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Androidゲームプラットフォーム「BlueStacks」CEOが語る日本ゲーム市場のトレンドと事業戦略

PCの大画面でスマホゲームをプレイできるツール「BlueStacks」を提供するBlueStacks SystemsのCEO、Rosen Sharma氏が来日。この度、Bluestacksのプラットフォーム戦略や氏が分析する日本市場の現状を聞く機会を得たので、その全貌をまとめていく。

世界初のAndroid N対応PC向けプラットフォーム「BlueStacks +N」が始動

PCでAndroidアプリを動作させることができるゲーミングプラットフォーム「BlueStacks」。

最新版の「BlueStacks 3」は、対応アプリや動作品質、タッチ操作をキーボードに割り当てるキーマッピング機能など、スマホ向けゲームをPCでも快適にプレイすることができるソフトウェアだ。

スマホ向けゲームも、最近はリッチなグラフィックを多用したタイトルが多く、BlueStacks 3を使ってPCの大画面で遊ぶことで、その迫力をより感じることができる。

現在、BlueStacksの最新版となる「BlueStacks +N」のベータテストがスタートしており、公式サイトよりダウンロードできる。

Android 7 Nougatで動作する唯一のPC向けAndroidアプリプラットフォームとなっており、より多くのゲームタイトルへの対応、CPU使用率や速度などのパフォーマンス改善がなされているという。

「BlueStacks +N(ベータ版)」動作環境(公式より)

必要動作環境

  • OS:Windows
  • プロセッサー:BIOS内で仮想化拡張機能(VT)が有効になっているIntelプロセッサー(まもなくAMDプロセッサーに対応)
  • RAM:4GB
  • HDD:4GBのディスク領域
  • ご利用パソコンの管理者である必要があります
    Microsoftまたはチップセットベンダーの最新グラフィックス・ドライバー
    BlueStacks N Betaは最低システム要件を満たすシステムで動作します

推奨動作環境

  • OS:Windows 10
  • プロセッサー:BIOS内で仮想化拡張機能(VT)が有効になっているIntel Core i5-680(passmark 3500)以上のプロセッサー
  • RAM:6GB以上
  • グラフィックス:Intel HD 5200(passmark 750)以上
  • HDD:SSD(またはfusion)
  • インターネット:ゲーム、アカウント、関連コンテンツにアクセスするブロードバンド接続

今回、BlueStacksを提供するBlueStack SystemsのCEO・Rosen Sharma氏が来日。

BlueStacks +Nの詳細や、今後の展開について聞くことができた。

BlueStack Systems CEO Rosen Sharma氏

停滞するモバイル市場と海外勢の隆盛

現在、100カ国にユーザーがいるというBlueStacks。PCゲーム市場の成長が著しい中で、Bluestacksも好調な結果を残している。

その成長には2つの側面があり、ユーザーの”数”と”質”が挙げられた。

BlueStacksは、毎日20万人ものユーザーを増やしている状況で、累計のインストール数は、昨年末で2.5億を達成。

世界中の人々から利用されており、驚くことに南極にもユーザーがいるというエピソードが語られた。

これにはSharma氏も相当驚いたそうで、そのユーザーに直接コンタクトを取ったところ、アメリカ出身の消防士のBlueStacksユーザーだった。仕事の都合で半年おきに南極に行くため、その際に南極でBlueStacksを使っているのだという。

ユーザーの質については、BlueStacksユーザーのARPUに現れており、通常のモバイルゲームユーザーと比べて5倍ほど高い数値とのこと。

※ARPU:ユーザー1人あたりの平均売上金額

つまり、メーカーにとって収益を得やすい魅力的なプラットフォームと言えるわけだ。

すでにメーカーとの取り組みも数多く例があり、世界でトップ50に入るメーカーのうち、30社ほどと取引をした実績がある。

1つの例では、日本でも人気を博すNetmarbleの『リネージュ2 レボリューション』において、グローバルに展開する際のプロモーションで協業したという。

他にも、NEXON、NetEase Gamesなどといった有力モバイルゲームデベロッパーとさまざまな取り組みをしており、BlueStacksがワールドワイドなプラットフォームであるという強みがビジネスに寄与している。

上記のようにBlueStacksはグローバルに展開しているわけだが、Sharma氏から見て日本の市場はどう映るか。

いわく、日本はBlueStacksにとって非常に重要な市場でありながら、速いスピード感で変化しているマーケットだという。

そんな日本のゲーム市場について、3つのトレンドを教えてくれた。

1つめは、2月に入って日本eスポーツ連合(JeSU)の発足、プロライセンスの発行、闘会議での賞金大会など、話題に事欠かないe-Sportsの盛り上がり。

ライセンスの是非や賞金大会の法的問題など、連日のようにさまざまなメディアで取り上げられているe-Sportsだが、その発展とともに、PCゲームが日本においてよりメインストリームになっていく可能性があると見ているようだ。

2つめは、モバイルゲームの市場が飽和状態にあること。

韓国でも同じ状況にあるとのことだが、以前のような成長が見られない状況にあるという。

『パズル&ドラゴンズ』や『モンスターストライク』など、数年前から人気のタイトルが地位を確立しており、新しいタイトルが入り込む隙がないのだ。

その反面、モバイルゲームの開発にかかるコストは増加の傾向にあり、膨大な開発費を補うためには、コンテンツを複数のプラットフォームに展開する必要があると氏は語る。

それを先駆けてやったゲームの1つとして、Cygamesのトレーディングカードゲーム『シャドウバース』を例に挙げた。

リリース当初はスマホ版のみだった『シャドウバース』だが、現在はDMM GAMESやSteamといったPCゲームプラットフォームにも展開。こうした動きは、最近のトレンドだという

3つめは、海外デベロッパーの日本市場展開。

2017年から活発になったムーブメントで、中国や韓国のメーカーは、日本向けにローカライズしたタイトルを次々に投下してきているのだ。

『荒野行動』『アズールレーン』『リネージュ2 レボリューション』といったタイトルが日本でもヒットしており、BlueStacks上でも非常に人気を博している。

『リネージュ2 レボリューション』はPCでのプレイに適したタイトルの1つ。実際にBlueStacksでプレイするユーザーが多いようだ

この傾向は、これからも加速していくと氏は予想しており、日本のゲームメーカーにとっては脅威となるが、スピーディーに動くようプレッシャーを与えているという意味では、良い影響を与えているとも考えているとのことだ。

そんな日本市場に展開するにあたり、Sharma氏はメーカーやユーザーとの信頼関係を大事にしている。

BlueStacksの公式サイトでは「PCでAndroidゲームを快適にプレイできるゲームプラットフォーム」という表現をしているのだが、平たく言うとAndroid OSをWindows上で動作させるエミュレーターだ。

日本においてエミュレーターと聞くと、チートを使うために利用したり、コンソールゲームを違法ダウンロードしてプレイするために使われてきた歴史がある。

そのため、エミュレーターについて悪いイメージを持っている人は一定数存在する。

BlueStacksでは、チートは違反行為であるとし、チートユーザーを検知してメーカーに共有する取り組みを行っているという。

ユーザーを取り締まるのはメーカーの役目だが、悪質なユーザーの特定までをサポートしているという立場と言えるだろう。

最近はあまり聞かれなくなったがroot化も禁止事項としており、見つけた場合は利用をブロックしている。

こうした、健全なゲーム環境の提供をサポートすることで、メーカーとの信頼関係を築いているのだ。

また、タイトルによってはBlueStacks上でインストールすることを制限している場合もあるが、それもメーカーの意向に従う方針で展開している。

逆に、メーカー側がBlueStacksでの提供を想定して、通常のモバイル端末のユーザーとはサーバーを分けている例もあるとのこと。

スマートフォンとPCでは、ディスプレイのサイズや操作感が大きく異なるため、サーバーを分けることで、ユーザー間の公平性を保っているのだ。

高度な技術力で実現した互換性とNougat対応

現在ベータテスト中の「BlueStacks +N」では、Android 7 Nougatをサポート。これにより、より多くのゲームタイトルが動作し、パフォーマンスも向上している。

これを実現するにあたり、BlueStacksは高度な技術力でもって開発にあたっているという。

AMDやIntel、Qualcommなど、名だたる企業が株主となっていることも、その技術力の高さを裏付けている。

BlueStacksでは現行のバージョン「BlueStacks 3」でさえ、ストアに配信されている95%のタイトルが動作するというが、スマートフォン・タブレット端末でもきちんと動作しない場合があることを踏まえると、PC上で高い互換性を実現していることもその技術力あってのことだろう。

技術レベルはBlueStacks最大の強みでもあり、その技術を盗んで同様のプラットフォームを提供する中国企業があるとのことだが、そういったやり方では環境の変化が著しいモバイルゲームへ対応し続けることは、やがて限界がくるとRosen氏は話す。

また、現在はAndroidゲームプラットフォームを提供しているわけだが、2013年頃にはiOS版プラットフォームの開発も検討していたそうだが、ゲームアプリの大半はiOS/Androidの両OSでリリースされるため、今現在はAndroidゲームプラットフォームとして注力しているそうだ。

しかし、実行するPC側の多様性は広げており、数年前から更新が止まっていたMac版BlueStacksも現行のWindows版と同バージョンがリリースされている。

Android 7 Nougatに対応したものも近いうちにリリースする予定だという。

Mac向けBlueStacksの画面。Windows向けと同様のインターフェースで、いくつかのタイトルをプレイしてみたところ、安定した動作で遊ぶことができた

2018年のBlueStacksが仕掛けるプラットフォーム戦略とは?

Rosen氏から最後に、今後のプラットフォームとしての戦略が語られた。

1つは日本のユーザー向けに、海外のコンテンツを楽しみやすくするような機能の追加だ。

具体的にどのような機能になるかは明かされなかったが、海外のゲームをプレイしたいという日本のユーザーの需要に応えることを課題としている。

加えて、ゲームメーカーは前述したが開発コストの高騰という課題を抱えており、その解決策として複数のプラットフォームに展開することを挙げている。

ヒットしたタイトルは、ゲーム性を模倣した類似タイトルがすぐに市場に出回ることもビジネス的リスクを増大させている。

それに対し、モバイル向けゲームをより簡単にPC向けに展開できる技術「BlueStacks Inside(仮称)」を提供する予定。

これらの機能を提供することを、2018年の大きな戦略としている。

また、BlueStacksはDMMと提携、技術を提供し、DMM GAME PLAYER上でモバイルゲームが遊べるようにする機能を追加するため開発をしている最中だという。2018年春にはエンドユーザー向けのリリースの目途がつく予定だ。

DMMはゲーム事業を分社化したこともあり、これまで以上の自由度で事業を展開できると予測しており、今後もさまざまな取り組みできるので、と語った。

DMMの他にも、日本でゲームプラットフォームを運営している企業からアプローチを受けているとのことなので、スマホ・PCのマルチプラットフォーム展開は1つのトレンドになる可能性があるだろう。

また、Rosen氏が注目している日本ゲーム市場のトレンドである「e-Sports」については、BlueStacksが大会を開催することも今後の目標の1つとしている。

中国と台湾ではすでに開催した実績があるそうで、日本において実現できれば、e-Sportsシーンに新たな一石を投じることになりそうだ。

(C) 2017 BlueStacks name and logo are registered trademarks of Bluestack Systems, Inc.