【ゲーム用スマホ選び2017年新春版】VR標準搭載スマホIDOL4は非ゲーマー向けモデル

フランス発のスマホブランドのアルカテルからは、VRゴーグルがパッケージされたスマホ「IDOL4」が発売中。低価格に抑えられながらも、独自の仕様が多数搭載された本機を徹底的にレビューしていく。

専用のVRゴーグルが付属したエントリーモデル

VR元年ともいわれた2016年、モバイル向けのVRデバイスが数多く発売され、本命のGoogleのDaydream Viewがアメリカで販売開始されたのも記憶に新しい。

そんな中、スマホを買うとVRゴーグルが付属するという新しい試みを打ち出してきたのが、アルカテルの「IDOL4」だ。

独自のVR用UIやアプリストア、3方向のリバーシブルを実現したデザインなど、34,800円(税抜き)という低価格ながら個性の強いスマホとなっている。

背面にもスピーカーを搭載したリバーシブルデザイン

本機は、ボタン類を除いて上下左右が対象なリバーシブル構造となっており、どちら向きに手に取っても使うことができる。

加えて、背面にもスピーカーを搭載しており、ディスプレイ面を伏せる形で置いても音声がこもらずオーディオプレーヤーとして利用することが可能だ。

前面だけを見ると、上下左右の見分けがまったくつかないデザイン。持った向きを認識して画面の向きが反転されるため、どの向きで使用しても自然と使える。もちろん画面の向きは固定することも可能だ

背面のスピーカー。具体的な利用シーンが想像しにくいが、伏せてもクリアなサウンドを再生してくれる

左側面には電源ボタン、右側面にはボリュームボタンと独自の機能を担う「BOOM KEY」というボタンを配置。上側面にはイヤホンジャック、下側面にはmicro-USBポートを備えている。

同時期に発売された機種がインターフェイスにUSB Type-Cを採用しているのに対し、本機はUSB micro-Bを採用。普及率や周辺機器との兼ね合いによる結果を思われるが、他社の状況を見ると見劣りしてしまうことも否めない

BOOM KEYのすぐ下に設けられたSIMスロットには、2枚のnanoSIMを挿入可能。ただし、同時待ち受けには対応しておらず、片方はmicroSDカードと兼用のスロットとなっている

5.2インチクラスということもあり、重量は軽めの136.8g。iPhone 7とほぼ同じ重量だ

ゴーグルは見え方の調整できない

付属するゴーグルは、IDOL4に最適化されており、装着すると自動的に専用のVRランチャーが起動するようになっている。

ゴーグルの底面には「決定」と「戻る」の入力をするボタンがあり、コンテンツの選択やVRゲームの簡単な操作が可能だ。

IDOL4がぴったりとはまるように設計されたゴーグル。IDOL4がリバーシブルデザインのため、装着するときも向きを気にしなくていい

VRランチャーを起動すると、「VRゲーム」や「VRギャラリー」といった項目が表示される。それにポインタを合わせて決定ボタンに触れれば各コンテンツにアクセスできるというわけだ。

工場出荷時は、VRゲームは何もインストールされていないため、ストアからインストールする必要があるのだが、本機専用のストアも用意されている。

VRランチャーの画面。端末内のコンテンツの他、VR映像の配信プラットフォーム「Littlstar」がプリインストールされており、さまざまな動画をストリーミングで視聴できる

VRストアでは独自のアプリが配信されているわけではなく、Google Playで配信されているVRアプリへのリンク集のようなもの

VRゴーグルとしての評価だが、ピントや瞳孔間距離の調整ができないのは大きなマイナスポイント。視力がよくない筆者には、裸眼では快適にコンテンツを視聴することができなかった。

ただし、クッション部分を取り外せばレンズとの間にスペースを広く確保でき、メガネをかけたまま使用することが可能だ。

クッションを外さずともレンズと顔の間には少しゆとりがあるため、一般的なサイズのメガネならそのままで使用できる

5,000円以下で購入でき、もっと使い勝手がいいVRゴーグルがたくさんあるので、このゴーグル目当てでIDOL4を購入するのはあまりおすすめできない。

また、試しにIDOL4以外のスマホをいくつか強引に装着してみたが、ゴーグルに搭載されているボタンが機能することはなく、流用することはできなかった。

ワンソース・マルチユースなボタン「Boom Key」

右側面に搭載された「Boom Key」は、一見するとただの電源ボタンのようだが、まったく異なる機能を持たせられるボタンとなっている。

設定メニュー内にて機能の割り当てをすることができ、たとえば画面オフ時に2度押しで写真撮影はダイレクトに行えるなど、普段使いで便利な存在となっている。

割り当てられる機能がこちら。ゲームのスクリーンショットを撮影する機会の多い筆者にとっては、スクリーンショットの撮影が最も役立った

インストールした任意のアプリを起動できるトリガーとして設定しておくのも非常に便利。特定のアプリを頻繁に利用する人にはうれしい機能だ。

画面がオンのときも2度押しや長押しなどで別の動作をさせると、さらに使いやすくなりそうだ。今後のシステムアップデートで機能が拡張されることに期待したい。

ベンチマークテスト結果

AnTuTu benchmark

ゲームの使用に耐えうるかを計るため、まずはAnTuTu benchmarkで総合的な性能を計測。

結果は、3万円代という価格帯とはいえ物足りない45,777。2013年に発売されたNexus 5の平均値よりも低い結果となった。

あくまでスコアでの比較になるが、同価格帯のHUAWEI P9 liteやASUS ZenFone 3などの方がスコアは高い上に、実際に使用しているユーザーからの評価も抜群に高い。

それらを出し抜くほどの魅力を付属のVRゴーグルやBoom Keyに見いだせるかが、購入するか否かのポイントとなりそうだ。

3DMark:Sling Shot using ES 3.1

3Dグラフィック性能は、3DMarkのSling Shot using ES 3.1を使用して計測。

AnTuTuの結果からも予想できたことだが、382という低スコア。FPSは一貫して低い数値で推移しており、3Dゲームの利用に懸念が残る。

同スコア帯には、ZenFone 2 LaserやHUAWEI P9 liteなどの格安スマホとして人気の端末と近いスコアとなっている

3Dグラフィックのゲームには不向き

ベンチマークテストの結果からも予想できたことだが、3Dゲームをプレイした際に、描写がスムーズではない場面が随所に見られた。

『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』の動作判定は3D標準となったが、高難易度の楽曲をプレイするには信頼に足らずといった動作レベルだ。

細かな動作に関して気にしなければじゅうぶん動作させることは可能。端末のサイズ的にはプレイしやすいので、スペックの物足りなさが余計に際立つ

今やスマホゲームでもリッチな3Dグラフィックを多用するゲームが当たり前となっているため、今購入して1~2年使用するには心もとない性能と言える。

いい点を挙げるとすると、前面と背面に計4つのスピーカーが搭載されているため、横画面のゲームをプレイする際にサウンドを聞き取りやすいところか。

他の端末との大きな差別ポイントであるVRゴーグルについても、市販のゴーグルと比較して特に優位点があるというわけでもない。

とはいえ、VRコンテンツを楽しむためのエントリーモデルとして、VRに興味があるがどのゴーグルを買えばいいか分からない人が手軽にVR体験をできる製品だ。

ブラウザやメールなど、非ゲームアプリの動作は若干もっさりとしている程度で、普段使いに耐えうる使用感。

Boom Keyの使い勝手が想像以上に心地よいため、ゲームをあまりプレイしない人には購入候補になるだろう。

ただし、リバーシブルなデザインとBoom Keyによる独特な使用感があるため、家電量販店やMVNOの店実舗で実際に手に取って試してみてほしい。

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