話は過去にさかのぼる。我が父は仕事人間だった。起きればもう出社しており、床に就くころにようやく帰ってくる。
幼い筆者にとって父はよくわからない同居人、ただ仕事をし続けるロボットのようであり、親として尊敬するとか、慕わしいとかいう気持ちが起こることはなかった。
そんな父がくつろいだ表情を見せるのが、週末の夜だった。晩酌をしながら野球中継を見る。そのときだけはこちらを向いてくれたし、言葉を交わすこともあった。
父は酒と野球が好きなのだな、それ以外にはあまり興味がないのだな。そう思っていた。
あれから30年以上が経った。父は高齢になったが、今では仕事に煩わされることなくのんびりと野球中継を楽しんでいる。我々父娘の関係も普通の親子らしくなった。ある日曜に、筆者は父に問うてみた。
「お父さんはなんで野球がそんなに好きなの?」
「いや好きじゃないぞ。ルールもわからん」
ただ野球選手が動くのを見ているのが好きなだけだったのだという。理解し合えたつもりの父が、また遠くへ行ってしまった気がした。
FootLOL: Crazy Football!
外国人の知人が、「お前も買おう! 買え! サッカーのルールわからなくても遊べるから!」とすすめてくるので買った。子供からルールに無頓着な大人まで、タップ1つで楽しめる変ゲー。
各国を適当にイメージしたユニフォームを身に着けた紙人形風の選手が、ほぼ自動でゲームを進める。キック方向を間違えることはまずないし、割と賢く防御もしてくれるのでプレイヤーが手を加える要素はない。
では、プレイヤーの役目とは何か。フットボール(サッカー)をフットLOL(lauging out loud:大爆笑を意味する略語)に変えるため、アイテムでちょっかいを出しまくることだ。
プレイを開始した直後、「これが試合中に使える君のスキルだよ!」と、そっと地雷が渡された。こちらのシュートを的確にブロックしようとしてくる相手キーパーの足元に地雷を置いた。地雷でキーパーは吹き飛び、華麗なゴールが決まった。
しばらくすると、試合のルールが変化した。「3-2で勝て!」と、細かい注文をつけてくる。
そこで今度は、地雷の使い方も変える。4点目を叩きこもうとする味方の進路に置くのだ。なんとしても味方にゴールはさせん。今自分は新しいサッカーを生み出している。
すごい。意味が分からない。筆者は試合終了のホイッスルを聞くまで、味方を吹き飛ばし続けた。
ゲームが進むにしたがって、使える「スキル」は砲台、バリア、牛、UFO、追加のボールなど、どんどんと増え、何をやっているのかわからない状態になってきた。
変だ。まぎれもなく変だ。も、うサッカーでなくてもいいのではないか。
正しい現実の地球のサッカーをよく知る諸君は、広い心で遊んでいただきたい。日本語には対応していないがそんなことはどうでもいい。「スキル」の力をグラウンド上で見せつけるのだ。
こんなフリーキックはイヤだ
国産タイトル。同じ単語でまとめたつもりはないのだが、英語版のタイトルは『Crazy Freekick』だった。
どうせサッカーのルールなんて「ゴールに入れたら1点」以外わかっていないのだから、わかりやすいその部分だけを楽しむ変ゲーを探そうと考えて見つけた。予想以上に変だった。
筆者はアプリやゲームを起動すると、まずオプションを見る。このゲームを起動後も、迷わず歯車のアイコンをタップした。すると突然、当たり前のようにゲームが始まったのである。
オプションを示すピクトグラム、歯車を選手が押す。その合間をかいくぐってシュートしろということらしい。
「なるほど、オプションもゲーム感覚ということか。クリアすれば設定ができるのだな」と、感心したがその気持ちは1分もたなかった。理由は画像を見てほしい。設定とはなんだったのか。
さまざまな非現実的なシチュエーションで、ゴールを決めていくミニアクションゲーム。1ミスごとにライフを失い、ゼロになればゲームオーバーだ。
最初のうちはヒントがある。靴ひもがほどけていたり、1人だけそわそわしている選手がいれば、その空間を抜いてゴールすることができる。
が、次第に難易度は理不尽に。誰もいないところから忍者が出たりするのは、もはや「当たり前」になってしまうのだ。
いわゆる「初見殺し」が多いものの、奇天烈なフリーキックのおもしろさとゲームのバランスがうまくとれている、楽しい変ゲー。
(c)2016 HeroCraft
(c)Poppy