【変ゲー1人探検隊】第3回: ラマとかクマがヤバイ変ゲー

動物が素直でかわいいものだなんていうのは幻想だ。やつらにも快と不快の区別があり、快を追求し不快を避ける様子には姑息さすら感じる。ペットにもなると人の暮らしになじんでしまっているせいか、野生が削がれ妙な人間臭さまで見えてくる。昔、犬を飼っていた。18年もの長い間共に暮らした。雑種でまぬけな奴だったが、「バカにされている」という空気にやたら敏感だった。まぬけなものだから、散歩中に水たまりにはまったり、片足だけ側溝に落ちて内股をすりむいたりする。すかさず「おっ、どうした? バカだなー」と失敗を煽ると、奴は歯をむき出してこちらを威嚇してくるのだ。スルーしろ、もしくはバカにした態度を撤回しろ。奴はそういっているように見えた。というわけで強引に、今回は変な動物の変ゲーを2点紹介しよう。主人公はラマとクマだ。

Inappropriate Llama Disaster!

虹色、ラマ、エロ目。アイコンだけでインターネットミームやいわゆる「クソコラ」くさいオーラを放つ本作は、「場違いラマの災い」というタイトルを持つ。リリースは2012年、以来知る限り更新が行われた様子はない。要求環境はiOS 3.1以降という化石だが、こちらでiOS 9.2.1で問題なく動作することを確認しておいた。最新環境の方々も安心してプレイしていただきたい。

かわいらしいといえなくもない、カラフルな色使いのタイトル画面。ラマのスケベおやじめいた目さえ見えなければもっと多くのゲーマーをだませただろう

プレイの仕方は非常に簡単。葬式、浮気現場など、深刻なシチュエーションが次々と登場する。それぞれのドラマを眺めつつ、最も空気の読めない瞬間にラマを「不適切に」登場させるのだ。星1つ~5つのスコアで「不適切度」が評価されるが、その基準はいっさい不明。ハイスコアをゲットしても「何でここで?」と首を傾げてしまうことも多い。が、変ゲーの常として読者諸君には覚えておいていただきたい。我に返ったら負けだ。変を拒絶することなかれ、ただただ与えられた変を受け入れるべし、だ。

男と女の修羅場を横切る虹色ラマ。ごていねいにバスルームからのご登場。セクシー下着でシチュエーションに合わせているので、実は不適切ではない説まである

最高評価が取れてもあまりうれしくない。いかなる理由でそうなったのか、まったくわからないからだ。しかしここで悩んでいるようでは変ゲーに触れることはできない

無料で広告いっさいなしで遊べるが、全4ステージとボリューム不足。120円の追加課金によって、新たな2ステージと豪華なダイアモンドラマでプレイするモードが獲得できる。それをユーザーがよろこぶかどうかについては考慮されていない感じがまたいい。変ゲーはこうでなければ。

エコぐま2010(Enviro-Bear 2010)

本連載初の有料タイトルとなる本作。iOS版とAndroid版ではタイトルが異なり、価格にも差があることにご注意いただきたい。

この作品を早々に取り上げることについてはかなり悩んだ。というのも、これを紹介したら後の連載が苦しくなってしまうのではないかというぐらいの変ゲーなのだ。しかも、評価は決して低くないと来ている。変、でもきちんと面白い、こんな作品はそうそうない。本連載のコンセプトに反して、本作品は割とまじめに紹介させていただこう。

ただいまご覧いただいておりますのは、2009年に発売されたスマホ用ゲームのタイトル画像です

とはいってもやはり変ゲー。タイトルからして微妙に不可解だ。日本語タイトルを「環境クマ2010」ではなく「エコぐま2010」にしたあたりは評価したいが、このゲーム内でクマは環境問題を解決したりはしない。ついでに「2010」とはあるものの、リリースされたのは2009年の夏だ。

さて、やっとゲーム本編の紹介に入れる。サブタイトルは Operation:Hibernation=「冬眠作戦」だ。冬が来る。しかも、5分以内に。幸せな冬ごもりのためにクマは自家用車で出動、おなかがいっぱいになるまで食べ物を集め続けるのだ。操作はすべてタッチで行う。前時代的と表現するのもためらわれる、かなり粗削り……いや、正直にいおう。ものすごく適当なグラフィックに腰を抜かしそうになる。しかし、このゲームの変な空気になじめれば、あまり気にならなくなってしまうだろう。

クマはアクセルもブレーキもギアもハンドルも全部手で操作する。ダッシュボードの上に乗っているのが冬秒読みタイマーだ。乱暴な運転をすると落ちるので注意

ジャンルとしてはドライビングシミュレータなのだろうが、操作感はかなり独特。プレイヤーの運転経験や、ドライビングゲームで培ったテクニックはあまり生きてこない。筆者もアクセルを手で踏んだのは初めてだ。

食べられるものは魚とベリーだけ。いずれもひき逃げの要領で手に入れる。跳ね飛ばせば勝手に車内に飛び込んでくるのでつかんで食うべし

時間切れまでに腹をいっぱいにし、洞窟に戻れば「1周」クリア。このゲームはエンドレス。わずかな休息の後、2年目が始まるのだ。しかも、どんどん冬までの期間は短くなる。なんだこの変なゲーム、と笑っていられるのは最初の10分程度。いずれプレイヤーは、「あと1分しかない!」と目を血走らせ、車内で魚を食い散らかしながら爆走するようになるのだ。

冬になると画面が雪に覆われ、ゲームオーバーとなる。こうなる前にたっぷり食べて、洞窟に戻るのだ

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