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『HIT』企画チームリーダーが語るグローバル展開の事後検証レポート【NDC17】

韓国での先行配信を経て、2016年にグローバルでサービスを開始したアクションRPG『HIT』。NDC最終日の4月27日に行われた、『HIT』のグローバル展開における事後検証セッションをレポートしていく。

ゲーム文化の違いがグローバルサービスの妨げに?

『HIT』といえば、2015年11月に韓国で先行配信され、2016年7月に140ヵ国で配信というグローバルな展開をするタイトル。日本では、2016年12月よりサービスを開始した。

Unreal Engine 4による最高レベルのグラフィックや打撃感や爽快感を味わえるアクションで人気を博している。

事後検証の発表を行ったのは、『HIT』の開発を手掛けるNAT Gamesで、本作のグローバル企画チームのリーダーを担当するキム・ドングン氏。

ドングン氏は、過去にNCSOFTで『タワー オブ アイアン』のレベルデザイナーを務めた経歴を持っている。

本作のグローバル版は、すべての配信国で同じバージョンを提供するワンビルドでサービスされているが、サーバーはアジア、ヨーロッパ、北アメリカの3カ所に構えているのがグローバル展開における特徴の1つめ。

言語は現在11種類に対応しており、2017年下半期には1言語が追加対応される予定とのことだ。

各サーバーでプレイするユーザーのデータから、特徴的なものが紹介された。

こちらは、キャラクターの作成数が各サーバーでもっとも多い国。左から、アジアはタイ、ヨーロッパはデンマーク、北アメリカはアメリカがもっとも作成されている。当然、これらの国ではDAUも高くなっている

こちらの国は、各サーバーの売り上げトップ。台湾、フランス、アメリカでの売り上げが好調のようだ

続いて、HITに実装されている5人のキャラクターの作成数がサーバー別に紹介された。

アジア圏では、ルーカスがもっとも多く使用されており、僅差でヒューゴが2位につけている。

3位以下は、アニカ、キキ、レナの順に女性陣が並ぶが、遅れて実装されたレナはやはり群を抜いて少ない状況となっている。

ドングン氏の予想では、キキがもっと使われると思っていたそうだが、現状はこのような並びに

ヨーロッパ圏と北アメリカでは、ヒューゴとルーカスの順位が入れ替わるも、アジア圏とほぼ同じような構図を示している。本作のキャラクターに関しては、国・地域によって好みの差はあまりないということだろうか

しかし、プレイヤーのレベルによって好みのキャラクターが異なるようで、上位プレイヤーのキャラクター作成数を見ると、どのサーバーでも、全体ではもっとも少ないレナがいちばん多いというデータが確認できたという。

グローバル版リリースから約4か月後に実装されたレナがどのサーバーでもトップ。ドングン氏は、追加キャラクターであること、性能が優秀であることが理由であると分析している

売り上げがもっともよかったアバターはハロウィンとのこと

次に紹介されたのは、1ヵ月間の売り上げの推移。

韓国では、月初に売り上げが伸びる傾向にあったが、ヨーロッパや北アメリカには見られない動きであるそうだ。

また、本作は月間で2~3回のアップデートを実施しているが、アジア圏ではアップデート直後に売り上げが増加していることも注目すべき点だろう。

アップデートに反応を示さないヨーロッパや北アメリカのユーザーは、システムやコンテンツが追加されることに疲れを感じるためか、不安の声が挙がっているのだという。

これに対し、アップデートの頻度を下げると、今度はアジア圏のユーザーから、コンテンツの追加が遅いという不満が出てきてしまう。

こうしたゲーム文化の違いが、グローバル展開の難しさを生む一因となっているのだろう。

成功のためにやってきた努力の数々

続いて、本作をグローバルで展開する上で、リリース前に行った努力について説明が進行。

まず挙げられたのが、文字表記の問題だ。

タイ語やトルコ語は、メニューの表記が長くなってしまうという問題が起きてしまったそうだ。

複数行で表現することや、文字スケール(大きさ)の調整により解決に向かったが、それでも対処できない場合は、翻訳を見直したとのこと。

ホーム画面上のボタン類のテキストは、長すぎるとまともに読むことすらできなくなってしまう。『HIT』に限らず、初めてホーム画面を見た時の印象で、そのゲームをプレイする気がなくなってしまった人も多いのでは?

また、140ヵ国に向けてサービスしているため、時差の問題が発生した。

レイドボスなどの、オープンする時刻が決まったコンテンツがいくつか実装されているが、接続するサーバーによっては、その時刻とプレイヤーの住んでいる国の時刻のズレが生じてしまうのだ。

これについては、デバイス側で時刻を計算するようにして対応。ゲーム内で表示される時刻を信頼できるようになったのだ。

最後に上げられたのは、データダウンロード時の離脱率について。

『HIT』は必要なデータ容量が大きいゲームのため、アプリインストール後、初回起動時のデータダウンロードに時間がかかることは避けられない問題。

リリースされた当時は、ダウンロードを待っている時間は、イメージ画像が表示されるだけの退屈な時間だったため、ゲームを始める前にプレイすることをあきらめてしまうのだろう。

対策として、漫画を表示するようにしたが、なかなか改善には至らなかったという。

最終的に映像を再生するようにしたところ、驚くほどの改善が見られたらしく、ドングン氏は、グローバルワンビルドのゲームを作る開発者に対し、待ち時間にムービーを使用することを強く進めた。

ダウンロード画面の推移がスクリーンに映し出された。長い時間見ていられるムービーがもっとも離脱防止に効果的なようだ

『HIT』2017年度の目標

ドングン氏は最後に、2017年度の目標を発表。

9ヵ月間のグローバルサービスにおいて、さまざまな指標が韓国版の9ヵ月よりも低いのは事実と認めつつも、その中で希望が持てる指標があり、新規ユーザーの流入数は300%も高い数値を示している。

その新規ユーザーを離脱させない施策が重要だと考え、対策をするようだ。

また、ダウンロード数は1,000万以上を記録したが、アクティブユーザーはその半数の500万人ほどだという。

残りの500万人は、上で述べられたデータダウンロード時に離脱してしまうユーザーだとし、引き続きムービーを利用しつつも、分割ダウンロード機能や外部ストレージ対応、容量の圧縮、ムービーに代わるコンテンツを表示、といった方法を考えているとのこと。

さらに、これからは、グローバルな嗜好に合ったコンテンツやアバターを検討していきたいと、グローバルで成功を収めるための姿勢を見せつけた。

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