さらに、もう1つ許しがたいのがフォントの問題である。
ローコストなローカライズが行われた作品は、どんな壮大なストーリーも詩的なテキストも、つまらないごつごつしたゴシック体で表現されてしまう。
フォントもまた世界観の一部をなすものだという点が無視されてしまうのだ。そしてたいていの場合、サイズもおかしい。
行間が狭すぎて重なり合ったり、ダイアログウィンドウからはみ出している日本語を見るたびに、げんなりしてしまう。これが興ざめでなくてなんとする。
スマホゲームの世界でも、このがっかり問題は健在だ。話していて不愉快になってきた。諸君らにもこの蒸し暑い中、おかしいローカライズのゲームを見てもやっとした気持ちになってもらいたい。
Good Knight Story
騎士とモンスター、そしてヘルプを担当する妖精レプラコーン(騎士の脳内にいるという設定らしい)コミカルな掛け合いが愉快なマッチパズルRPG。
ドラゴンにさらわれた姫を追って、パズルバトルで並みいる敵をなぎ倒し進んでいくのだ。
属性による相克関係、盾アイコンをマッチさせての防御、攻防に力を発揮する使い切りの魔法と、バトルに関わるフィーチャーはなかなか行き届いている。
課金が必須の要素もなく、スタミナ制ではないので気が済むまで遊び倒せる。気持ちよく遊べるゲームなのだが、1つとんでもない特徴がある。日本語訳がなかなかに素晴らしいのだ。もちろん、おかしな意味でだ。
意味不明というわけではない。フォントが汚いとかそういうわけでもない。きれいに訳されている箇所も多い。しかし、楽しく遊んでいると突然、摩訶不思議な日本語が現れるのだ。
このヘンテコ日本語パンチがときどき差し込まれるおかげで飽きない、気が抜けない。初回ロード画面の「地図をお描き中…」で、早くも本作の想定外の魅力に取りつかれた。
どうやら、折り返しが発生すると言葉の順番が逆転してしまうようだ。
「ファイアーボール」はフォントが大きすぎて入りきらない上に折り返したせいで「イアー(改行)ファ」となっているし、新たな魔法やアイテムを手に入れれば「された(改行)アイテムが解除」と、得意げな特大メッセージが現れる。
騎士が強くなるたびに「された!」とつぶやきながら遊ぶようになってしまった。
これ以上お楽しみをばらしてしまうのはやめよう。ぜひ、騎士と共に冒険して「されたアイテムが解除」に次ぐ、いかしたセンスの日本語を体験してほしい。
Afterland
ダークで繊細、美しくも退廃的な独自のアートと世界観を味わえるカードゲーム。
育てたカードでフォーメーションを組んで殴り合うだけなので、熟練者には物足りないだろうが、雰囲気に惹かれて始めたライトゲーマーにはそれなりの期間楽しめる作品だろう。
少し前に多くのユーザーの要望叶い、日本語へのローカライズが行われたと聞いて再開したのだが、久しぶりに訪れた異世界はあまりにも衝撃的だった。
起動するなり「今日のボ」という巨大なメッセージと共に、ログインボーナスが与えられた。これぞ、ダメローカライズ秘技の1つ、「サイズ間違いフォントの術」である。
このゲームを日本語で遊ぶ限り、プレイヤーは毎日「今日のボ」、そして「明日のボ」と付き合っていかなければならない。
クリーチャー(Afterland現住の、大きく強力な生き物で、解放することでデッキに組み込める)のチュートリアルを始めればウインドウいっぱいに「生き物」という文字が表示され、ヘルプを押せば「助けて」と出る。
まるでこの世界が全身で、プレイヤーに「Afterlandを救って!」と訴えかけているかのようだ。
雰囲気たっぷりのアートな世界に現れる、無機質なゴシックフォントが怖い。壊れた世界の演出に一役買っている気すらする。
たまりかねて英語に戻そうと言語設定のオプションに入ると、いちばん下におそろしいものが見えた。「研磨」と書かれている。
言語設定なのに研磨、研磨。オランダ語、中国語、そして研磨。英語に変更して謎は解けた。Polishを「ポリッシュ」と解釈して翻訳してしまったのか。ポーランド語はこの世界は研磨になってしまったのだ。
戦闘中は変な日本語が現れないのでほっとする。単調な戦いに安らぎを見出してしまう。雰囲気はすてきなのに、ローカライズのおかげで紛れもない変ゲーになってしまった感が強い。
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