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コーエーテクモゲームスの30年で培われたIP創造手法【NDC17】

コーエーテクモゲームスの越後谷 和広氏が登壇したセッションでは、同社の「IPの創造と展開」をテーマに講演が行われた。『真・三國無双』など、多くの人に定着しているIPが生まれた経緯なども語られた本セッションの模様をお届けする。

『三國志』から『真・三國無双』へ……。今なお続くIPの創造と展開

本セッションでは、1978年設立以来、約30年にもわたり、独自のIPを創造、展開し続けてきたコーエーテクモゲームスにとって、IPとはどういったものなのか、さらにはそのIPを生み出す秘訣がテーマとなった。

スピーカーは、1990年に同社に入社後、コーエーテクモゲームスと歩みを共にしてきた越後谷 和広氏。『真・三國無双 Online』などのプロデューサーを務めた経験の持ち主で、現在は『三國志』IPプロデューサーとして活躍する人物である。

コーエーテクモゲームスは昨年、IPを軸にしたブランド制という組織体系となり、

  • シブサワ・コウ
  • ω-Force
  • Team NINJA
  • ガスト
  • Ruby Party
  • midas(2017年度より)

上記の6ブランドそれぞれが、いくつかのIPを抱えているという構図だ。

各ブランドごとに、複数のIPを所有しており、昨年発売された『仁王』など、新規IPの創出も常に行われている

IPの創造と展開とは、同社の経営方針であり、『三國志』などの歴史あるIPの新作はもちろん開発をしているが、同時に新しいIPを作る動きが常にあるのだという。

その結果生まれたのが、『討鬼伝』や『仁王』といった新しいIPたちというわけだ。

IPと聞くと、その世界観やキャラクターに目がいきがちだが、コーエーテクモゲームスにおけるIPとは、ゲームシステムやサウンドといった部分までを含めてIPと捉えて制作に尽力しているとのこと。

このIP創造の精神は『三國志』シリーズから続くものだ。

展開という部分では、他機種への移植といったプラットフォーム展開、ゲームジャンルの展開、コラボ展開といったさまざまな意味合いが込められており、そうした展開の中で新たなIPが生まれていくのだそうだ。

越後谷氏はその例として、『真・三國無双』や『戦国無双』が生み出された経緯を紹介した。

1985年に『三國志』が発売されてから、続編の『三國志Ⅱ』『三國志Ⅲ』などを次々に開発しながらも、1992年にはゲームボーイ版『三國志』が登場。

この当時から、広がりのあるIPにしていく動きが見られるのは実に興味深いところだ。

そして、『三國志Ⅳ』『三國志Ⅴ』の頃になると、とあるチームが「謎の『三国志』」を作っているのを見かけるようになったという。

その作品が、シミュレーションRPG『三國志英傑伝』だったそうだが、これが同社にとって初となる、別ジャンルへの展開が行われたのだ。

「英傑伝」シリーズはその後も新作が開発され、1998年には『三國志曹操伝』が発売。越後谷氏によると、この頃には『三國志』とは別のIP、「英傑伝」シリーズとして成立していたそうだ。

次にジャンル展開が訪れたのは、1997年に発売された、3D対戦格闘ゲーム『三國無双』である。

越後谷氏は、「創造し展開をする、そしてさらに創造する、という流れがこの頃すでにできていた。」と、コーエーテクモゲームスにおけるIPの歴史を振り返った。

2000年代に入ると、すべての始まりである『三國志』シリーズにも変化が表れはじめた。

『三國志Ⅶ』では、全部将プレイを導入。1人1人の武将の視点でプレイすることができるようになった。

ナンバリングタイトルでありながら、過去作とはまったく別のゲームと言っていいゲームになったという。

社内では賛否両論だったそうだが、今までにないゲームシステムが好評を博し、売り上げ的にも成功を収めた結果となった。

また、同時期には『三國無双』チームにより『真・三國無双』が登場し、2作目でミリオンを達成。完全に新しいIPとして確立された。

その一方で『三國志』シリーズの展開は止まることなく進行し、2002年には『三國志戦記』、2010年にはモバイル向けソーシャルゲーム『100万人の三國志』、2016年には『妖怪ウォッチ』とのコラボ作品『妖怪三国志』、ネクソンとの協業作である『三國志曹操伝 Online』(国内未配信)など、IPの展開は今なお行われている。

まとめると、

  1. 新しいIPを創造
  2. そのIPをさらに展開する
  3. その中でさらに新しいIPを生み出す

この連鎖により、数多くのIPが創造されてきたと、越後谷氏は総括した。

ユニークさの追求が新たなIPを創る秘訣

では、IPを作る秘訣は何なのだろうか。

『真・三國無双』や『戦国無双』など、成功したIPで越後谷氏が感じたのは、キャラクターが個性的でシステムがユニークであること。

三国志や戦国時代の武将は、コーエーテクモゲームス自身も含め、すでにさんざん描かれてきたためイメージが根付いている。

そのイメージとは別のキャラクターとして、独立して存在することが重要なのだという。

そして、キャラクターと合わせて、システム面もユニークでなければならない。

『真・三國無双』は、プレイヤーのアクションが他の軍の動きを左右する、戦略性のあるアクション(タクティカルアクション)という独自のシステムを構築し、プレイヤーに受け入れられた。

『戦国無双』では、そのタクティカルアクションを継承しつつ、アクション面を変更し、必殺技も「無双乱舞」から「無双奥義」へと変化。ボタン連打で一掃するものから、切れ味のするどいクイックアクションを構築した。

その結果、『戦国無双』は『真・三國無双』とは別のゲーム性を持つアクションゲーム、つまり新たなIPとして確立されたのだ。

越後谷氏は、「キャラクターを変えただけでは、別のIPとして成立せず、スピンオフにとどまっていたかもしてない」とコメントし、ユニークなシステムの重要性を説いた。

これから新たなIPを生み出そうとしている企業に対しては、「IPとして確立するには、展開が重要だと思います。他のIPとのコラボまでいったときに、代り映えしないようなら、そのIPの力はそこまでではないか。逆に言うと、いろいろな展開をしても、オリジナリティが成立するまでのユニークさを追求していただければと思います。」とエールを贈りスピーチを締めくくった。