【法林岳之のFall in place】第8回: 日本のユーザーの声を反映して開発されたGalaxy Active neo

前回の記事で取り上げたように、NTTドコモは9月30日、2015年冬~2016年春モデルを発表した。各メーカーのフラッグシップモデルとミッドレンジモデルが充実したラインアップだが、ちょっと方向性が変わってきた印象を持ったのがサムスンだ。

ユーザーのライフスタイルを考えて開発

国内においてはかつてのケータイ時代、2006年に当時のボーダフォン(現在のソフトバンク)向けに端末を供給することでビジネスをスタートさせたサムスンだが、2010年にはグローバル市場で高い評価を得ていた「GALAXY S」の日本向けモデルをNTTドコモに供給し、本格的に国内でのスマートフォンの展開を開始した。その後、2012年にはau向けにもGALAXYシリーズの供給をスタートし、Androidプラットフォームを採用するスマートフォンとして、着実に支持を拡大してきた。

2012年4月に発売されたGALAXY Noteは、大画面ディスプレイとペン操作というスマートフォンの新しいトレンドを生み出し、クリエイティブなユーザーからも高い人気を得た。ところが、今年の各社の秋冬商戦、春商戦向けモデルの発表では、グローバル向けに販売されているGalaxy Note 5がラインアップされず、初代から続いてきたモデルが途絶えることになってしまった。同社製端末については主力のGalaxy S6 edgeに注力すべきという各携帯電話会社の考え方をはじめ、ワンセグなどの日本仕様を取り込んだ日本仕様の端末を開発すると、コスト高になってしまうなどの理由があると推察される。だがその一方で、NTTドコモ向けにはGalaxyシリーズの高耐久モデル「Galaxy Active neo SC-01H」が供給されることになり、いよいよ11月から販売が開始される。サムスンは昨年、グローバル市場向けに販売していた「GALAXY S5 Active」をNTTドコモ向けに「GALAXY S5 Active SC-02G」として供給し、堅実な販売を記録したとされているが、今回のモデルは同社として、2機種めの高耐久モデルということになる。

Galaxy Active neoはGalaxy S6 edgeのようなハイスペックモデルと違い、高耐久という個性を持つモデルということで、今までと違ったユーザー層が興味を持ちそうなモデルだが、開発の経緯やデザインの考え方などについて、製品デザイン担当のハン・ウスン氏、機構開発担当のベク・ウォンソク氏に話を聞いてみた。

製品デザインを担当するハン・ウスン氏

機構開発を担当するベク・ウンソン氏

まず、対象として考えているユーザー像について聞いてみたところ、「特定の年齢のユーザーをターゲットにしているのではなく、ライフスタイルを考えて、製品のデザインや企画を進めている」(ハン氏)という。今回のGalaxy Active neoの場合、オフィスワーカーというより、屋外で働く人、たとえば、宅配の仕事など、外回りの仕事に従事している人たちにフィットすることを考えたそうだ。昨年のGALAXY S5 ActiveはGALAXY S5をベースにしているということもあり、ハイスペック指向、テクノロジー指向が強かったが、今回のGalaxy Active neoではどういうライフスタイルに当てはめていくのか、スペックではなく、デザインでどれだけユーザーに提示できるかを重視したという。

昨年のGALAXY S5 Activeはグローバル向けのモデルをベースに、NTTドコモ向けのモデルが開発されたが、今回のGalaxy Active neoはグローバル向けの「Galaxy Xcover3」をベースに開発されている。Galaxy Xcover3との差異については、「基本的な機構の構成は同じですが、Xcover3がNFCを搭載しているのに対し、Galaxy Active neoは日本向けモデルなので、FeliCaを搭載しています。そのため、わずかですが、厚さが違います」(ハン氏)とのこと。チップセットやカメラの仕様なども若干異なるが、これらの点についてはグローバル版と比較して、実用上の差異や品質に差が出ないように開発されているそうだ。高耐久の裏付けとなるMIL規格の試験についても「ベースモデルとは別のモデルなので、試験台数を増やしたり、より厳しい試験を課すことで、高い品質を確保した」(ハン氏)という。

一方、デザインについてはボディカラーの「カモホワイト」が目をひく。ベク氏によれば、「カモフラージュは元々、軍用で使われてきたものですが、最近ではファッションのトレンドとして定着していることもあり、その要素を取り込んで、デザインしました」という。ちなみに、カモフラージュのパターンは昨年のGALAXY S5 Activeでも採用されていたが、今回はドット柄のようなデジタルカモフラージュに進化させたものが採用されており、グローバル向けに販売されているGalaxy S6 Activeとも共通のものとなっている。

また、ボディカラーを表わしている背面のカバーは、従来のGALAXYシリーズの流れを受け継ぎ、背面カバーが外れる構造を採用している。耐衝撃という観点で考えると、背面カバーが外れるのは少し不安に感じられるかもしれないが、今回は屋外での利用するとき、バッテリーを交換できるように背面カバーを取り外せる構造を採用したという。ただ、ベースになったグローバルモデルのGalaxy Xcover3と違い、背面カバーの仕様は若干変更しているそうだ。「日本のユーザーはカバーが外れにくい仕様を好むという指摘があり、Galaxy Xcover3よりもカバーを外れにくい構造に変更しました。ただし、ユーザーが外すときは外しやすいように設計しています」(ベク氏)とのことだ。おそらく、日本のユーザーはケータイ時代、電池カバーが外れて、なくしてしまうようなことがあったため、そういう指摘が出てきたのではないかと推察される。

「Galaxy Active neoは日本のユーザーの声を反映し、ライフスタイルに合わせたモデルとして開発しました」と話す

ところで、グローバルモデルのGalaxy Xcover3は実際に市場に投入してみて、どういうユーザーに響いているのだろうか。ハン氏によると、「ラグドフォン(いわゆるタフネス系モデル)は男性ユーザーが買うものと予想していたのですが、意外にお子さんに持たせたり、お母さんユーザーにも買ってもらえたと聞いています。子どもはモノを雑に扱いますし、もっと小さいお子さんは親のスマートフォンを投げたり、なめたりする可能性があるので、タフで防水のモデルが好まれたのかもしれません」とのことだ。

Galaxyシリーズというと、グローバル市場で展開されるハイエンド&ハイスペックのモデルばかりを想像してしまいがちだが、今回のGalaxy Active neoは防水防じん、MIL規格対応の高耐久性能というスペックもさることながら、きちんと日本のユーザーの好みを反映し、幅広いユーザー層に受け入れられそうなモデルに仕上げられたという印象だ。国内市場におけるGalaxyシリーズの今後を占ううえでもGalaxy Active neoに対する市場の反響が注目される。