ウォーキング・デッド サバイバルへの道【ゲームレビュー】

『ウォーキング・デッド サバイバルへの道』は、欧米で人気のコミック『ウォーキング・デッド』の世界を体験できるアドベンチャーRPGだ。「ウォーカー」と呼ばれるゾンビがはびこる世界を背景に、人間の独裁者と反逆者たちとの壮絶な戦いが描かれている。

絶望的な状況下で、絶望的なストーリーが進む
生存の道は本当にあるのか?

キリスト教圏におけるホラーのテーマは、古典である吸血鬼にしても、あるいはフランケンシュタインの怪物にしても、宗教倫理的にタブーとされるアンチキリストの物語がほとんどであった。そこに新風を巻き起こしたのが、1978年にイタリアで公開されたジョージ・A・ロメロの映画『Dawn of the Dead』、いわゆる『ゾンビ』である。

以来、感染する死人還りは主にアメリカを中心に定番テーマとなって現在に至っているが、『ウォーキング・デッド サバイバルへの道』もそんな作品の1つである。

この作品背景は少々ややこしく、2010年より制作されているTVドラマ『ウォーキング・デッド』のコミカライズの世界観をベースに作られている。ゆえに、ウォーカーと呼ばれる死人還りと、文明崩壊後の世界という基本的な部分のみがドラマ版に準拠しているらしい。もちろん、そんな前提を知らなくてもゲームを楽しむことに何ら問題はない。

動きは遅いが、数が多いのが奴らの特徴。1体ごとの強さはさほどでもないが、数が集まると非常にやっかいな相手になる

生存こそが最大の命題

これまでもたびたびゲーム化もされてきた『ウォーキング・デッド』であるが、いずれも1人称のアクションゲームがほとんどであった。それが、本作ではスマホゲームらしいシミュレーション風のRPGになっている。

町の建設、そしてウォーカーや敵対する人間たちの勢力と戦うという基本部分は、一般的なストラテジーゲームと変わらない。では何が違うのかといえば、やはり練り込まれたストーリーだろう。

弱肉強食の世界の中で、プレイヤーは弱小勢力に属している。ここで生き残るには仲間を増やし、物資を蓄えていかねばならないが、そのために町の外へ探索に出ればさまざまな選択を強いられることになる。

例えば、ほかの町から逃げてきたという人たちに出会う。そこでは、彼らを仲間にするかの選択をしないといけない。彼らの言うことが本当であるなら、自分の勢力を伸張させられるが、もしかしたらほかの勢力から送られたスパイかもしれない……。あるいは、ウォーカーにかまれた疑惑を持つ仲間がいる。そのキャラクターは、自分はかまれていないと主張するが、もしかまれているとするなら、放置することで仲間を襲いかねない。

人を殺す選択というものをしたことはないし、普通の人生でそんな状況に遭遇することはないが、なかなかハードなものである。物語の中では、こんな選択を次々と迫られることに

もちろん、疑わしき者を殺し続けてもいいが、そうすると勢力の強化が大幅に遅れることになる。ほかのストラテジーゲームと一線を画するのが、この連続する選択であり、作品の緊迫した雰囲気づくりにひと役買っている。

強大な武力を持つ勢力に仲間が襲われて、半殺しの目にあった。復讐するべきか、見過ごすべきか……。プライドよりも生き残ることが優先される世界なのだ

勢力の拡大のために町を拡張せよ

プレイヤーは限られたエリアのみを勢力下に収めているため、無尽蔵に生存者を収容するわけにはいかない。そして町を拡張するには資源が必要で、これらを集めるために捜索を行う。資源の獲得方法は、町の中で生産する、ストーリーを進める、他の勢力を襲撃するという3つの手段がある。

町で生産される資源は微々たるものなので、ストーリーを進めて資源を集めるのがメインとなるが、敵の排除を行いながら進むうちに生存者を保護する状況となることも。このとき、町に住む家がなければ、彼らを連れて帰ることはできない事態に陥る。

なお、町に連れ帰った生存者は訓練所で訓練を施すことで、パーティーキャラにすることができる。この部分がいわゆるノーマルガチャの扱いで、誰が仲間になるかはランダムだ。コインを使うことで引けるガチャでパーティーキャラを集めたとしても、キャラを成長させるには探索パーティーに加えるしかないので、町の拡充は必須となる。

住居の許容量がいっぱいだと、見つけた生存者を連れて帰れない。恨みごとを言われても……と思う反面、やや心が痛む

基本となる資源は食料と資材で、これを使って施設の建設や人材の育成を行う。町に建設できるのは訓練所、農場、資材採集基地などで、住居は廃墟を改修するしかない。また、住居を壊してほかの施設を建設することもできる。各施設はアップグレードが可能で、それぞれ食料、資材を収得、収容できる資源の数が増えていくが、町役場のレベルを超えることはできない。

破壊された住居を元に戻すには、町役場のレベルを上げなければならない。序盤は、既にある家をアップグレードして対応しよう

ウォーカーよりやっかいな人間!

プレイヤーに敵対するのはウォーカーだけではない。資源の争奪が日常茶飯事なこの世界では、ほかの勢力の人間も同様に襲い掛かってくる。ウォーカーは動きが遅く、近接するまではパーティーを攻撃できないが、人間は武器も使えば動きも速く、遠距離攻撃も行ってくる。ただし、ウォーカーに比べれば、与えてくるダメージは少ない。

敵対するなら、人間であろうとも容赦はしない。攻撃により飛び散る血しぶきが何とも痛そうである(僕はスプラッタが苦手なんです)

人間と一部のウォーカーには、頑丈、警戒、強靭、高速という4種類で特性があり、装備できる武器も異なる。頑丈は警戒に、警戒は強靭に、強靭は高速に、高速は頑丈に追加ダメージを与えられる。これを利用して頭数を減らさないと、対人間の場合は弱ったキャラや弱点特性を持ったキャラを集中して狙って来る。案外、頭がいいのだ。ちなみに、ウォーカーはいちばん近いキャラを襲うのみである。

特性がある敵の場合、追加ダメージが入るキャラには上向きの矢印が表示される。特性の関係を覚えていなくても戦いやすく工夫されているのはありがたい

リージョン変更で、さまざまな地域のプレイヤーと対戦できる

もともとレーティング15の作品であり、流血などの描写が多くてイベント中のCGもけっこうグロい。ここら辺をいじれるのか調べてみたが、特にレーティングは操作できなかった。その代りリージョン(地域)は変更できる。日本からプレイする場合、自動的に日本地域のサーバーにデータが作られるが、リージョンを変えればほかの地域のサーバーにもデータが作れる。ただし、この場合いちからゲームをやり直すことになる。ちなみに、リージョンによる描写の変更は特にないようだ。

日本向けのサーバーは1つしかないようで、ほかは圧倒的に英語が多い。ちなみに、JAはJapanese、ENはEnglishで、各サーバーの言語圏を表している

一度作ったサーバーのデータはそのまま保持されるので、その後は何度でもリージョンの行き来が可能になっている。本作ではほかのプレイヤーとの対戦が可能だが、これを利用して、さまざまな地域のライバルとバトルを楽しめる。

注意点としては、日本版のリリースの前にサービスインしている地域はプレイヤーのレベルも高く、他のプレイヤーから収奪される危険性も高い。慣れないうちにあまり他のリージョンを訪れるのは望ましくないだろう。

リージョンをフランス語圏にしてみた。チャットがフランス語になっているのが確認できるかと思う。この状態でも、基本的なインターフェイスは日本語のままなのは助かる

荒廃した世界の雰囲気にハマってしまうこと間違いなし

通常、ストラテジーゲームにストーリーが用意されていることは少ないので、その点を考えると圧倒的にストーリーの比重が高いことが独特であり、特に原作を知っていればよりいっそう本作を楽しめる。

その一方で、難易度は高め。序盤は資材不足などの手詰まりに陥りやすい。最初のうちはストーリーを進めるより、町の拡張に重点を置く方がいい。ストーリーで収得した資材も、町に保管場所が無ければ、むだになってしまうからだ。ちょっとクセがあるものの、独特なBGMやダークなストーリーなど、この世界観の魅力は他に類を見ないものだ。リビングデッドが好きなら、あるいはサバイバルものが好きなら、理想の世界と言えるだろう。

  • 使用した端末機種:iPhone 6 Plus
  • OSのバージョン:iOS 8.4.1
  • プレイ時間:約4時間
  • 記事作成時のゲームのバージョン:1.8.321628(81-15)
  • 課金総額:0円

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