『龍が如く』の開発スタッフだった奥田Dは『戦の海賊』で活躍中
かつて、家庭用ゲームやアーケードゲームなどで一時代を築いた人気タイトルに携わり、目の肥えたコアなファンをもうならせた百戦錬磨のゲームクリエイターたちが、最近ではスマホゲーム開発の現場でも数多く活躍している。
当連載は、そのような輝かしい実績を持つクリエイターを直撃し、ゲームとその作り手自身の魅力を併せてお伝えすべく企画した。
今回も、現在開発・運営を手掛けているスマホゲームにまつわる話や、「実は過去にこんなゲームの開発に携わっていた!」「プライベートでもスマホゲームをメチャクチャやり込んでいた!」といった意外な事実をお聞きしている。
記念すべき第1回にご登場いただくのは、株式会社セガゲームスの奥田禎氏。同氏は現在、海賊船団の船長となって敵の船団とのバトルや海賊仲間との冒険ストーリーなどが楽しめる海洋冒険バトルゲーム『戦の海賊』(以下、センノカ)にてディレクターを務めている。
すでに本作をプレイしている人なら、公式動画「奥田Dのセンノカ講座」などでおなじみのことだろう。
実は奥田氏、以前は家庭用ゲーム機の人気シリーズ『龍が如く』の開発スタッフとして長年活躍した後、MMORPG『キングダムコンクエストII』よりスマホゲームの開発に本格参戦したという経歴の持ち主だ。
学生時代に『ジェットセットラジオフューチャー』でゲーム開発者デビュー!
――『センノカ』でディレクターとしてご活躍中の奥田さんですが、初めてゲームに興味を持ったのはどのようなきっかけでしたか?
奥田禎氏(以下、奥田):「ゲーム&ウォッチ」(※)が最初ですね。小学校1年生の時から1年半ほど父親の仕事の関係で旧ソ連に住んでいたのですが、出国前に『オクトパス』とか『ファイアー』などのゲーム&ウォッチを、コミック『キン肉マン』と一緒にたくさん向こうへ持っていって楽しんでいました。
※ゲーム&ウォッチ:かつて任天堂が発売した携帯型のLSIゲーム機の総称。ファミコン誕生以前の大ヒット商品。
当時のソ連にはゲームや漫画のようなタイプの娯楽が全然なかったので、ホントに穴が開くほどプレイしていました(笑)。だからゲーム&ウォッチとキン肉マンは今でも私のバイブルですね。
それから半年ほど過ぎたころに、当時通っていた日本人学校の友だちの家に行ったら、ファミコン版の『テニス』があったんです。さっそく遊ばせてもらったら、「世の中にはこんなに面白いものがあるのか!」と衝撃を受けて、もう夢中になってしまいました。
あの時の感動は今でもすごく覚えていますね。で、日本に戻ってからすぐ親にねだってファミコンを買ってもらい、『ゼビウス』などを遊ぶようになりました。
――すると、少年時代からゲーム開発の仕事にあこがれていたのでしょうか?
奥田:子どものころの夢というよりは……。大学生になってから将来何をやろうかと考えたときに、ゲーム会社でゲームを作る側に立ちたいなと思って就職活動を始めたのがきっかけです。それまで、ずっとゲームを遊んでいましたからね。
――普通に就職活動をした結果、セガから内定をもらったので入社されたということですね。
奥田:ええ、当時はセガではなく分社制だったのでスマイルビット(※)でしたけれど。各開発会社の社長がズラっと並んだ中で面接を受けて、その各社から内定をもらうという形でして、ありがたいごとに最終的に数社から内定をいただきました。
※スマイルビット:かつて存在したセガの開発子会社。他にも、ヒットメーカーやSEGA-AM2、ソニックチームなど数多く存在した。
――では、その中で奥田さんがスマイルビットを選んだ決め手は何だったのですか?
奥田:その時はCS(コンシューマ)希望だったのと、『サカつく』などのつくろうシリーズや『パンツァードラグーン』シリーズなど、作っているゲームの幅が広かったからですね。
――最初に開発を手掛けたのはどんなゲームだったのでしょうか?
奥田:『ジェットセットラジオフューチャー』(※)です。内定をもらった年の秋に「ヒマならバイトしないか?」と声を掛けていただいたのがきっかけで、仕事を始めました。
※『ジェットセットラジオフューチャー』:2002年に発売されたXbox用のアクションゲーム。スケートで街中を走行しつつ、ケーサツの邪魔をかわして落書きをしていくというスタイリッシュな作品だ。
――『ジェットセットラジオフューチャー』では、どのパートを担当したのですか?
奥田:それほど高度な仕事ではなく、ステージを構成する落書きを描くために必要なスプレー缶とか敵のキャラクター、障害物などを、先輩社員の指定通りにマップ上に配置していくのが仕事でした。
ゲームは年明け早々に完成させる予定だったのですが、卒論が手つかずのまま提出締め切りまで一週間を切ってしまい、最後はもう「さすがにこのままだと卒業できないので無理です」と言って年末ギリギリで逃亡しました(笑)。ですので、私は開発の最後まではかかわれませんでした。
このときから、今の私の上司に当たる菊池(※)と仕事をする形となり、それ以来、今でもずっと一緒に働いています。
※『センノカ』でプロデューサーを務める菊池正義氏。
――入社前からそんなご縁があったんですね! 正式に入社して以降は、どんなゲームを担当されたのでしょうか?
奥田:『パンツァードラグーン オルタ』(※)です。ゲームのバランス調整や、ステージを作成する人手が足りないということで、新人研修が終わってしばらくしてチームに入りました。
私が受け持ったのは、ステージ3に登場する敵キャラとか、並走する仲間のキャラクターをどういうルートで動かすかなどといった、ステージ全般の仕上げですね。
※『パンツァードラグーン オルタ』:2002年に発売されたXbox用シューティング。主人公のドラゴンを操作し、3Dのマップ上で敵と戦いながら冒険を進めていく。
『龍が如く』シリーズでバトルシーン制作のノウハウをみっちり修行
――奥田さんは、あの『龍が如く』シリーズの第1作から開発に参加されていたとか?
奥田:そうです。『龍が如く』の第1作は難産で、リリースまでかなりの期間が掛かりましたね……。最初はプランナーとして、一部の敵キャラクターを作ったり、ヒートアクション(※)の発動条件の設定作業などにかかわっていました。
※ヒートアクション:ゲージがたまると使用できる各種の必殺技。屈強なヤクザやボス敵を壁にたたきつけたり、関節技やメリケンサックで攻撃したりするなど、さまざまなバリエーションが存在する。
――『龍が如く 2』以降の続編にも参加されていたのでしょうか?
奥田 はい。『龍が如く 2』『龍が如く 見参!』『龍が如く 3』では、敵やボスキャラクター、バトルステージを作る仕事などを、シリーズを追うごとに徐々に担当範囲を広げて任されるようになっていきました。
『龍が如く 4 伝説を継ぐもの』からは私がバトルパートのリーダーとして、4人の主人公のアクションや成長要素をメインにバトルパート全般を見るようになり、その後は『龍が如く OF THE END』と『龍が如く 5 夢、叶えし者』の途中まで、おおむね同じような形でプロジェクトにかかわっていましたね。
――歴代シリーズのほとんどのタイトルを手掛けられていたとは! そこからスマホゲームの開発に転じたきっかけは?
奥田:菊池から、「ネットワークゲームを作る部署が立ち上がるから、そっちに行かないか?」と誘われたのがきっかけですね。
――新しい部署ではどんなゲームを担当されましたか?
奥田:『キングダムコンクエストII』です。このゲームで、私が初めてディレクションをすることになりました。
実は前作の『キングダムコンクエスト』は、私が当時所属していた部署で運営をしていたんです。私はもともとこういったタイプの戦争ゲームをよくプレイしていて、自分でもこのゲームをプレイヤーとしてかなりやり込んでいたので、ユーザー目線で担当者にいろいろと要望や感想を言っていました。
私が『II』の開発に呼ばれたのは「あれがきっかけの1つだったのでは?」と推測しています。
――長らく家庭用ゲーム機向けの開発に携わって来られましたが、家庭用とスマホ用では開発のノウハウは変わるものなのでしょうか?
奥田:ゲームを作る、という点においては大きな違いはありません。ただ、意識を向ける方向がだいぶ違いました。
『キングダムコンクエストII』を振り返るといろいろな反省があって、今でこそ当たり前の話ですが、例えばスマホゲームの場合はカッコいいビジュアルを入れたり、ゲームシステムをよく作り込んだりしたとしても、ユーザーがゲームをダウンロードする際にデータサイズが大きいと、遊ぶこともなく、もうその段階で落とすのをやめてしまうことがあるんですよ。
自分の端末で動かないゲームは当然遊んでもらえませんし、落とし終わった後も軽快に動作する必要もあります……。スマホの場合は、ゲームとはまた別のところ、もっと手前の段階でいろいろと考えなくてはいけないことが多かったです。
――実際に遊んでもらう前の段階で、すでに高いハードルがあるというわけですね。
奥田:はい。ユーザーの方にとっては無料で遊べるゲームの選択肢がたくさんある分、さまざまな視点から厳しい目で見られます。ですので、こういった部分で手を抜いてしまうと必然的にカスタマレビューの評価も下がってしまい、さらにプレイしてもらえないという悪循環を生むことになります。
家庭用の場合はリリースされたら追加コンテンツなどあるものの一段落つきます。一方、スマホゲームはでき上がったものをリリースしてからが本当の始まりです。『キングダムコンクエストII』のときの反省点を、今の『センノカ』で生かそうと開発段階から意識していました。
――逆に、家庭用ゲームの開発で養った経験が、スマホゲームでもそのまま役に立ったということはありましたか?
奥田:『龍が如く』シリーズは開発に携わる人が100人ぐらいいるような大きな現場でした。そのため、間違いがないよう意思の疎通だったり、イメージの共有だったりが大事になってきます。
詳細を詰めたり、自分が手を動かしたりする前から、理解を深めるために関係者と相談しながらどのように実装できるか探るよう努めていました。
家庭用ならでは、という経験ではないと思いますが、現在の立ち位置で仕事をするときも、まずは「こういう目的でこういう方向で検討しています」というイメージを事前にみんなに示して、できるだけ唐突な提案にならないよう、内容展開後はスタッフみんなが納得して齟齬(そご)がなく仕事に入ってもらえるようにすることは、今の『センノカ』でも極力意識してやっています。
――唐突な質問で恐縮ですが、奥田さんの考えるセガゲームスの、ゲーム開発会社として最もいいところは何ですか?
奥田:難しい質問ですね(苦笑)。私は現在の会社以外のところに勤めた経験がないので比較はできないのですが、決められたスケジュールやクオリティーに対して、全スタッフが責任を持って仕事をすることではないでしょうか。
スケジュールが厳しくても、「みんなでやれば絶対に結果を出せそうだ」という雰囲気や勢いがどんどん生まれてきて、全力を尽くせるようになるんですよ。
みんなが最後までベストを尽くす、少し体育会系的なところがあるのかもしれません。
――奥田さんが個人的にあこがれているゲーム開発者はどなたですか?
奥田:子供のころからタイトル単位でゲームを見ていて、特定の個人やメーカーをそれほど意識はしていなかったように思います。ただ、やはり長く下で経験を積ませてもらっている菊池からは、考え方や作り方などで大きく影響を受けているでしょうね。
奥田氏はあのゲームの元上位ランカーだった!
――ここからは話題を変えまして、奥田さんがどんなスマホゲームで遊んでいるかについてお尋ねします。ズバリ、奥田さんが最もよくプレイするゲームを教えてください。
奥田:今いちばん遊んでいるのは『ハースストーン』ですね。
特に意識しているわけではないのですが、最近は海外製のタイトルを遊ぶことが多いです。
『ハースストーン』は運と実力のバランス加減がとてもよくできていて、圧倒的に強い人が相手でも運があれば勝てる可能性が出てくるというさじ加減がすごくいいですね。そんなにお金を使わなくてもひと通りキーカードはそろいますし。
――スマホゲームで遊ぶのは、やはり通勤途中の電車内などになりますか?
奥田:そうです。最近は家庭用ゲームに加えてスマホゲームを自宅でも遊ぶようになりました。アーケードゲームも昔からずっと好きなので、休みの日にはゲームセンターに行ったりもします。
――ちなみに、ゲーセンでは主にどんなゲームを遊ぶのでしょうか?
奥田:『三国志大戦』や『戦国大戦』のようなTCGをよくやります。カードを操作するという独特の楽しさがあるだけでなく、リアルタイムストラテジーとして、ものすごく実力が反映される面白いゲームだと思います。
実力が反映される分、勝ち負けの充足感がたまらないと言いますか(笑)。プレイを積み重ねることで実際のカードが集まっていくという楽しみもアーケードゲームならではですし。
――奥田さんが今までにいちばんハマった、あるいはとことんまでやり込んだスマホゲームは何ですか?
奥田:過去も含めると『クラッシュ・オブ・クラン』です。もう1年半くらいプレイしていませんが、最高でJPランキングの23位ぐらいまで上がったことがあります。
当時は箱庭を作るゲームが好きだったのと、バトルが加わったゲーム性はもとより、UIやゲームの雰囲気、人との結びつきのいい感じのゆるさなどが自分にピッタリだったのでハマりました。
『パズドラ』とのコラボあたりで一気にたくさんのユーザーが流入してからは、JPランキングのレベルがどんどん上がってなかなか勝てなくなってきて。結局200位ぐらいから上がれなくなったあたりで別のゲームのほうをプレイするようになっちゃいましたね。
――最近配信されたスマホゲームで、奥田さんが特に注目しているものがあれば教えてください。
奥田:先ほどの『ハースストーン』もそうですが、今は個人同士がリアルタイムで競い合う対戦ものが流行し始めているなと感じているので、『クラッシュロワイヤル』には注目しています。バトルの楽しさもそうですが、ものすごく軽快なアプリ動作と快適なUI、宝箱や観戦の仕組みなども非常によくできていて参考になります。
奥田D直伝! 『戦の海賊』攻略のコツ
――ここからは『センノカ』について伺っていきたいと思います。実は私もまだゲームを始めたばかりなので、正直バトルのコツがまだつかめていないんです。この機会にぜひ、奥田さんから本作の攻略のコツを教えていただけますでしょうか。
奥田:序盤は誰でもいいので、母船に赤い砲兵のキャラクターを乗せることをおすすめします。そうすると発射する主砲の弾が2倍になりますので、これを利用して主砲を固め撃ちして、敵の頭数を減らす戦法をぜひ覚えてください。
また育成面で意識していただきたいのは、自分の船を強化することですね。最初はどうしてもキャラクターの強化に意識が向いてしまいがちですが、序盤は船をレベルアップさせることを忘れないようにしてください。
――なるほど! まずはキャラクターの成長ではなく、船の強化が重要なんですね。
奥田:そうなんです。海賊の育成については、国内で配信されているゲームに慣れていると、いわゆる「合成」によってキャラクターをレベルアップするというイメージがあるかと思いますが、『センノカ』はバトルで経験値をためて成長することをどちらかというと軸にしています。
もしストーリーで詰まってしまったら、この場所でのバトルならだいたい勝てるだろうというポイントを見つけて、そこを中心にグルグル回って海賊のレベルを上げていことをおすすめします。そうすると遊んでいるうちに、この船が強い、あのキャラクターが強いなど、特徴がいろいろ見えてくるとい思いますので、そこから自分なりのベストの方法をつかんでいってほしいですね。
それから子分を手に入れたら、どんどんキャラクターにセットしてくださいね。
――船やキャラクターに赤(砲撃船)、青(装甲船)、緑(突撃船)の属性が設定されていますが、これらの相性もやはり大事になってきますよね?
奥田:もちろんです。バトルを始める前に、「このステージでは敵の艦隊は青で固まっているな」などとチェックしたうえで遊んでいくと、一歩先のステージに上がれるようになります。
まずは、味方の属性を相手に対して有利なものを多めに選ぶように意識すれば、細かい戦略やタイミングを考えなくても、ある程度は勝利に結びつくと思います。
――バトル開始時に、他のプレイヤーのキャラクターの中から毎回1人だけ、助っ人キャラクターを選んで出撃できますよね? これはフレンド申請のきっかけ作りが目的なのでしょうか。
奥田:はい。それから助っ人を出すことによって、自分がまだ持っていないキャラクターを試せるメリットがあります。『センノカ』に登場するいろいろな兵種やスキルを実際に使って体験してもらうことで、さまざまな海賊の特徴を理解してもらいたいためです。
――1人で遊ぶメインストーリーなどとは別に、対人戦も用意されています。対人戦ならでのコツもぜひ教えていただきたいのですが。
奥田:敵の艦隊をひと通り見て、戦略的にキーとなる存在のキャラクターが誰なのかを見破れるようになると、勝利がぐっと近づくと思います。
例えば、双剣兵は多くの場合、攻撃力が高めのパラメータを持っています。通常のキャラクターは自分の近くにいる敵や船に向かって攻撃を行うのに対し、双剣兵は確実に相手の海賊を狙って倒しに行くというAIを持っているので、対人戦ではかなり有効であり、敵としては厄介な存在になりますね。
ただし双剣兵は体力が低いという弱点があるので、敵の配置などを見ながら、自分で使う場合はどう守りながら活躍させればいいのか、敵として出てきた場合はどうすれば倒せるのかを判断できるようになるといいですね。
会話シーンにおける2つの選択肢には意外な意味が込められていた!?
――『センノカ』ではガチャを引いて新しい海賊仲間のキャラクターが増えると、キャラクターごとにさまざまな会話イベントが見られますね。
奥田:このゲームは、とにかくキャラクターに愛着を持ってもらうようにしようと開発初期の段階から考えていまさいた。
新たにキャラクターを手に入れると、出会いの段階からそのキャラクターがどんな背景や特徴を持っているのかをちゃんと見えるようにして、興味を持ってもらい、自分の仲間なんだとしっかり感じられるように、そうした演出を盛り込んでいます。
――普通の人間だけでなく、有翼人などの種族がたくさん登場するのも本作の特徴ですね。
奥田:そうなんです。でも、個性的なキャラクターがたくさん登場するけれど、プレイヤー自身が彼らを束ねているんだという感覚を持ってほしい、「俺の海賊団」として使ってほしいという思いがあります。
――会話イベントの途中で2つの選択肢がしばしば登場しますが、どちらを選んだかによってストーリー展開が変わるようになっているのでしょうか?
奥田:いいえ、実はストーリーに対して影響することはほとんどありません。もちろん、選択肢によって周りにいるキャラクターのセリフなどは変わりますが。本筋までは変わらないようにしてあります。
――本筋が変化しないのに、なぜ選択肢をわざわざ用意したのですか?
奥田:ゲームへの没入感を高めるためです。もし選択肢が出てこなかった場合は、彼らがただ一方的に話をするだけになって、プレイヤーが傍観者のまま終わってしまいますよね?
『センノカ』はプレイヤー自身が主人公となるゲームにしたかったので、登場するキャラクターたちが何かしらの判断などを必ずプレイヤーに問い掛けるようにして、それに対して判断するという演出で「なり切り感」を出すようにしています。
――それから、自分たちのアジトがだんだんにぎやかになるのも、本作の大きな楽しみの1つではないかと思います。
奥田:『センノカ』は「俺の海賊団を作ろう!」というのがいちばんの大きなテーマですので、見た目で楽しさを表現するにはアジトはもちろん、船や仲間たちが成長して強くなった場合も、それが見た目にわかりやすく反映されるようにしてあります。
強いキャラクターを手に入れたらアジトの町中を歩くようになりますし、船を強化したり施設をレベルアップさせたりすると見た目がどんどん豪華になっていきます。
つまり、ゲームプレイの積み重ねによって単に数値が増えるだけでなく、アジトが豪華になるという形でわかりやすいように変換しているわけです。
――ほかにも、何か注目してほしいポイントはありますか?
奥田:メインストーリーは前に進む方向でプレイされている方が多いと思いますが、いったんクリアした海域で、その後のお話が楽しめるサブストーリーも用意しています。
さらに、そこをクリアすると新たなキャラクターを仲間にできるようになります。
その中には、強敵が出てくる試練のクエストで使うと役立つ海賊がたくさんいて、これらの仲間を探して育てておくと、今まで攻略が難しかった試練クエストでもぐっと戦いやすくなると思います。
高レアリティーの海賊に目が向きがちですが、お話を楽しみながらこういった海賊たちを手に入れるために、一度クリアした海域を再び訪れるといいことがあるかもしれませんよ。
――今後の『戦の海賊』の展開予定についてお聞きします。近々、何か新モードの追加予定などはありますか?
奥田:多くのオンラインゲームに用意されている要素の中で、『センノカ』において足りていない大きな要素の1つが「GvG」、つまりグループ同士での対戦です。
1人で遊べるストーリーや、1対1での対戦、あるいはギルドを作ったうえでの「ギルド連戦」というメンバー同士で協力して敵を倒す遊びは既にありますが、さらにGvGの要素を入れようと、今まさに開発を進めているところです。
同盟を結んだプレイヤー間での絆を発揮して、どのギルドがいちばん強いのかを試せる場ができれば、『センノカ』としてコアコンテンツのひと通りの実装はできたことになるのでは、と思っています。
――なるほど、グループ対戦の実装ですか!
奥田:それが実現した後は、原点に立ち返るような形で、既存のプレイヤーの方々がより長く楽しめるような内容を作り続けていくのはもちろん、新規プレイヤーの方に対してもどんなアプローチができるのか、いろいろ思案しているところです。
近々リニューアルといいますか、進化した姿をお見せできるのではないかと思っていますので、発表があるまでぜひ楽しみに待っていてください。
――ちなみに、いずれはe-sports方面に展開しようというお考えはお持ちですか?
奥田:まずはゲームバランスなどをきちんと確立させるなど、多くの課題をクリアする必要がありますので、現在はまだ検討していません。
そういった深い対戦を実現するためにも、対戦自体を楽しいものにするのはもちろんですが、観戦も楽しませることができるような、勝ち負けの流れが分かりやすく、ゲームがより面白そうに見える、見栄えがよくなるバトルにしなくてはというのが今後の課題になってくると思います。
以前から、データ対戦ではなくリアルタイム対戦にしてほしいというリクエストをたくさんいただいていますし、そういった要望にいつかお応えできるようになるためにも、バトルの改善は今後も力を入れていきたいと思っています。
――それではGame Deets読者の方に、『戦の海賊』の奥田Dとしてのメッセージをお願いします。
奥田:まずはゲーム全体の雰囲気を楽しんでください。いろいろな遊びの要素が入っていますが、最初はあまり難しいことは考えずに、物語はどう進むのだろうとか、この仲間はどんなキャラクターなのかとか体感しながら、気軽に遊んでいただきたいです。
遊んでいるうちに、海賊が増え船が強化されてアジトがにぎやかになってきたころには、コンテンツが増え、さまざまな目標が増えていきますので、ゲームで仲間を増やしながら存分に楽しんでいただければと思います。
本作では末永く楽しめるものがたくさん用意されております。この機会にぜひプレイしていただけるとありがたいです。
――本日はありがとうございました。
取材を終えて
プライベートではアーケードの対戦ゲーム好きであり、スマホゲーム界隈でも対戦ゲームがトレンドになっていることを肌で感じているという奥田氏。
対戦ゲームがなぜ面白いのかを身をもって体験し、さらにゲーム開発者として『龍が如く』シリーズで培った豊富な経験があったからこそ、艦隊同士がぶつかる『戦の海賊』ならではのバトルの面白さを実現することができたのだろう。
本作が2016年4月の段階で250万ダウンロードを達成するほどの人気を集めたのは、けっして偶然でも何でもないことが、この記事を読んでお分かりいただけたのではないだろうか。
(C)SEGA
(C)2012 Supercell