【変ゲー1人探検隊】第10回: 土より出でて育つ変ゲー

今の場所に転居したとき、友人がハーブの鉢をくれた。素朴な姿で目を楽しませてくれる上に、料理にも力を貸してくれるという可愛い奴らだった。その中にあいつ、ミントもいた。

「ハーブの生命力はすさまじい。絶対に鉢から出して直植えしないように」と友人は忠告してくれたが、筆者ら一家はその言葉どおりにしなかった。

鉢が割れてしまったのをきっかけに、地面に植え替えてしまったのだ。家の敷地のそばには長年ドクダミ一家がはびこっており、他のハーブはいつしかその姿を消した。

しかし、ミントだけは戦い続け、ドクダミと毎年勢力争いを繰り広げている。ミントとドクダミの混ざった香りが漂ってくると、「この季節が来たか……」と思うようになった。除草はとうにあきらめている。

Sandwich Empire : Undercover War

サンドウィッチを育てて巨悪を暴く育成ゲーム。主人公=プレイヤーは数奇な運命に飲み込まれた、下層社会に生きる者。

生きるためか、正義の心ゆえか警察に協力し、下町の一角で秘密のサンドウィッチ屋を始める。取引を進めて店のコネを増大させ、背後に潜むサンドウィッチ組織の大ボスをあぶりだすのだ。

すくすく育つサンドウィッチ。あと20秒ほどでお楽しみの収穫タイムだ。野菜やペーストもあらかじめサンドされた完成品が実る(疑問を持ってはいけない!)。お金は机の下の金庫にこまめにしまおう

「なんでサンドウィッチなんだよ!」と思う読者のために少々説明をさせていただこう。実は本作には、『Weed Empire: Undercover War』という元作品があるのだ。

グラフィックもシステムも全く同じ。違いは、「違法な危険な草」が、「木になるサンドウィッチ」に変更されている点のみ。

それだけでだいぶ健全になった! といいたいところだが、一気に変ゲーに傾いてしまった。

ヤバイ草と同じ感覚で秘密のサンドウィッチを買いに来る連中は、肌の汚い者ばかり。薬物を常用するとシミなどができやすくなるというが、やはりこのサンドウィッチにもいかがわしい成分が含まれているのだろうか。

まっとうな職業を名乗る顧客も、どこか不健康な顔をしている。無数のシミ、吹き出物、目の下のクマ。やはり、このサンドウィッチには何かよろしくない成分が含まれているのだ

秘密のサンドウィッチ商売は楽ではない。やたら水を必要とするし、どれだけうまいのか知らないが、ひっきりなしにドアがノックされうるさいことこの上ない。

おまけに、定価がないものだから、こっちの苦労も知らずにゴミのような安値で買おうとする奴らも現れる。

のんびりしていられるのは最初だけ、ダーティな空気に当てられて「うるせー! 品切れだ!」だの、「お前に売るサンドウィッチはねえよ!」だの叫びたくなる。

汚職にまみれた警察のガサ入れにも負けず、こつこつとサンドウィッチを育てているうちに、次第にストーリーが生まれてくるのが楽しい。

汚職警官の見回りはウザいが、無視すると金とサンドウィッチをすべて奪われてしまう。金庫を手に入れれば、この不愉快な状況を回避できる。「報復をおそれて、しばらくおとなしくする」ために鉢が1個に減ってしまうが、逆に警官を通報する方法もある

ネタバレを避けつつアドバイスをするなら、金庫が購入できるようになるレベル5までは、植木鉢は1つだけで辛抱しておくことをおすすめする。

Earthworm Alchemy : Secret of the Magic Cauldron

タラコ唇のミミズを育てる育成シミュレーション。

最初にものすごいワナがある。iOS版は、デバイスの言語を日本語にして起動すると、文字化けが起きてしまう場合がある。注意されたし。何も読めない状態でプレイするのはさぞつらいだろう。

iOS版の起動画面。読めない。これでは遊ぶ気が起きない。デバイスの原語を英語に変更すると、この問題は解決した。環境によっては文字化けが起きないこともある

伝説の錬金術士の残した謎のメモを手がかりに、とりあえずミミズを50cm以上の長さに育てるのがゲームの目的。

ミミズは鉢から生え、動かない。そんなミミズは聞いたことがないが、動けないのでしかたない。

タップである程度体が伸縮するので、空気中に漂うエサを摂取させ、ちまちまと育てていく。育てていくうちに、バーチャルペットの常として進化する。

筆者のミミズはキノコとの融合体になった。キノコとミミズが合体するゲームがあるなんて、この日まで知ることはなかった。長生きしてみるものだ。

ミミズ育成フェーズ。日が差すと麦わら帽子をかぶったり、しゃれっ気を感じさせる。こいつをかわいいと思えるかどうかで、このゲームの寿命が決まってくる

育つにしたがって、本作のメインとなるミニゲームの難易度は多少アップしてくる。

飲み込むと体が短くなるペナルティエサや、豪華エサが大量に流れるボーナスステージの「PARTY TIME」など、単なるクリッカー系ゲームで終わらせないような工夫がみられる。

のだが、やはり始終タップするのは疲れる。エサの高さに合わせてタップに変化をつけるのは、最初は面白そうに思えるがすぐにしんどくなってしまうのだ。

長く遊ぶには放置系の要素をもう少し取り入れてもよかったかもしれない。

「キノコタイプのミミズ」。こんな言葉がこの世に存在していていいのだろうか。こちらはレア度が最低なのでこれでもかなり地味な方らしい

とはいえ、どんどんミミズらしくない方向に進化するミミズを「何でそうなるんだよ!」と突っ込みを入れながら世話をするのは、楽しくないわけではない。

変ゲーとしてはかなりまともな部類だ。文字化けがなければもっといい。

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