちが多いんですが、そういった方に人気なのは、カプコンの社内IPとのコラボですね。
ゾンビカフェの中に、いろいろなカプコンゲームのキャラクターが登場します。
――それは、ゾンビになって出てくるんですか?
狩野:ゾンビになるキャラクターもいれば、「ゾンビになっちゃダメ」といわれてゾンビ化していないキャラクターもいます。
今まで、『魔界村』『デビル メイ クライ』とか『ロックマン』『ヴァンパイア』などとコラボしてます。
まもなくリリース!? 注目のカプコンIP新タイトル
――差し支えのない範囲で、カプコンIPの新タイトルについておしえていただけますでしょうか。
狩野:具体的なタイトル名は出せないのですが、もう少しだけお待ちください。
現在、絶賛開発中なので楽しみにしていていただければと思います。
――新作は、カプコン・モバイル社内での製作ですか?
狩野:そうです。4タイトルのリリースを予定しています。
といっても、開発拠点がいくつかありますので、それぞれのタイトルを合わせて4つです。
――海外拠点のタイトルもあるんですね。そうなると、はじめから世界での展開を視野に入れているのでしょうか。
狩野:IPによりますね。我々が狙っているのは、いまゲームをしなくなった層や、スマホでしかゲームをしない層なので、ターゲットを明確化してはいます。
そこがリーチできる範囲であれば、国内だけであろうが、世界であろうが、ターゲットに合わせたところで展開するのがいいと思っています。
現在IR情報では、ロックマン、戦国BASARA、モンスターハンター、バイオハザードの情報を出していますが、それぞれのIPに合わせた展開になると思います。
――同じ「カプコン」の名前が付いているとはいえ、社内IPブランドを使った展開は大変そうですね。
狩野:大変ですけど、私自身も作っている開発メンバーも、カプコンのIPが大好きですし、そこに対する敬意を持ちながらゲームを作るというのが大事だと思います。
もちろん、スヌーピーのタイトルを担当しているメンバーも、全員スヌーピーファンですよ。
スマホゲームを開発・運営するにあたっては、そのIP、ブランドのファンであることで、ユーザーが求めているものをちゃんと届けられるのかなと感じています。
こだわりすぎるのはまずいですけどね(笑)。
2016年度内に4タイトルリリース!
――今後の予定についてですが、2016年度内に情報にあった4タイトルはリリースされますか?
狩野:4タイトルとも、2016年度内にリリースします。できなかったらごめんなさい(笑)。
私が実際に担当しているのは、4本のうちのいくつかですが、それについては2016年内リリースで動いています。
早い段階でみなさんにお見せしたいと思っています。
――ありがとうございます。では、最後にGame Deets読者に向けてメッセージをいただけますでしょうか。
狩野:ビーラインからカプコン・モバイルになって、もう半年くらいが経ちますが、今順調に新タイトルを仕込みつつあります。
今年度中にはいろいろなタイトルを出していきたいと思っていますので、カプコンの新しいモバイル展開をぜひ楽しみにしていてください。
我々のゲームの作り方は、試作段階をすごく重要視してやっていますが、今プロトタイプとして上がってきている新作は、すぐに見せたいくらいの面白さがあり、自信があります。
カプコンのファンにもすごく楽しんでもらえるタイトルになっていますので、もう少しだけお待ちください!
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