ヒット作を生み出すチームファーストな組織体制とは?
本セッションに登壇したのは、SupercellのGame Leadを務めるTimur Haussila氏。
『Hey Day』や『Boom Beach』といったSupercellのタイトルの開発を率いた経歴の持ち主で、「Supercellのゲーム開発アプローチ」と題し、Supercellの組織作りや開発のプロセスを紹介した。
Haussila氏は過去、Digital Chocolateスタジオという当時AppStore向けのゲームを開発していた会社に勤めていたとのことだが、そこでは創業者やトップマネージャーがマーケティングの在り方を決め、他の人はそれに従うというカルチャーだったそうだ。
言い換えると、会社を工場のようにオペレーションしていたイメージに近く、意思決定が上司にあるため、ゲームの開発を始めるにあたり100ページにも及ぶドキュメントを用意し、マーケットを予測しビジネスケースをプレゼンする必要があったとHaussila氏は語った。
そこにクリエイティビティは必ずしも必要ではなく、独創的すぎるとかえって理解を得られず、GOサインが出ない結果になってしまうのだ。
このように管理者が現場をコントロールする組織では、開発に携わる個人の当事者意識が薄れてしまい、ゲームのためではなく上司のために仕事をするようになり、結果的にゲームのクオリティは落ちてしまうとのこと。
これに対し、Supercellでは、主な意思決定を下すのは開発チームのリーダー、つまり開発者自身に決定権があり、デベロッパー自身が重要な意思決定を行うことで、スピード間が高まり、より良い選択ができるようになるそうだ。
Supercellの経営者の役割は、チームの仕事の内容を拡張することにあり、適した環境を与えることだという。
名作は共有された優先順位によるチームの意思決定から
また、複数の開発チームが存在するSupercellでは、すべての社員が下記の優先順位を共有している。
- Supercell(会社)
- Team(チーム)
- Individual(個人)
例として、2015年にカナダでテスト配信をした『Smash Land』は、収益性も好調でHaussila氏もお気に入りのゲームだったが、この先何年にもわたってSupercellのリソースを充てるに値しないと判断したことから、グローバルで展開する前にサービスを終了する結果となったことが紹介された。
その後、Supercellが『クラッシュ・ロワイヤル』をリリースした際に、会社にとって最高のインパクトをもたらす可能性を見出し、『Smash Land』のチームはしばらくは『クラッシュ・ロワイヤル』に協力するという運びになったそうだ。
もちろん、意思決定はチームによってされるが、チームがSupercellを最優先したからこそ、このような判断にいたったという。
Supercellにとってプラスになることが、個人としてもプラスになると信じているとHaussila氏は語った。
さらに、Supercellのグリーンライトプロセス(ゲームの開発を続けるかどうかの判断)について、次の図を使った紹介へセッションが展開する。
Supercellでは、ゲームをデザインし、特徴となる要素を実装、その後テストをして結果の分析へ移る。
結果の分析後、グリーンライト(GOサイン)が出れば開発は継続するのだが、このサイクルを続けていき、ゲームを完成まで近づけていく。
継続か否かもチームが判断するそうで、『クラッシュ・ロワイヤル』は当初、CEOからはリアルタイムPVPは流行らないといわれていたそうだが、チームは続行を決意。
フィードバックから得られた問題を修正し、今日まで至っているのも、経営側の判断ではなく、チームの意思決定による結果といえるだろう。