サイバーコネクトツー松山洋氏がスマホゲームに物申す!

『.hack』シリーズや『NARUTO -ナルト-ナルティメットストーム』の開発などで知られるサイバーコネクトツー。今年2月には、次の10年に向けた新IP戦略「NEXT PLAN」を掲げ、完全オリジナルタイトル3部作を発表。発売プラットフォームが非公開で、中にはスマホゲームもあるのでは? と取材を申し込んだのだが……。

スマホゲームは今はやりません!ときっぱり

サイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋氏に、新IP戦略「NEXT PLAN」の狙いや各タイトルのプラットフォーム、今後の展望について聞いてみよう、というのが今回のインタビューの発端。

同社の東京スタジオにて松山氏にお会いし、Appliv Gamesがスマホゲーム専門情報サイトだと伝えると、松山氏が分析するスマホゲームビジネスの正体、家庭用ゲームへの想いを語ってくれた。

サイバーコネクトツー 代表取締役社長 松山洋氏

松山洋氏(以下、松山):サイバーコネクトツーは、もともと1996年に福岡で誕生したゲーム会社です。当初、10名ほどの社員しかいなかったのが、20年たった今は約200人にまで成長しました。

福岡の本社で約170名、東京本社で約20名、カナダのモントリオールにあるスタジオで16名ほどスタッフが働いており、家庭用ゲームを中心に開発を行っています。

5、6年前にはスマホゲームの開発も手掛けていましたが、今は家庭用向けに完全に特化しています。最後に作ったスマホゲームは、ドリコムとの共同タイトル『フルボッコヒーローズX』ですが、今は運営はすべてドリコムさんにおまかせしている状況です。

なぜ、スマホゲームから手を引いているかというと、現状、弊社はアプリには向いていないと感じているから。我々が得意とするものは、アクションゲームやアクションアドベンチャー。とにかくアクションが得意なわけです。

これは個人的意見ですが、アクションゲームは物理ボタンの手応えがあるからこそ面白い! 物理ボタンをガチャガチャ押し込むからアクションゲームは気持ちいいんです。スマホの画面で無理やりにアクションをさせたところで、その手応えはないように感じてしまうんですよね。

――確かに、スマホゲームでは複雑なアクションを表現することは難しいですよね。

松山:もちろん、スマホにも向き不向きがあるのは理解しています。

ソーシャルゲームのカード合成など何かをタップで選んで合成するとか、指で押して引っ張るなどの操作は、スマホというデバイスにピッタリです。このあたりはスマホなりのアクション要素ではありますが、いずれにしても本当のアクションではないというのが、私の意見です。

また、ゲームソフトというのは本来、まだ遊んでもいないものを面白そうだと思って購入するものですよね?

今でこそ体験版がダウンロードできて、発売前に遊ぶことができますが、その全容はもちろん把握できない。だけど、面白そうという期待を抱いてソフトを買う。そして、買った以上は最後までやり切るというものでした。

お客様の期待に、メーカーは面白さで応えるという、目に見えない信頼関係があるからこそ、ゲームは成り立っているものだと思っています。スマホゲームの「基本プレイ無料」というビジネスモデルは、私の考えと根本からして違うんです。

加えて、我々はお客様の期待に応えられるものを作るため、映像演出にもこだわっていて、高精細でダイナミックな映像が弊社のゲームの特徴です。スマホの小さい画面より、大きいテレビ画面で遊んでもらった方がその魅力を存分に楽しめると思います。

こういったところから、スマホゲームはやっぱりうちには向いていない、という結論に至りました。

ただし、いっさいやらないと決めているわけではないですよ?

現場のスタッフから面白いアイデアが出てきたり、パートナー会社から案件をいただければその都度お話をさせていただきますし、それが実現してスマホゲームを再び開発することもあるかもしれません。

典型的な、いわゆるカードソーシャルゲームは、やらないと決めているだけです。

ゲームアプリはとにかく金がかかる……

松山:アプリ開発はそれなりに時間がかかりますが、昔は半年かけて作ったものをパッとリリースして、あとは運営でなんとかしていくという感じでした。

しかし、ちょっと前まで開発費が1億円未満だったのが、今や4億、5億と高騰しています。そして、いざサービスが始まったらKPI(※)とのにらめっこが始まり、開発スタッフは24時間体制で気の休まる暇がまったくありません。

※KPI:Key Performance Indicator(目標の達成度を評価するための評価指標)

それによってお客様が一喜一憂してくださるならそれでいいかもしれないですけど、1年、2年、3年と運営していって、成功しているものはありますが、いずれはサービスが終了しますよね? 中には半年くらいで終わってしまうものもある。

サービス終了の瞬間って、作ってる我々もお客様も、必ず疲れ果ててサービスを閉じるんです。

疲れ果てた結果、運営側は「もういいや」となってしまう。これが嫌なんですよ!

私は映画、漫画、アニメが好きなんですが、例えば映画なら、プロモーションや予告を見て「面白そうだな」と感じて映画館に観にいく。そこで2時間も拘束されて、「面白かった!」って思うこともあれば、「だまされた! クソやん!!」と思うこともあるわけですよ。

これは家庭用ゲームにも共通していて、期待して購入しても、当たりはずれがある。面白いと思ってもらえるかどうか、我々クリエイターにとってはお客様との真剣勝負なんです。

今の時代、社会人はもちろん、学生だって忙しいので、空き時間にポチポチやるのもいいとは思いますよ。

ただ、たまの週末に映画を観るのと同じ感じに、晩御飯やお風呂も済ませて、ビールやコーラなんかを用意して、「今日は眠くなるまで遊ぶぞ!」とゲームを遊ぶのが好きなんです。これが、僕の好きな娯楽なんです。

いつまでもずるずると課金が必要となるやり方が気に入らないわけですよ。

今の家庭用ゲームって、大体6,000~7,000円くらいの価格ですけど、これに見合った体験ができればそれでいいと思うんです。

「100時間遊べます」というボリュームをウリにしても、今の人たちは忙しいから、そんなに時間は取れません。10時間くらいでサクッと終わっても「あー面白かった!」と、生活の中で濃密な体験ができる作品こそ、必要なものではないかと私は思っているんです。

なので、サイバーコネクトツーができてから20年ですけど、5年後はどうしているかわかりませんが、今はやらない。それが弊社の考え方です。

もし、スタッフがアイデアを出してきたとしても、いわゆるポチポチゲーはやらせません。まだ誰も見たことがないような、「スマホを使ってそんなことやんの!?」みたいな尖ったやつ、売れるかどうか正直判断つかないようなやつをやりたいと思っています。

今のゲーム業界は、どこもスマホゲームを運営していて、弊社でも「スマホの方が利益率高いし、じゃあうちも……」みたいな意見もやっぱり出てくるわけです。話しを聞く限り、どこの会社でもそういった声は出てくるようです。

でも、今のスマホゲーム市場ってレッドオーシャン(※1)。結局は札束の殴り合いじゃないですか? 年末年始の番組スポンサーをやったり、その番組内で「なんとかゲーム プレゼンツ」って言わないとDAU(※2)が稼げないわけじゃないですか。あの手法は、どの企業にでもできる手段ではありません。

「すき間でもいいから、ちょっとお金がほしい」と始めた人たちは、失敗している事例もよく耳にします。今や中途半端では無理です。年間20億円ぐらいは使う気でいないと。20億円使って、400億円儲けましょうっていうのが今のアプリビジネスの実態ではないでしょうか。

※1レッドオーシャン:競争の激しい市場
※2 DAU:Daily Active Users(1日あたりのアクティブユーザー数)

様変わりした家庭用ゲーム開発現場

松山:一方で、今の家庭用ゲームは、この10年で変わってきていて、ゲームクリエイターの仕事の仕方も変化しています。

ほんの10年前、PS2の時代であれば、開発チームは10~30人でのリソースで、1年くらいのペースでゲームソフトを発売していました。もちろん、もっと人員や時間を割いている大作もありましたが、10年前のゲームビジネスっていうのは、少人数、短期間開発が主流だったんですよ。

でも今は、最低でも100人は必要。100人以下だったら本気で売る気がないと思われます。開発期間は3年はかかります。

弊社で開発したPS4向けタイトルも、早くて2年半、普通にやると3年は絶対に費やします。それほどに、今のゲーム機(PS4)はスペックが向上して、スケールも膨大なんです。

お客様も、クリアするだけなら10時間くらいのボリュームで納得しますが、そのあとに無限に遊べるようなゲームデザインを求めています。だからオープンワールドが主流になって、オンライン対戦だったり、ランキングだったりを実装する。

開発規模があまりにも大きくて、大人数を長期間維持することになるので、最低でも10億円か20億円、大抵はそれ以上の開発費が発生します。北米やヨーロッパで開発されているゲームのほとんどは100億規模の予算です。今はどうやってお金を集めるかがゲームビジネスになっているんですよね。

なので、毎年のように新作が発売される人気シリーズなんかは、複数の開発会社が交互に新作を作ることで、開発会社は3年に1本の開発だけど、それを実現させているんです。

木を植えるだけの20代開発者たち

松山:ゲーム業界って20代、30代、40代の開発者で構成されていて、やっぱり若い開発者が多いんですよ。

昔は専門学校を卒業したら20歳、大卒でも22歳でゲーム会社に就職。それから最初の10年はアーティストにしてもプログラマーにしても、「いい作品にしたい! 何でもできるようになりたい!」と、がむしゃらに経験を積んでいました。

そこからだんだん活躍して、チーム内のエースになって、アートディレクターやメインプログラマーに抜擢される。そして、いずれはディレクターになるというのがゲーム業界の正しいキャリアパスだったんです。

企画立案から、デバッグ、お客様の意見の吸い上げまでを経験して、それでもようやく半人前。1つの開発現場しか知らないわけだから。

その次に、また違うタイトルを経験して、だんだんゲーム開発の全容が見えてきて、そういう人がチーフをやったり、部下の育成だったりを経て、ディレクターになってもらう。これが正しいプロセスだと思っています。

20代のうちに10タイトルくらいを経験して、30代前半になったら、やっと「そろそろお前ディレクターやってみる?」と声がかかる。そのころには、「待ってました!」と自分のやりたかった夢のようなタイトルを企画して判断ができる経験値が備わっているはずなので。

しかし、それももう10年前までの話。

今は、新入社員でいきなりPS4向けタイトルの3年間続くプロジェクトにアサインされるわけです。しかも、昔は10人、20人で作ってたものを100人でやるわけですから、ずいぶんと役割が細分化されているんです。

3年間の開発の中で、広大なファンタジー世界の大陸を作っていくけども、大陸の端っこから3年間ずっと木を植えているやつがいるわけですよ。それも1人じゃないんですよ。延々とずっとそれをやっているやつが何人もいる。

これに20代を費やして30代前半になったときに、今の開発者は3タイトルくらいしか経験していないわけですよ。しかもそれぞれが膨大すぎて木を植えているだけだから、全容が掴めないまま。

みなさんも経験したと思うんですけど、20歳くらいで会社に入ったときに見た先輩社員って、頼りになる大先輩でしたよね? 今の30代は、新人が何か質問しても「オレ、木しか植えてないからわからない。ディレクターに聞いて」となってしまう(笑)。30代が歯車になっているんですね。

ゲームメディアのインタビュー記事を読めばわかると思うんですけど、紙面を飾っている日本を代表するクリエイターの多くは40代なわけですよ。20代どころか、30代もほぼ載っていません。

――言われてみればそうですね。

松山:例えば、『鉄拳』の原田勝弘さんは45歳、『大乱闘スマッシュブラザーズ』の桜井政博さんは47歳で私と同い年です。『ベヨネッタ』の神谷英樹さんも同い年。

ゲーム業界、私と同世代が多いんですよ。『バイオハザード』の竹内潤さんもそうだし、レベルファイブの日野晃博さんは2つ上で、もう40代ばっかり。

そこから上となると、小島秀夫さんや堀井雄二さん、有名な方々はみなさん50代、60代。おっさんだらけなわけですよ。

今のゲーム業界だと、30代が新人みたいな扱いだから、そろそろディレクターやらせてみようかとなる年齢が、アラフォーになってしまう。

10年かけて1人前になっていったところを、今は10年かけてそろそろチャンスあげてみる? くらいになっちゃってるんですよ。

40代って、一般の企業でいうと部長ですよ。40代で初ディレクターってそんなことあります?

私は20代で会社を作って今現在に至りますが、気が付いたら、ゲーム業界って全然後続の育成ができていないんですよね。スマホゲーム業界の方が若い人間にチャンスが与えられていますね。

――それはなぜでしょうか?

松山:スマホゲームの世界は、ここ5年で急速に発展しています。しかも、アプリを提供しているのは、もともとIT企業が多いですよね。

彼らが「ガチャ」という発明をしたことがすべての始まりです。各社が工夫をしていろいろな見せ方をすることによって、アプリをずっと作ってきたわけじゃないですか。

最初はブラウザゲームですが『怪盗ロワイヤル』から始まって、『パズル&ドラゴンズ』や『モンスターストライク』がヒット。そして、たくさんのIPをお持ちのバンダイナムコが目覚める! やっぱりIPって強いですよね。身近なところで悟空やルフィ、たくさんのアイドルたちに触れられるコンテンツを投下して爆発的に売れた。

ただ、これは暴言になってしまいますが、アプリの運営って人数を投入すれば、ある程度の運営できます。だから、簡単に若手を大抜擢できるんです。

もちろん、成功するためにはノウハウが必要ですけど、ほとんどのアプリ運営が、明確な信念はもっているけど、ほぼ間違っているんですよ。

ゲームデザイン側、ディレクター側、プロデューサー側が「お客様がよろこぶ、こういうイベントやろう!」って仕込むんですけど、実際にはお客さんの反応を見て数値の上げ下げをやっているだけ。

明確なゲームデザインやプロジェクト運営を思い描いてはいるものの、結局はお客様のいいなりになっているんじゃないでしょうか。

――それはスマホゲーム運営の特性上、仕方がないことな気がしますが……。

松山:面白いゲームを作ることよりも、課金ということを優先する以上、どうしてもそうなってしまいますよね。

そこが私の気に入らないところなんです。だから弊社は家庭用ゲームに振り切っています。

若い人材の大抜擢が起きやすいという側面は、業界的にはいいことだとは思います。ただ、そうすることで若手が勘違いしちゃうんですよね。自分の一挙手一投足で、月間で億単位の利益が出るとなると、何もできていないのに自分はすごいと勘違いをして、結果的に独立や転職をするんです。

スマホゲームの世界って、タイトルと紐づくクリエイターって少ないと思うんですよね。「メタルギアの小島秀夫さん」「龍が如くの名越稔洋さん」みたいな人がいるかっていうとそうじゃないでしょ?

なので、目指す人たちがどう目指せばいいかわからなくなってしまう。

「あの人のあの作品のようなものを作りたい」とか「あの人のようになりたい」っていうのがないんですよね。

映画監督とかも同様ですが、我々のビジネスは顔が見えるビジネスなんですよ。

誰が作ったか分からないものは売れないですよ。売れる映画って、「あの監督」「あのスタジオ」を思い浮かべて観に行きますよね? ジブリ映画しかり、北野監督作品しかり。

我々エンタメ業界はそうやって作品に期待をして、期待に応えられることもあれば、裏切ってしまうこともある。これが、作り手と消費者、お客様との正しい対話だと私は思っているんです。

――とはいえ、スマホゲーム作ってる人たちも、こうなりたいといった志のようなものは当然持っているのではないでしょうか?

松山:もちろん、それはあるかと思います。

ただ、人の顔が見れたときってだいたい炎上しているんですよね(笑)。

「自分が大金をつぎ込んで当たりが出ないのはそいつのせい」となってしまう。だからみんな顔を隠すようになってますよね。

――そういう側面はあるかもしれませんね。

松山:私はもともとクリエイターでもあるので、作っている人間が責任をとるべきだと思っています。弊社は全スタッフに名刺を配りますし、エンドロールにも本名で出させます。

実は、ゲーム業界ってかつては引き抜き防止のためにスタッフに名刺を渡さない風習があったんです。いまだに名刺にメールアドレス書いていない会社もありますよ。「これ、どうやって連絡とればいいんですか?」と聞くと、「用があるときはこっちから連絡します」って言われたり(笑)。

ゲーム業界にはそこまでやるような歴史があったんですけれど、今のスマホゲーム業界は顔を隠すようになっている。そうなると、開発者に誇りが生まれないんですよね。自分が責任を持って手掛けたという誇りが。

当然、みなさんがんばっていると思っていますが、結局は儲けているだけになっている。

だから弊社のスタッフには、成長しないような人間にはなってほしくない。受託の大型タイトルだけをやっていると成長が遅くなってしまう。30代が若手になてしまう。

そこで、これから我々が仕掛けるのが、「C5(シーファイブ、CyberConnect Creative Challenge Competitionの略称)」から生まれた復讐3部作です。

珠玉の4時間30分が味わえる復讐3部作

松山:「C5」は小規模短期間開発のプロジェクトです。

10人、20人を1チームとして、1年で企画立案から完成までもっていく。ただし、ボリュームでは勝負しない。先ほど話したとおり、今の学生や大人は時間がないので。

ボリュームがない代わりに、尖り方とクオリティで勝負していく。そういうタイトルを若いスタッフといっしょに企画して、今回3タイトルを発表させていただきました。

これらは、100時間遊べるようなゲームではないし、たくさんの要素が詰め込まれているわけではありません。

1つの味しかしないキャンディーかもしれないですけれど、二度と忘れられない、鮮烈な印象をプレイヤーに与えてくれるゲームです。

珠玉の4時間30分というプレイ時間を与えてくれます。

――4時間30分というのは?

松山:実際には多少変わるかもしれないですが、私の目安です。

ゲームって簡単にクリアできないことってあると思うんです。できないから試行錯誤するというのもゲームの楽しみの1つだと考えています。

映画なら見るだけなので、90分から120分くらいがちょうどいいかもしれないですが、ゲームは自分で積み重ねながらの手応えみたいなものがほしい。そのあたりで理想的だと感じたのが、この4時間30分という時間です。

土曜日に買って、眠くなりながら遊んで、終わらなければ日曜日に続きをやって、みたいな遊び方です。土日でクリアして「あー面白かった!」という作品を世界中に届けたいなと思っています。

ボリュームで勝負しない代わりに、価格は控えめにして発売するつもりです。

今、世界中でインディーゲームがすごく盛り上がっていまして、たったの3人で作った尖ったゲームが面白かったりするんですよ。

弊社はインディーとまでは言えないかもしれないですが、若いスタッフを目覚めさせるには、企画から完成までのすべてを体験させるしかないわけです。いずれゲームクリエイターは一人前になるとは思うんですけど、どうせなら早く経験を積んでほしい。

時間をかければ、いずれスキルは身に付きますが、早いに越したことはない。

『HUNTER×HUNTER』でゴンとキルアの念能力を目覚めさせたウイングさんみたいな感じですね(笑)。

「時間をかければいずれ身に付くが、今すぐ覚える方法もある。ただ、ちょっとだけ身体が痛いよ、どうする?」っていう。C5は、無理やり念能力に目覚めさせるための施策です(笑)。

――少人数・短期間という昔の開発スタイルに戻すことに対して、現場スタッフの反応はいかがでしたか?

松山:ベテランも若手も、待ってました! って感じでした。

新人からしたら、入社してすぐにオープンワールドゲームの現場にアサインされて「ずっと木を植えなきゃいけないんですか?」と不満を感じている。

対してベテランとしては、自分たちが積み上げてきたおかげで若手が大型タイトルの仕事に関われるわけですから、複雑ですよね。

ただ、20代で入社して「これから3年間、ずっと木を植えろ」と言われたら私も嫌だと思いますよ。今、世界中が求めているタイトルがそういう大きなものだから、みんなが協力して作るしかないという答えを出して、取り組んでいるんですけどね。

一方で新人も、もう少し小さいところから始めてチャンスをものにしていきたい、とは思ってはいるんです。

でも、今のゲーム業界、そんな小さいタイトルをやらせてもらえないし……、俺がやりたかったのってこんなんだっけ? みたいなことは誰もが思っているはずです。

弊社は企画立案まで行う会社なので、基本的にパブリッシャーに企画を持ち込んでやらせてくれっていうスタイルでこれまでやってきました。『.hack』も『NARUTO-ナルト-』も『ジョジョの奇妙な冒険』もそうです。これらは、すべて私が決めてきたんですけど、これからの「C5」ではそうじゃない! 「お前らが立案する、そういうプロジェクトやるから、企画を考えてみろ」と発表したわけです。

すると、この1年くらいで100タイトルくらいの企画が集まりました。その中から、10本に絞り、小人数・短期間で作れるかっていうのを精査したんです。現実的なところで、実際にはどれくらいに落とし込むか、表現方法などを具体的に詰めて、さらに3タイトルに絞ったのが、今回発表した復讐3部作です。

発表された復讐3部作『戦場のフーガ』『刀凶百鬼門(トーキョーヒャッキモン)』『CECILE(セシル)』

――では、社内のC5プロジェクトの方はかなり燃えているんじゃないですか?

松山:燃えてますね。お昼ご飯もランチミーティングになっているくらいです。テレビ会議で福岡本社の若手とご飯を食べながら、話し合っている。

PS4、Xbox One、Nintendo Switch、PCの4つのプラットフォームで、日本以外にもアメリカ、ヨーロッパ、アジア、基本的に全世界同時発売に向けて動いています。

プレイヤーを応援しないと家庭用ゲームの未来はない

――今年は、日本eスポーツ連合(JeSU)の設立などでe-Sportsが盛んになりつつありますが、ゲームクリエイターの松山さんから見て日本のe-Sports事情はどう映っていますか?

松山:e-Sportsに関してはすごくいい流れだと思っています。なんでも新しいことをやろうとすると賛否が生まれるもの。今は日本が遅れているだけじゃないですか?

アメリカの格闘ゲームの大会「EVO」だって、最初は有志が集まってやっていただけ。それが結果的に公式になって、賞金も高額になって、かっこいい大会になったわけですよね。

日本はどうしても景品表示法など法律的な問題があって、なかなか同じような規模にはなれていないですよね。ただ年明けてから、e-Sports団体を統合してJeSUができて、日本のメーカーが公式にやっていくという意志は見えています。

お客様が真剣に向き合えるような賞金、もしくはそれにとって代わる価値をちゃんと与えてあげれば、みんな本気で戦いに挑むようにはなると思います。

将棋も囲碁もそうですけど、真剣に戦い合っている姿っていうのは、人を魅了するものです。結局、人っていうのは勝負が大好きなんですよ。だからスポーツ観戦だってするわけじゃないですか。

「ゲームがスポーツ? はぁ?」って言っている人はみんなお年寄りばかりですよ(笑)。今の若者は気にしてはいけない。これからは時代は変わっていきますけど、ガタガタ言う人はいつまでもガタガタ言うし、いずれいなくなるので気にしないでもいいですよ。

結局、夢中になって応援してくれる人がいれば、そこに市場が生まれるんですよ。遊ぶプレイヤーを応援しないと、特に我々家庭用ゲームに未来はないと思っています。日本国内は少子化の影響もあって、売り上げは11年連続減少中なので。世界は逆に市場が拡大しているので、弊社はそっちにシフトしています。

――なぜ、日本の市場は縮小して世界は逆に拡大しているのか、このことについてどう分析されてますか?

松山:『NARUTO-ナルト-疾風伝 ナルティメットストーム 4』シリーズは、世界で300万本売り上げましたが、日本では15万本です。95%が国外で売れました。世界にはちゃんと家庭用ゲームが広がっているんですよ。

今までPS4を手にできなかった国の人たちが手にできるようになっているんです。だからどんどんお客様が増えているんですよ。

世界の市場はどんどん広がっていて、世界に向けて売る分にはいいんですけど、その志向を持っていない「なんかゲームって売れなくなったね」という人が、安かろう悪かろうなゲームを作ってしまう。そういうゲームは案の定、売れなくて、それでもペイできるように開発費が削られていくから、未来がなくなってしまう。

――スマホから家庭用まで、ゲーム業界に関する斬り込んだ意見ありがとうございました。そのまま書くと炎上しそうです……。

松山:私は炎上することに関しては、正直なんとも思っていないです。だから、炎上するのかもしれないですけど(笑)。

ただ、炎上するのを恐れてしまう人は、この仕事はやっていけないです。人間って1つ行動する以上は、賛否があるのは当然ですから。

エンタメビジネスで食っている人たちにとって最もおそろしいのは、叩く人すらいないことです。私は「あのインタビューはなんだ!」って定期的に赤の他人からお𠮟りを受けるんですよ、罵詈雑言で。

ただ、その人たちはインタビューを読んでくれているんです。読んだ上で文句を言ってくれているわけです。気にしてくれているってことはありがたい以外の何物でもないですよ。

20年前、誰もサイバーコネクトツーなんて知らなかった。そこから選ばれるデベロッパーになるために、顔が思い浮かべられるように、私自身が宣伝広告塔としていろんなところに出張って、サイバーコネクトツーといえば松山洋、サイバーコネクトツーといえば『.hack』『NARUTO-ナルト-』って連想してもらえるようにとにかくやってきたわけです。

20年前なんて誰も知らないから、当然、うちのゲームが大好きだという人はいなかったんですけど、あるときから叩く人が現れだした。

「ふざけんな」「思ってたのと違う」と言われますけど、この人たちは買ってくれているわけです。だから、次は期待に応えられるように頑張るわけです。

アンチが増えることに心を痛めるときもあるんですけど、その分、ファンも増えているんだと思います。お客様がどんどん拡大しているって思わなきゃやってられないんです(笑)。

――最初からそういったポジティブ思考だったんですか?

松山:もちろん人間なので心を痛めることはあるんですけど、ありがたいなと思ってやっています。やっぱり、いちばん怖いのは無関心です。知ってさえいれば、いつか買っていただけるチャンスもあるかと思うんですけど、知らなければ買いようがないので。

この性格は子供のころから変わっていないです。私には生みの親以外に「週刊少年ジャンプ」という育ての親がいます。なにが正しくて、なにがかっこいいんだっていう考え方、価値観はみんなジャンプに教わりました。

中学時代は、夕方に観たいアニメがあるので早く帰りたいからホームルームをさっさと終わらせたいんですけど、子供だから当然まとまりがなくて全然終わらない。先生が下手でうまくまとまらなかったので、じゃあ自分で支配した方が手っ取り早いってことで学級委員長になりました。

どう話せばみんなが言うことを聞くのか、ということをそれで学びましたね。どこを押さえれば耳を傾けてくれるのか、みたいな方法論をずっと考えてました。これはやっぱりジャンプから学びましたね。

――ものすごい計画力と実行力ですね。

松山:おかげで人前でしゃべることも練習できましたし、今だって一生懸命がんばってます。

当たり前ですけど、失敗とかうまくいかないことはあるわけですし、知らない間に誰かを傷つけていることだってあるわけですよ。こういう反省の繰り返しです。

傷つかないためには、何もやらないことですよ。でも、何かやるからには、傷つく覚悟は必要です。そのトンネルを抜けた先があるから、それを夢見て仕事しないと、クリエイターはやっていられないですよ。

――最後に、今後の展開についてお聞かせください

松山:これからの時代、ゲーム、アニメ、漫画、それぞれ単体では世の中変わらない。IPを好きになってもらえるようにやっていかなければならないので、いろいろやっていきます。

復讐3部作以外にも、福岡の「TriF スタジオ」というアニメ制作スタジオの『メカウデ』というオリジナルアニメに、企画、脚本、演出監修、プロモーションまでアドバイスしています。

松山氏が企画・脚本・設定・演出監修を務める『メカウデ』。クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」で支援募集中

つまりは、面白いことはやる、面白くないことはやらない。パチンコ・パチスロもやらないです。あれはギャンブルであって、エンタメではないので。

あと最後に、スマホでビジネスをやっている人たちを否定するつもりはまったくありません。私が「好きじゃない」と思っているだけなので(笑)。

――ここまで本音を語っていただけるとは思いませんでした(笑)。本日はありがとうございました。

最初から最後までエッジの効いたトークを展開した松山氏。復讐3部作はまだ制作前のフェーズで発表され、開発メンバーの採用に力を入れている。詳しくは「NEXT PLAN」特設サイトを参照されたい

「NEXT PLAN」についての説明はこちらのメッセージ動画でも伝えられている。復讐3部作各タイトルの紹介もされているので要チェックだ

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