使い詰めも問題なし!? 丈夫な馬で最多出走記録127戦を更新できるか!?
今回は、通算127戦というJRAの最多出走記録に挑戦する。
挑戦するにあたって、注目すべきポイントは以下のとおり。
- 出走できるレースがなくなる10歳1月1週まで現役を続ける
- 通算127レース以上に出走する調整(年間16.9戦以上)
- 故障知らずで、疲れもたまりにくい「体質A」
- 成長タイプは10歳まで戦える「晩成」
特に後ろの3つが最多出走更新のカギを握りそうだ。
通算127戦! ハートランドヒリュ 成績紹介
今回挑戦する、最多出走記録を樹立したのは「ハートランドヒリュ」という馬。通算127戦ものレースに出走を果たし、亡くなる瞬間まで現役であり続けたJRA最多出走記録の持ち主である。
- 1998年12月(2歳):阪神競馬場の新馬戦でデビュー
- 1999年4月(3歳):8戦目で初勝利
- 2004年4月(8歳):通算出走回数100回
- 2005年11月(9歳):通算出走回数123回で最多出走記録を更新
- 2006年3月(10歳):調教中に急性心不全のため死亡
生涯成績:127戦4勝(実動8年)
獲得賞金:1億3308万4000円
挑戦開始!丈夫な馬はどう作る?
今回は、以下のようなコンセプトで馬を作っていく。
- アウトブリード
- 晩成、かつ体質がA以上の種牡馬の産駒
- 繁殖牝馬の能力は体質が強いものを選択
これで必要な馬の選定は完了。次は実際に産駒を作っていこう。
晩成馬を作りたいときは?
今回は多くのレースに出走するため、丈夫な馬を作ることに重点を置いたが、晩成馬を作ることに重点を置く場合は、「晩成」のクロスを成立させるのがおすすめだ。
晩成馬の多くは4歳以上がキャリアのピークになるため、古馬の難関レースを狙いやすい。
天皇賞や有馬記念といった、各世代、特に古馬の強豪が出走するようなレースを制覇したい場合は意図的に晩成馬を作ってみるのもアリだ。
晩成の因子を持つ種牡馬の例
- キズナ
- ヒシミラクル
- アサクサデンエン
- ワールドエース
- スマートファルコン
- タートルボウル
- マヤノトップガン
体質Aの晩成馬が見事完成!
滞りなくタートルボウルの仔が誕生。
ストレートに「サイタシュッソウ」と命名された本馬。両親の特性をしっかり受け継いでくれたこともあり、晩成で体質Aとなった。
デビュー前から心を鬼にしてスパルタ調教
デビュー後の調教はレースに向けた調整がメインになるはずなので、デビュー前にできるだけ能力を上げておきたい。
そのため、心を鬼にして最初から手動調教でびしびしと気合を入れていく!
芝とダートで1カ月ずつみっちりと調教した結果、いよいよレースに出られる状態に。
能力はまだまだ伸ばす余地はあるのだが、今回は出走数を稼ぐことがメイン。早くもデビューさせてしまおう!
いよいよデビュー! 128戦に出走するには……
ついに迎えた、サイタシュッソウ号の記念すべきデビュー戦。果たして結果は……。
17頭中17着。調教が足りていないのは百も承知。予想どおりなので問題ない!
散々なデビュー戦はさておき、127戦を超えるためには、ひと月にどのくらい走らなければならないかを考えておく。
タイムリミットである10歳の1月1週までに残された月数は計88カ月(2歳の残り4カ月+3歳~9歳の84カ月)。
これから128戦を走ることを考えると、月1.45レース。1年あたりだと17.4レースのペースが求められる。
これは……かなり厳しい戦いとなりそうだ。
デビュー後は調整に気を配る
一定以上の調子に上げた状態でレースに出走させないと、疲労の蓄積や故障につながってしまう。
より多くのレースに出走させるためには、いかに早くいい調子に持っていき、それを維持するかが重要。
……手動で調教する必要がありそうだ。
皐月賞に出走!
意外というのもなんだが、サイタシュッソウ号は3歳の1月にあっさり初勝利を挙げることができた。
未勝利のまま、3歳9月を迎えて引退という最悪の展開も想像していただけに一安心。
さらに、その後も早々に1勝してオープンに上がると……。
なんと皐月賞に出走! 18番人気、15着と直線でも映らないほどだが、出られたことがうれしい!
まさに馬主気分を堪能できた。
出走は2カ月で3~4レースほどと、なかなかのペース。
調子のいいときに固めて出走し、1カ月ほど調整してまた出走、というローテーションで出走数を稼いでいく。
ピークの4~6歳、体質Aの本領発揮!
4~6歳では馬体が本格化したのか、レースでも人気を集める機会が増える。ただ、勝ちきれない展開が続き、この期間は3勝止まり。
勝利数は伸びないが、さすが体質A。「かなり疲労がたまっています」と調教師に言われてからの回復が非常に早い!
1週間で調教に復帰できることがほとんどである。
出走のペースは年間15レースほど。今後はペースが落ちることを考えると、もう少し稼いでおきたかったのだが、好調に持っていくには2カ月弱かかる。調整は難しい……!
7歳~9歳、衰える体にムチを打って出走を続ける
7歳になったあたりから、さすがに衰えを感じることが多くなる。レースシーンではそれが特に顕著だ。
また、レース後に「かなり疲労がたまっています」のコメントが高確率で出るようになったほか、減った馬体重が1カ月ほど戻らないということもあった。
8歳あたりではレース後に必ず疲労がたまるようになり、9歳では3週ほど休むような状態になった。
すると今度は、馬体重が重すぎる事態に……。
満身創痍のサイタシュッソウだが、それでも定期的には走り続けてくれる。この時期は、年間で8レースほどをこなしてくれた。
そしてついに迎えた10歳1月1週……
出走できるレースがなくなるタイムリミットの10歳1月1週まで走り続けてくれたサイタシュッソウ。
ここまで来ると、筆者の心に浮かぶのは、勝った負けたではない。とにかく感謝である。
最終的に92戦で7勝。残念ながらJRA最多出走記録の128戦を抜かすことはできなかった。
今回のチャレンジで、この記録がいかに偉大さを思い知らされた。
各年の出走数と、通算走破距離は以下のとおり。
- 2歳:5レース
- 3歳:17レース
- 4歳:12レース
- 5歳:15レース
- 6歳:15レース
- 7歳:11レース
- 8歳:8レース
- 9歳:9レース
生涯戦績:92戦7勝 総賞金:2億925万 通算走破距離:147,700m(およそ東京~静岡間に匹敵)
しかし、今回、体質Aの恩恵を強く感じた。
体質Aの馬のメリットは以下のようなものがある。
- 芝の併せ調教などの調教でも故障しにくい
- 「かなり疲労がたまっています」や「カイ食いが落ちている」という状態になりにくい。またなってもすぐに回復する
とくに疲労がたまりにくく、回復が早いのは大きい。
3歳クラシックで、「皐月賞は出走できたが体調管理に失敗して日本ダービーに出走できなかった」というような経験をした人は多いだろう。体質がAならば、そのようなGI戦線でも簡単な調整で出走できる。
スピード、スタミナ、根性とレースにかかわる能力も重要だが、アウトブリードや「丈夫」の因子で体質の強い馬の生産にも目を向けてみよう。
調整次第で1カ月1レースは可能!
今回の挑戦で筆者が実践した調教方法は次のとおり。調子と体重に注目した。
調子 | 馬体重 | 調教 | 強さ |
---|---|---|---|
良 | ベスト付近 | 坂路orウッド | 強め |
良 | 軽め | なし | - |
良 | 重or太め | プール | - |
悪 | ベスト付近 | 坂路orウッド | 馬なり2本 |
悪 | 軽め | 坂路orウッド | 馬なり2本 |
悪 | 重or太め | 芝orダート | 併せ |
レース直後 | - | なし | - |
疲労蓄積時 | - | なし | - |
衰えた晩年はともかく、7歳までは、ほぼ1カ月間隔で1レースは出走させることができた。
もちろん体質Aの恩恵も大きいが、調整に気を配りさえすれば、短いスパンでもレースに出走させられるのかもしれない。
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