グラフィックとギミックに酔う、名作脱出ゲームの最新作
昨今、インターネットの発達で世界が狭くなった感があるが、海外でリリースされた作品をリアルタイムで遊べるというのもその恩恵の1つだ。その分、日本語ローカライズがされてない作品もあって、前よりいっそう英語力が必要だったりするのだが……。ちなみに近い将来、優秀な翻訳エンジンが開発されて、英語の勉強なんて必要なくなると思っているので、筆者は相変わらず英語が苦手のままである。
ところが、ここのところ日本語非対応タイトルのレビュー依頼が多く来ており、付け焼刃な英語ではなかなか困ることも多い。中高生時代にフランス語教育を受けていたので、英語教育はからっきし。三人称、単数、現在形の動詞に「s」が付くというのを高3で知ったほどの英語音痴なのだが、本作『The Room Three』はそんなダメダメな英語力でも大いに楽しむことができた。
難易度は高めだが、それだけの価値はある
一応、本作は脱出ゲームに分類されるのだが、細かなステージを次々とクリアしていくタイプではなく、大きなステージで謎を解きつつ進めていく昔ながらのアドベンチャーゲームである。ただ、会話を行うような人物は登場しないので、細かなストーリーはわからなくても何とかなる。
謎は概ね、2~3の部屋を行き来することで解決しなければならない。存在するギミックと手持ちのアイテムから、その組み合わせや動かし方を想像していくのだが、一部を除いて動かす順番は決まっている。また、動かせるものは画面で拡大できるので、何が動かせるかについて悩むことはないだろう。まれに、思わぬ物が動かせたりするのだが……。
ちなみに、ほかの脱出ゲームに比べると難易度は高めになっている。それというのも、いわゆる伏線の回収が必要になったりする場面が存在するため。その分、忘れていたヒントが目の前の謎につながったときのカタルシスは、なかなかのものである。
「小」と「大」が入れ子になる不思議な世界
説明が難しいのだが、ギミックの中には、アイテムのレンズを使って模型の中などに入れ込むものがある。この感覚がちょっと不思議で、取得したアイテムは大きさに関係なく、ハマるべきところにハマる。アイテムを手に入れた場合は常識にとらわれず、移動できる場所の中から、使えそうな場所に使ってみるといい。
また、移動できる部屋は数部屋で1つのブロックになっており、大きな仕掛けを作動させないと次のブロックには移れない。そして手に入れたアイテムは、そのブロックの中で使い切ることが前提になっている。つまり、手に入れたアイテムが余るようなら、どこかに動かしていないギミックが残されていることになる。これは覚えておくと便利な知識だ。
美麗とは、こういうことさ
何といっても本作は、美麗なグラフィックこそが最大のウリである。音に関してはSE以外に特にないので、とても静かなもの。その分、映像の美しさは特筆すべきものとなっている。精緻、精密なだけでなく、謎を解き明かすことで稼働するギミックの細密な動きにもワクワクする。
色彩のデザインも過度に刺激的なものにいはなっておらず、見えるべきものがしっかり見えるバランスがちょうどいい。なお、BGMがないためにギミックの稼働音がはっきり聞こえるのだが、これが細かな動きと相まって、なかなかどうしてキッチリカッチリ気持ちいい。
多人数で遊ぶとさらに楽しい
TVのモニターで遊ぶタイプの家庭用ゲーム機では、プレイヤーの背後にいるギャラリーもアドバイザーという形でゲームに参加できたが、端末が小さくなると完全にパーソナルユースに特化してしまって、ワイワイガヤガヤというプレイには対応できなくなってしまった。
本作は昔ながらのアドベンチャーゲームなので、本当はみんなで「ああだ、こうだ」と謎を解いていくと楽しいゲームなのである。1人だと詰まってしまう謎も、複数の仲間で考えれば、案外すんなり解けたりもする。英語が苦手でも、誰かがフォローしてくれるかもしれない。グラフィックをじゅうぶんに堪能するためにも、タブレットなどの大きめの端末で遊ぶことを推奨したい。
なお、ゲーム内の表示言語はヨーロッパ圏の各国に対応している。試しにフランス語に切り替えてみたが、筆者の語学力はすっかりさびついていて、英語の方がまだましだった……。ここまで来たら、意地でも英語の勉強なんかするもんかと思うのだが、英語圏の名作ゲームを見るたびに心が揺れる。誰か、早いところ優秀な自動翻訳エンジンを作ってくれないものだろうか。
- 使用した端末機種:iPhone 6 Plus
- OSのバージョン:iOS 9.0.2
- プレイ時間:約6時間
- 記事作成時のゲームのバージョン:1.0.1
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