Agar.io【ゲームレビュー】

三橋敬太
2015年07月24日

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マルチプレイ専用の『Agar.io』は、オンラインブラウザゲームとして人気を博していた同名のゲームをそのままスマートフォン向けに移植したアプリだ。誰でも手軽にプレイできるようになったことで、いっそう注目度が高まっている。

単純だからこそどこまでも奥が深い

『Agar.io』は、画面をタップするだけのシンプルな操作方法ながら、プレイに長時間没頭できる独特なシステムの多人数同時参加型アクションオンラインゲームだ。プレイヤーの目的は、タップした方向に移動する「細胞」を操り、自分よりも小さな細胞を捕食して、自分の細胞をどんどん成長させることだ。

本作はすべてオンライン対戦になっているため、シングルプレイは不可能。ゲーム中には他のプレイヤーが同時に存在しているので、食うか食われるかの展開が繰り広げられる。あふれる緊張感で、コアゲーマーもうなる絶妙な仕上がりとなっている。

ゲーム内の全プレイヤーはスコアに応じて、画面左上にランキング形式で表示される。このリストは常に公開されているので、高ランクなプレイヤーを集中的に狙うといった戦略も生まれてくる

弱肉強食の対人オンライン

ゲーム内では常に他の細胞がウヨウヨとうごめいており、当然ながら自分よりもはるかに巨大な細胞と遭遇することもある。そんな細胞に接触されると一瞬で取り込まれてゲームオーバーとなってしまうので、まずはちょっこまかと動き回りつつ、転がる雪玉のように徐々に大きくしていくことがポイントだ。

また、ある程度大きくなると、有用な2つのコマンドを使用できるようになる。1つは、細胞を2つに分けて自分の分身を飛ばし、遠くの細胞を取り込むというもの。もう1つは、細胞の一部を相手にぶつけて攻撃するコマンドだ。どちらも、それまでにためこんだ細胞を消費してしまうことになるので、使うタイミングを見極める必要がある。

画面右下のターゲットマークで、自身の身を削って相手を攻撃できる。乱用し過ぎると、どんどん小さくなっていくので、使用するタイミングは熟考の必要がある

巨大な細胞に囲まれると、逃走むなしく取り込まれてしまうことも。序盤はこそこそと動いて、体を大きくしていこう

手軽さに重きを置いたスマホ版

元々はブラウザゲームだったものをスマホに移植したことで、カジュアル感は飛躍的に増している。しかし、同時にいくつかの問題も発生しているようだ。まず、PC版ではマウスカーソルで細胞を操作していたのだが、スマホ版だと画面を指でタップする必要があるため、表示の一部をさえぎってしまう。これが意外と致命的で、とっさの回避が遅れてゲームオーバーという言うのしばしば発生する。

またPC版には、チーム戦をはじめとして、知り合いや友だち同士で遊べる機能がいくつか付いている。しかし、現時点（2015年7月）でスマホ版には実装されておらず、全体的にコンパクトな作りとなっている印象を受けた。

ただ、スマホでは手狭に感じるかもしれないが、タブレットであればこの問題を解消することができる。広い画面のおかげで、指が邪魔になったり、画面に表示される範囲が狭すぎると言ったことは起こらないので、PC版に次いで快適にプレイすることが可能だ。

画面の広さは一目瞭然。スマホ版では、画面外から急に巨大な細胞が現れ、吸収されてしまうといったことが多かったが、タブレットでのプレイでは画面が広い分、簡単に避けられる

新たに参戦する人も高ランクの人とわたり合えるゲームバランス

PC版とスマホ版の両方をプレイして、本作におけるゲームバランスは非常に絶妙なものになっていると感じた。ゲームの目的こそ細胞を大きくすることだが、はたして大きければ有利なのかと言われると、その限りではないからだ。

細胞が小さなうちは素早く移動できて、小回りも利く反面、大きくなっていくにつれて動きが鈍重になり、他の細胞を追いかけて捕食することが難しくなる。このシステムのおかげで、巨大な細胞も強敵ではあるが驚異ではなくなるのだ。そのため、新たに参戦する新規のプレイヤーも、既にプレイを続けていて巨大になったプレイヤーとの力の差を感じることなく楽しめるはずだ。

左側は、画面に一部しか映らないほど巨大な細胞。ここまで大きくなってしまうと、ほとんど身動きがとれなくなってしまう

課金要素が絡まないストイックな作品

少々の問題は抱えているものの、まずまずの滑り出しを見せたスマホ版『Agar.io』。本作には課金要素がいっさい用意されておらず、すべて自分の腕前のみで立ち回っていく必要がある。スキップできない広告ムービーが強制的に流されるなど、不自由な点はいくつかあるが、対人戦要素がこれほど強いゲームを完全無課金で遊べるのは1人のユーザーとして純粋にうれしく感じる。

難しい操作は抜きにして、多人数の細胞バトルを楽しみたい人にはイチオシのタイトルだ。