【変ゲー1人探検隊】第12回: 君とサッカーの意味を考え直す変ゲー

今回はサッカー変ゲーを紹介するが、今からするのは野球の話だ。ちなみに、筆者はどちらのルールも理解していない。野球大会では、ヒットを出した直後まっすぐ三塁に走り、チームメイトにかなり怒られた。

話は過去にさかのぼる。我が父は仕事人間だった。起きればもう出社しており、床に就くころにようやく帰ってくる。

幼い筆者にとって父はよくわからない同居人、ただ仕事をし続けるロボットのようであり、親として尊敬するとか、慕わしいとかいう気持ちが起こることはなかった。

そんな父がくつろいだ表情を見せるのが、週末の夜だった。晩酌をしながら野球中継を見る。そのときだけはこちらを向いてくれたし、言葉を交わすこともあった。

父は酒と野球が好きなのだな、それ以外にはあまり興味がないのだな。そう思っていた。

あれから30年以上が経った。父は高齢になったが、今では仕事に煩わされることなくのんびりと野球中継を楽しんでいる。我々父娘の関係も普通の親子らしくなった。ある日曜に、筆者は父に問うてみた。

「お父さんはなんで野球がそんなに好きなの?」

「いや好きじゃないぞ。ルールもわからん」

ただ野球選手が動くのを見ているのが好きなだけだったのだという。理解し合えたつもりの父が、また遠くへ行ってしまった気がした。

FootLOL: Crazy Football!

外国人の知人が、「お前も買おう! 買え! サッカーのルールわからなくても遊べるから!」とすすめてくるので買った。子供からルールに無頓着な大人まで、タップ1つで楽しめる変ゲー。

おしゃれで静かなイメージのタイトル画面。試合中このような雰囲気を楽しめるシーンはまったくくない。シングルプレイの「Championship」と、2つのモードのマルチプレイが楽しめる

各国を適当にイメージしたユニフォームを身に着けた紙人形風の選手が、ほぼ自動でゲームを進める。キック方向を間違えることはまずないし、割と賢く防御もしてくれるのでプレイヤーが手を加える要素はない。

では、プレイヤーの役目とは何か。フットボール(サッカー)をフットLOL(lauging out loud:大爆笑を意味する略語)に変えるため、アイテムでちょっかいを出しまくることだ。

プレイを開始した直後、「これが試合中に使える君のスキルだよ!」と、そっと地雷が渡された。こちらのシュートを的確にブロックしようとしてくる相手キーパーの足元に地雷を置いた。地雷でキーパーは吹き飛び、華麗なゴールが決まった。

相手チームも「スキル」を使う。これはボールが着地した地点にペンキをまき散らすもの。どのスキルにも対抗手段となるスキルがあるのでうまく使おう。この場合はスピードアップ系が効果的

しばらくすると、試合のルールが変化した。「3-2で勝て!」と、細かい注文をつけてくる。

そこで今度は、地雷の使い方も変える。4点目を叩きこもうとする味方の進路に置くのだ。なんとしても味方にゴールはさせん。今自分は新しいサッカーを生み出している。

すごい。意味が分からない。筆者は試合終了のホイッスルを聞くまで、味方を吹き飛ばし続けた。

試合はどんどんカオスに。牛でライバルを蹴散らし、UFOで誘拐して戦力を減らす。その隙に力の限りシュートを叩き込んでしまえ。「ドローで試合終了させろ」などの特殊ルールのときにも力を発揮する

ゲームが進むにしたがって、使える「スキル」は砲台、バリア、牛、UFO、追加のボールなど、どんどんと増え、何をやっているのかわからない状態になってきた。

変だ。まぎれもなく変だ。も、うサッカーでなくてもいいのではないか。

正しい現実の地球のサッカーをよく知る諸君は、広い心で遊んでいただきたい。日本語には対応していないがそんなことはどうでもいい。「スキル」の力をグラウンド上で見せつけるのだ。

こんなフリーキックはイヤだ

国産タイトル。同じ単語でまとめたつもりはないのだが、英語版のタイトルは『Crazy Freekick』だった。

どうせサッカーのルールなんて「ゴールに入れたら1点」以外わかっていないのだから、わかりやすいその部分だけを楽しむ変ゲーを探そうと考えて見つけた。予想以上に変だった。

すでにおかしいゴール前の風景。あやしい防御方法でプレイヤーに挑んでくる選手たちの一例である。まず、設定を見ようと右下の歯車アイコンをタップしたのだが……

筆者はアプリやゲームを起動すると、まずオプションを見る。このゲームを起動後も、迷わず歯車のアイコンをタップした。すると突然、当たり前のようにゲームが始まったのである。

オプションを示すピクトグラム、歯車を選手が押す。その合間をかいくぐってシュートしろということらしい。

「なるほど、オプションもゲーム感覚ということか。クリアすれば設定ができるのだな」と、感心したがその気持ちは1分もたなかった。理由は画像を見てほしい。設定とはなんだったのか。

いやいや違うよ! 「Stage Setting Clear」ってどういうことよ! この後どこをタップしても設定画面らしきものにアクセスできることはなかった。筆者はだまされたのか

さまざまな非現実的なシチュエーションで、ゴールを決めていくミニアクションゲーム。1ミスごとにライフを失い、ゼロになればゲームオーバーだ。

最初のうちはヒントがある。靴ひもがほどけていたり、1人だけそわそわしている選手がいれば、その空間を抜いてゴールすることができる。

が、次第に難易度は理不尽に。誰もいないところから忍者が出たりするのは、もはや「当たり前」になってしまうのだ。

ゴール前に誰もいないステージに遭遇。「おっ、ボーナスステージか?」とよろこんで適当に蹴ったら、忍者が隠れていた。どんなステルス性能なんだ、すごいぞ忍者、覚えてろ

いわゆる「初見殺し」が多いものの、奇天烈なフリーキックのおもしろさとゲームのバランスがうまくとれている、楽しい変ゲー。

(c)2016 HeroCraft
(c)Poppy