Bluetoothとは?
Bluetooth(ブルートゥース)は、スマートフォンをはじめ、パソコンやゲーム機などに搭載されている至近距離無線通信技術で、イヤホンマイクやマウス、コントローラー、キーボード、ウェアラブル端末などのさまざまな機器と、電波を利用して、ワイヤレスで接続することができる。
こうした電波を利用し、離れた機器をワイヤレスで接続できる規格としては、Wi-Fiが知られているが、Wi-Fiはほぼ同意に用いられる「無線LAN」という言葉からもわかるように、元々、オフィスなどで利用するLAN環境で、各機器を接続していたケーブルを電波に置き換え、ワイヤレスで伝送できるようにしたものだ。
これに対し、Bluetoothは元々、携帯電話のコネクタを統一するところから話がスタートしている。
現在のスマートフォンは他の機器との接続するための物理的なインターフェイスとして、iPhoneなどのLightningコネクタ、Android端末などで採用されているmicroUSBやUSB Type-Cなどが使われているが、1990年代の携帯電話では各端末メーカーごとに、異なる形状の独自の端子が採用されていた。
そのため、周辺機器メーカーは端末メーカーごと、あるいはモデルごとに接続ケーブルを用意しなければならない上、ユーザーも端末買い換え時に接続ケーブルから充電器まで、丸ごと買い換えなければならなかった。
そこで、物理的なインターフェイスを「電波」というインターフェイスに統一するために生まれてきたのが「Bluetooth」というわけだ。
ちなみに、Bluetoothという規格の名称はエリクソンの技術者が名付けたもので、ノルウェーとデンマークを平和的に統一したハーラル1世が「青歯王」と呼ばれたことに由来する。
Bluetoothが規格化されたのは1999年で、当初は携帯電話も対応製品が限られていたため、なかなか普及が進まず、国内でも2000年代前半にいくつか対応製品が登場したものの、あまり市場での反応は芳しくなかった。
しかし、バージョンを追うごとに、最大通信速度を一時的に高速化する「EDR(Enhanced Data Rate)」や省電力化機能などが実装されたことで、徐々に利用シーンが拡がっていった。
スマートフォン登場以降はほぼ標準機能になり、近年はワイヤレスヘッドセットやステレオイヤホン/ヘッドフォン、ワイヤレススピーカー、ウェアラブル端末など、さまざまな機器との接続に欠かせない機能として、定着している。
ワイヤレスで音楽を楽しめるBluetoothヘッドフォン
さて、そんなBluetooth機器の中で、人気が高まってきているのがBluetooth対応ステレオイヤホン/ヘッドフォンだ。
昨年発売されたiPhone 7/7 Plusがヘッドセットコネクタ(3.5mmイヤホンマイク端子)を廃止したため、音楽や映像、ゲームなどのサウンドを楽しむには、他の方法でステレオイヤホン/ヘッドフォンを接続しなければならなくなった。
具体的には、Lightningコネクタに直接、挿せるイヤホン/ヘッドフォンを利用する方法、「Lightning – 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタ」を介して、一般的なステレオイヤホンを接続する方法がある。
Apple自身もユニークなセパレート型ワイヤレスヘッドセット「AirPods」をはじめ、傘下のBeatsがAirPodsにも採用された「W1チップ」を搭載する「Powerbeats3 Wirelessイヤフォン」を発表したこともあり、ワイヤレスで接続できるBluetooth対応ステレオイヤホン/ヘッドフォンが注目を集めている。
ワイヤレスのBluetooth対応ステレオイヤホン/ヘッドフォンそのものは、以前から販売されていたが、最近は省電力性能の向上で連続再生時間が長くなったほか、ランニングやスポーツでの利用に便利な防水対応のモデルも登場するなど、利用シーンに合わせて選べる実用的な製品が増えてきている。
価格は1,000円台で購入できるものから、本格的なオーディオユーザーのニーズにも応えられる5万円を超えるような製品までラインアップされている。
Bluetoothヘッドフォンは対応コーデックをチェック
こうしたBluetooth対応ステレオイヤホン/ヘッドフォンを選ぶとき、デザインや音質、装着感、価格など、気になることはたくさんあるが、1つ覚えておきたいのが対応するコーデックの存在だ。
たとえば、スマートフォンを使い、Bluetooth対応ステレオイヤホン/ヘッドフォンで音楽を楽しむ場合、スマートフォンに保存されている音楽データは、圧縮された状態でステレオイヤホン/ヘッドフォンにワイヤレスで伝送され、ステレオイヤホン/ヘッドフォン内で展開されて、音楽としてユーザーの耳に届く。
この圧縮と展開をするための規格が「コーデック」なのだが、Bluetoothの場合、SBC(SubBand Codec)と呼ばれるコーデックが標準的に利用されている。
ところが、SBCはデータを圧縮して、送信するときにタイムラグが発生するため、音の遅延が発生する上、高音域をカットしてしまうため、音質がやや落ちるというデメリットがある。
たとえば、ゲームなどでは画面と効果音のズレを感じたり、音楽再生時にもケーブル接続時よりも今ひとつ音質がよくないといったことが起きてしまうわけだ。
これに対し、ここ数年、Bluetooth対応ステレオイヤホン/ヘッドホンで採用されているのが「aptX」というコーデックだ。
aptXは現在はQualcomm傘下になったCSRの技術で、元々、録音スタジオや放送局などのプロフェッショナル音響分野で培われた技術をベースにしている。
aptXではオーディオデータ転送時のパケット構成などを効率化することで、SBCよりも高音域まで再現することを可能にし、遅延も半分以下に抑えている。
つまり、音楽を再生するときはより高音質で、動画再生やゲームなどでも音声と映像のずれを最小限に抑えた状態で楽しめるわけだ。
また、aptXにはより低遅延を実現した「aptX LL(Low Latency)」、ハイレゾ音源などにも対応可能な「aptX HD」も提供されており、国内ではオーディオテクニカやLGエレクトロニクスなどから対応製品が販売されている。
このaptXが利用できるのはAndroidプラットフォーム、Windows 10 mobile、BlackBerryなどのスマートフォンで、aptXに対応ステレオイヤホン/ヘッドフォンと組み合わせることで、高音質かつ低遅延の環境を実現することができる。
一方、iPhoneやiPadなどのiOSデバイスについては、「AAC(Advanced Audio Coding)」と呼ばれるコーデックが採用されている。
SBCに比べ、高音域のロスが少なく、高音質のサウンドを楽しめるという特徴を持つ。
ちなみに、AACと言えば、iTunesで音楽CDから楽曲を取り込むときのコーデックにも採用されているため、iPhoneなどに保存されている音楽データをそのままBluetooth対応ステレオイヤホン/ヘッドホンに転送できそうなイメージを持ってしまうかもしれない。
実際にはiPhoneなどの通知音や効果音なども転送する必要があるため、AAC形式で保存された音楽データは通知音や効果音などの他のオーディオデータと共に再圧縮した上で、Bluetooth対応ステレオイヤホン/ヘッドホンに転送している。
aptXもAACはいずれもスマートフォンとBluetooth対応ステレオイヤホン/ヘッドホンの双方がサポートしている場合のみ、効果を発揮する。
片方しかサポートされていない場合は、SBCで転送されるので、aptX対応やAAC対応のBluetooth対応ステレオイヤホン/ヘッドホンを選んでもメリットは享受できない。
AndroidスマートフォンのユーザーはaptX、iPhone/iPadユーザーはAAC対応を確認した上で、Bluetooth対応ステレオイヤホン/ヘッドホンを選ぶのがおすすめだ。
最近は両対応の製品も増えてきているので、それを選ぶのも手だ。