[黒川文雄のゲーム非武装地帯] 第33回: アメリカのスマホ事情

Eye

2年ぶりにアメリカの地を踏むことになった。前回は2015年6月開催のE3(Electronic Entertainment Expo)の見学調査と、自身が日本語版をプロデュースした『ATARI GAME OVER』特典映像の製作のため、ロサンゼルズでATARIの共同創業者のひとり、ノーラン・ブッシュネル氏にインタビューをしたときだ。

SVVR 2017

今回はSVVR(Silicon Valley Virtual Reality)エキスポ2017という展示会に出向いた。このイベントでは、VR系デバイスやコンテンツ、アトラクションの展示が行われ、今後のVR系マーケットを占う先進的なイベントといえる。

開催地はサンノゼという、サンフランシスコから車で約1時間のところ。穏やかな気候と街自体がゆったりとした雰囲気に包まれており、展示会と新興企業のなど誘致促進に積極的な土地である。

SVVRでの収穫や知見は機会を改めて案内したい。今回は、アメリカでのスマートフォンの市場やユーザー嗜好などを紹介しよう。

アップル人気は日本と変わらない……!?

今回の渡米では、スタンフォード大学への見学を行い、一般ユーザーと学生たちがどのような感じでスマートフォンを利用しているのかが部分的ではあるがわかったような気がする。

生前ジョブズがよく通ったという、パロアルトにあるアップルストアを見学。ガラス張りの円形の屋根が特徴的であり、大半は地元の顧客というよりも観光客と思しき客層である。ここでも『スーパーマリオ ラン』がイチ押しのコンテンツと思われ、壁面のディスプレイにもマリオが踊っていた。

※写真はパロアルトのアップルストアではありません

商談で出会った現地の人々や、現地のシェアオフィスで働くスタートアップの人々が使用するスマートフォンは全員がiPhone。例外はいない……。そして、使用しているノートPCはMacBookだ。

日本風にいえば「意識高い系」といわれるのだろうが、なんともカッコイイのはここがアメリカだからだろう。日本では不釣り合いなV8のマッスルカーがアメリカで映えるのは土地柄、スケールとのマッチといってもいいと思う……。そう、ここはアメリカなのだ。

日本とアメリカのスマホゲームのスケール

つい最近のことだが、とあるスマートフォン向けのインディーズゲームの売り上げレポートを見る機会に恵まれた。

レポートによると、配信開始から1年でiOSとAndroidの両方で1億円超えの売り上げだった。

世界での販売比率だが、全体を10として見ると、アメリカ:4、日本:3、欧州とアジア:2、その他地域(アラブ、アフリカ系など)で1という割合であった。

日本の比率が大きいことにも驚かされるが、欧州やその他国の数値が大きかったことも予想外だった。まさに、チリ・ツモ(ちりも積もれば山となる)とはよくいったものだ。

全体のシェア比率だけではなんとも判断しにくいが、たとえばそれを人口比率で数値化したらどうだろうか。現在の日本の人口は「人口統計」から1.2億人といわれている。

そして、アメリカはと言うと3.1億人といわれている。ちなみに人口がいちばん多い州は、カリフォルニア州といわれている。その数、約3,700万人という。1人あたりのゲームの売り上げでは圧倒的に日本の数値が高いことがわかる。

ちなみに、とある著名な日本のゲーム雑誌の市場調査資料によると、2015年の世界のモバイルゲーム市場は計3.6兆円、日本は9,454億円で世界1位。2位のアメリカは8,737億円となっており、人口比率で単純な割り算をすればおわかりいただけるだろう。

交通事情の違い

ここからはアメリカ、特にサンノゼとサンフランシスコを例にとり、アメリカ事情を俯瞰してみたい。

まず、考えられるのは交通事情の違いだ。サンノゼ、サンフランシスコは7:00~8:00台には、フリーウェイの渋滞が始まる。通勤に20kmくらいの移動は当たり前のことだ。もっと離れた地から通っている住人も居るという。また、帰宅ラッシュ時間は16:00~17:00には始まり、フリーウェイの本線はもちろん出口への渋滞も日常茶飯事。

つまり、移動時間にゲームをするような環境ではない。

では、電車やバスの利用者はどうか? といわれれば、都市部でそれらの交通機関を使う顧客層は実際には低額所得者が多く見られ、スマホのユーザーというには及ばず、携帯電話そのものを持っていない客層でもあることを考慮しなければいけない。

ちなみに、サンフランシスコでは駐車違反の取り締まりが厳しく、街角のパーキングメーターも2分遅延しただけでも、違反金が70ドルほど発生するという。

今回は私の海外旅行初という、レンタカーがレッカー移動の憂き目にあった。違反金は500ドル(5万円ほど)、日本の駐禁違反金がやさしく思えるのは私だけではないはずだ。

話が逸れたが、日本とは異なり、移動時間の暇つぶしにゲームをプレイしたり、移動時間に攻略やプレイヤー連携を行うような環境の素地はここアメリカには少ないといっていいだろう。

住宅事情の違い

一方、住宅環境はどうかといえば、もちろん日本より広い敷地面積を保有している。

しかし、ここ10年のサンフランシスコの異常とも思える家賃と生活物価の上昇によって、ややバランスを欠くような生活スタイルの変化も起こっている。

だが、間取りも広く、余裕があり、ゲームをコンセントに差したままという家庭も少なくない。つまり、一般的な家庭用ゲームハードやPC系ダウンロードゲームも未だに家庭の中できちんとポジションがあるといっていい。

あといえることは、スマホを家で遊ぶというプレイスタイルが日常化しているという。移動中ではなく、家で集中してスマホゲームをプレイするというものだ。

最後は文化習慣の違い

海外でスマホに集中して外を歩いていたら、最悪の場合、ひったくりに合うのが関の山だろう。街はそれだけ物騒なのだ。

私の知人も海外に赴任して長いが、長男がハイスクールのころ、iPhoneで音楽を聞きながらの帰宅途中にスマホを地元の不良に盗られ、すぐさま質屋(ポーンショップ)に売られてしまったという。

日本とは根本的に慣習や民度は異なる。ゆえに、まず「(ゲームし)ながらスマホ」「歩きスマホ」というスタイルはあり得ないのだ。

今回、サンノゼ、サンフランシスコの邦人を問わず、現地で聞いた限りだが、ゲームは家で空き時間にする程度というユーザーばかりだった。こちらが期待していた答えとは異なり少々残念な結果だった。

以上の3点(交通事情、住宅事情、文化事情)が、日本国内と大きく異なる。つまり、通勤・通学が大変だとか、住環境が遠距離かつ、狭くて劣悪だとか言われながらも、個人が自分のスタイルでゲームやエンタテインメントを楽しめる自由な国といっていいだろう。

最後にサンノゼ、サンフランシスコ周辺の若者や家族生活を営む人々がどんなアプリ(ゲームを含む)を使っているのかを聞いてみた。

日本でも知る人ぞ知る配車サービス『Uber』、Uberにチップ制を設けた『Lyft』などが一般的だという。保育圏からの送り迎えをシェア、オーダーするアプリもあるという。

また、家籠(こも)りの一端かもしれないが、日本でもおなじみのデリバリー統合サイト『DoorDash』というサービスもあるという。

スマホゲームのヒアリングをしようと思ったが、ついぞ口をついて出たのは実用生活に必要なものばかりだ。なんとなく、今のアメリカの閉塞感あふれるときを象徴しているような気がする。