ユニークなIoTからスターウォーズARまで!
昨年のCEATEC2016については以下の記事でレポートしていますが、CEATECは、何の略かというと「Combined Exhibition of Advanced Technologies」の頭文字を取ったものだそうです。
昨年、レポートしたときにも解説しましたが、もともとCEATECは家電ショーとして開催されてきましたが、近年は「CPSとIoTの展示会」というコンセプトになっています。
「CPS(Cyber Physical System)ってなんだ?」「IoT(Internet of Things)ってなんだ?」という方は昨年の記事を参照頂きたいですが、簡単に言うとCPSはIT技術と現実世界を相互干渉させることができるようなテーマのことで、最近の事例でいえばAIとか自動運転とかVR、ARなんかが含まれるようです。
IoTは最近身近になってきましたが、ネットワーク(インターネット)に繋ぐことができるさまざまなデバイス全般を指します。
最近の事例だと、音声会話が可能なAI技術搭載のスマートスピーカーなんかがわかりやすい事例ですね。
シャープがスポーツファンのためにリリースしたスマホ連携型IoT「funband」
8K関連の展示が目立っていたシャープブースですが、スマートフォンに強く関連したデバイスの展示もありました。
ボクはまったく知らなかったのですが、シャープは、スポーツファンに向けたIoT製品「funband」を今年6月からリリースしていたんですね。知ってましたか?
このfunband、パッと見、腕時計型の活動量計(アクティビティトラッカー)のようですが、ちょっと違います。
実は、これスポーツ観戦ファンのためのIoTグッズなのです。funbandの「fun」とはスポーツファンの「ファン」から来ているのです。
現在は広島東洋カープ、福岡ソフトバンクホークス、横浜DeNAベイスターズのファン向けにリリースされていて、これを装着して球場に行くと、打席に立っている選手の打率などの情報をはじめとする、試合進行に連動したコンテンツが画面上に表示される仕様になっています。
funbandのホストコンピュータとなるのは当然スマートフォンです。
funbandをスマホとBluetooth接続し、AndroidとiOSの両方に対応したアプリをインストールすることで使えるようになります。
funband自体には、加速度センサー ジャイロ(角速度)センサーが搭載されており、手を振って応援する動作を検知することができるそうです。
球場にいるファン全体の応援の盛り上がり傾向や、どの選手のときに応援が盛り上がったかの情報が参照できるのだとか。
もちろん、スマホ側のアプリ画面には試合の動向をグラフィック解説する画面も出てくるので、アプリは試合状況を把握するのにも便利なはずです。
スタンド席からだと、意外にフィールドで戦っている選手たちの状況が伝わってこないときも多いですからね。
野球の試合のイニングカウント、7回はラッキーセブンと呼ばれ、応援が白熱するときなのですが、このときは、funband上面に仕込まれたフルカラーLEDがピカピカとイルミネーションが点滅して応援を盛り上げてくれます。
現在は、サッカーなどの他のスポーツへの展開や、2020年の東京オリンピックへの対応なども検討しているのだとか。
スポーツ応援に特化したIoT、とてもユニークで、将来性の高さを感じます。
レノボからスターウォーズゲーム専用のスマホゴーグル型「AR」が登場
レノボといえば、今やスマホメーカーであり、パソコンメーカーの大手としてなかなかの存在感を有した企業ブランドです。
パソコンに関しては、かつてのIBM ThinkpadとNEC LAVIEなどのブランドを獲得しただけでなく、最近では富士通のパソコンブランドも統合していく方針が発表され、勢いが止まりません。
そんなレノボが、そういった製品とは系統の異なる、なんとも面白い製品を発表していました。
それはなんとSF映画『スターウォーズ』の世界観のゲームが楽しめるAR-HMD(AR:拡張現実、HMD:ヘッドマウントディスプレイ)製品『STAR WARS JEDI CHALLENGES』です。
といってもスマホをはめ込んで使う、いわゆる「スマホゴーグル」系の製品になります。
スマホゴーグルというと、スマホをはめ込んでVR-HMDとするスマホVRゴーグルが有名ですよね。認知度の高い製品としてはサムスンのスマホ、Galaxyシリーズ対応の「Gear VR」があります。
この『STAR WARS JEDI CHALLENGES』は、VR-HMD化するスマホゴーグルではなく、AR-HMD化するスマホゴーグルなのがユニークな点です。
そう、スマホ補組み込んで使うゴーグルなのに、現実世界の視界がちゃんと見えていて、その上にCGが合成されるのです。
GearVRのようなVR-HMD型のスマホゴーグルでは、両目の眼前にスマホ画面を配置してしまう構造ですが、この『STAR WARS JEDI CHALLENGES』ではスマホを両目の眼上、つまりは、おでこにくっつけるように配置するところが違います。
おでこに接するスマホは、画面を下向きに配置され、スマホの映像は下向きに映っていることになります。
さらに『STAR WARS JEDI CHALLENGES』では、眼前に斜めにハーフミラーを配置しています。ハーフミラーとは「半分反射して半分透過する鏡」です。
このハーフミラーの機能により、スマホの画面映像と、両目の眼前の現実世界の景色の両方が合成されて見えるようになるわけです。よく考えられていますよね。
「STAR WARS(TM) JEDI CHALLENGES」の発売当初から提供されるゲームは「ライトセーバー・バトル」「ホロチェス」「戦略バトル」の3つで、それぞれアクションバトルゲーム、ターン制のチェス、リアルタイムストラテジーといったゲームジャンルになります。
https://youtu.be/BQc8CZDt9Qg
https://youtu.be/WPWnQGqkk3c
https://youtu.be/-p1usNKD-Rg
ARということになると、プレイヤーが移動したとしても、CG世界の見え方と、現実世界の景色の見え方の辻褄が合っている必要があります。
敵キャラクターが、ダイニングルームのテーブルの近く出現したら、プレイヤーが移動したとしても、敵はそのダイニングテーブルの近くに居続けるように見えなければなりません。
これにはCG世界と現実世界の位置合わせの仕組みが必要になります。
この機能を実現するのに最もシンプルな解決方法はQRコードのようなマーカーを現実世界に貼り付けたりするテクニックです。
ニンテンドー3DSの「ARゲームズ」がまさにそんな感じでしたよね。『STAR WARS JEDI CHALLENGES』では、こうしたマーカーは使いません。
その代わり、商品セットに付属する「トラッキングビーコン」と名付けられた球体の発光体を使います。
ソニーがPS3時代に発売した、PlayStation Moveのコントローラーの先っぽみたいなかんじですね。
「トラッキングビーコン」は床に置いておくことで、その位置が、『STAR WARS JEDI CHALLENGES』のゲーム世界では正面中央と見なされるのです。
この「トラッキングビーコン」は、HMD(ゴーグル)の左右両端付近に実装されたカメラで追跡されることになります。「トラッキング・ビーコン」を追跡するためだけのカメラなので、おそらくそれほど撮影解像度の高いカメラではないと思います。
ぶっちゃけていえば低コストなカメラだと思われますが、「トラッキングビーコン」を追跡するのにはじゅうぶんといえ、なかなかスマートな設計です。
この二眼カメラは、「トラッキングビーコン」だけでなく、プレイヤーが持つことになるライトセーバー型のコントローラーの剣先の発光体の位置も追跡し、この発光体の延長線上に、CGで再現されたレーザー「刃」を合成します。
プレイヤーが握ることになるライトセーバーの「柄」の部分は実体物ですが、その伸びる刃は、AR-HMDを通して見たときにだけ見えるCGというわけです。
このCG製のレーザー刃で敵キャラクタを切りつけることで敵を撃退したり、敵からの攻撃を防いだりすることができます。
ブースではボクも実際に「ライトセーバーバトル」を体験してみましたが、スマホはめ込み型の低コストで作られたAR-HMDのわりにはちゃんとゲームとしてプレイできます。
ライトセーバーの柄を振りまわしてもちゃんとCG剣先も追従してきますし、プレイしているうちに白熱してしまい、汗だくになってしまいました。
もしかすると、フィットネス効果も期待できるかも知れません(笑)。
IoTは「身に付ける」から「着込む」へ
パナソニックもユニークなIoTデバイス『Wearable Maker Patch』を出展していました。
当然、こちらもスマホと連動して使うタイプのIoTです。
これまでのIoTと決定的に違うのは、『Wearable Maker Patch』は、「着るIoT」だということです。
簡単に言うと『Wearable Maker Patch』は、伸縮自在なプリント回路で構成されたIoTで、衣服に組み付ける(Patchする)ことが出来るIoTなのです。
現状のコンセプトでは「既存の衣服に組み付けることができる」となっていますが、もちろん、設計段階からIoT衣服として開発すれば、はじめからIoT衣服製品としても構成することもできるはずです。
では、衣服にIoTを統合することで何が実現できるのでしょうか。
『Wearable Maker Patch』では、さまざまな機能をプリント回路として構築した事例をブースで出展していました。
『Wearable Maker Patch』にはBluetoothパッチ、水分センサーパッチなどがあるので、たとえば、これを赤ちゃん服に実装すれば、赤ちゃんのおしめが濡れたことを、母親のスマホに通達することができることでしょう。
加速度センサーパッチが付いていれば、赤ちゃんが目覚めて動き出したことを検知することもできるでしょう。
『Wearable Maker Patch』のパッチには、このほか、脈拍センサーパッチ、温度センサーパッチ、紫外線センサーパッチ、発光LEDパッチ、ブザーパッチ、タッチセンサーパッチなどがラインナップされています。
これは2つ以上組み合わせて回路を形成できるので、たとえば「触られたら光と音を出す」なんていう回路形成もできるわけです。
衣服に統合されてしまうとなると、気になる点もあります。たとえば「洗濯はできるのか?」とかです。
パナソニックの担当者によれば、洗濯に耐えうる防水加工がなされているそうです。200℃以上の高温にも耐えることができ、実際、衣服への組み付けはアイロン接着で行えるようです。
衣服は伸び縮みが要求されますが、プリント回路部は元の大きさに対して±20%の伸縮を2,000回行っても故障がない性能保証があるのだとか。
今のところ直近に発売する予定はないそうですが、最初は価格的には普通の衣服よりは高価なものになるはずです。
なので、最初は、工事現場、建設現場などの作業員向けのプロの作業服に統合することからはじめたい、と担当者は述べていました。
衣服もそうですが、これだけ薄くてコンパクトならば、カバン、傘、財布などの身の回り品に組み込んでも面白そうですよね。
置き忘れをしたら、スマートフォンに連絡してくれたりするだけでも、多くの人にとって便利だと思います。
CEATEC2017では、まだまだほかにも興味深いモバイルに関する展示も行われています。後編では、CEATEC2017で見つけたさらなる最新モバイルテックたちを紹介します。