Kingが無償提供する2D向けゲームエンジン「Defold」の実力とは?

UnityやUnrial Engineなど、ゲームの開発においてゲームエンジンは欠かせない存在となっており、さまざまなものが開発されている。今回、日本で初めて開催された、『キャンディークラッシュ』で知られるKingが提供する「Defold」のブリーフィングの模様をお届けする。

KingのゲームエンジンDefold無償提供の理由とは?

Kingが開発し、無償で公開されているゲームエンジン「Defold」のデベロッパー向けブリーフィングが日本で初めて実施された。

スピーカーを務めたのは、KingのストックホルムオフィスでDefoldを担当する、Defoldデベロッパーリレーションズ/ディレクターのベンジャミン・グレイサー氏。役員の大塚純氏による通訳で会は進行した。

ベンジャミン・グレイサー

2001年よりゲーム業界に身をおき、同年に自身が開発したゲームをリリースする。その後も個人スタジオにてゲーム開発を行い、その傍らでソニー・エリクソンやMTVのコンサルタントとしても活躍。

2006~2008年はゲームデザイナーとしてKingに在籍し、2015年末にDefold立ち上げメンバーとして再入社。

肩書きはデベロッパーリレーションズとなっているが、実際はビジネスデベロップメントなども担当している実質Defoldのトップ。

Defoldは、2Dゲームの開発にフォーカスしたゲームエンジンで、とにかく軽いことが特徴だという。

さらに、パフォーマンスが高いこと、さまざまなプラットフォームのゲームが開発できることにも重きを置いている。

もともと、Kingの社内で使われてきたゲームエンジンだが、2016年に開催されたゲーム開発者会議「GDC 2016」にて無償で公開されることが発表され、現在は社外のデベロッパーも使用することができる。

アップデートは2週間に1回行われており、高い頻度でエンジンを更新している恰好だ。

また、公開されているDefoldは、King社内で使われているものとまったく同様のものが公開されており、自分たちだけがこの優秀なゲームエンジンを使おうという考えはいっさいない。

ちなみに、Kingの開発チームは、利用するゲームエンジンが統一されておらず、チームごとに使いたいゲームエンジンを選択でき、Defoldがある現在も、Unityなどの他のゲームエンジンを使っているチームもあるそうだ。

つまりは、Defoldを使っているチームは、他のゲームエンジンよりもDefoldが優れていると判断して使っているということになる。

Kingといえば『キャンディークラッシュ』というイメージが強いが、その他の形でもゲーム業界に貢献したいという思いから、無償で公開するというプロジェクトに取り組んでいるとのこと。

また、無償で公開することでより多くのユーザーが生まれ、それだけたくさんのフィードバックが得られることも無償提供の理由の1つだそうで、Defoldの品質向上に活かされているようだ。

インディーデベロッパーに広く使われる

無料で公開してから、利用者は増加し続けており、ダウンロード数は2017年2月までに3万を超えているDefold。

前述のとおり、King自身ももちろん利用しており、現在リリースされているタイトルでは『ブロッサム・ブラスト』がDefoldで開発されている。

さらに、現在開発中の多くのタイトルでも利用されており、カジュアルなものからマルチプレイに対応したものなど、さまざまなタイプのゲームの開発が進んでいるとのこと。

利用者はインディーデベロッパーにも広まっており、すでに100を超えるタイトルがリリースされている。

1つのコードで、複数のプラットフォーム向けにビルドできることもDefoldの特徴で、中にはPC向けにSteamで配信しているタイトルもあるそうだ。

開発におけるパフォーマンスも優れる

高品質でクロスプラットフォームなゲームが素早く開発できるというDefold。

ベンジャミン氏は、面白いゲームを作るためには、たくさんトライすることが大事だとし、そのプロセスとなるものを、とにかく速く処理できる工夫がDefoldには詰め込まれている。

その1つが、たくさんのトライができるように、新しいビルドを作り直さなくても、アップデートができる仕組みが実装されている。

Wi-Fiホットリロード機能により、実機を使って変化を確認することもでき、実際のゲーム画面の見え方などを気にするデザイナーやアーティストにとって重宝しそうだ。

また、ビルドにかかる時間も極めて短く、HTML5へのビルドも数秒で完了。Defoldを導入すれば、ストレスなく開発を進められる環境を手にすることができるだろう。

会場ではサンプルとしてシューティングらしきデモゲームのビルドを披露。ほとんど待たされることなく、デモゲームがブラウザで動作する様子が確認できた

実際にDefoldを使ったデベロッパーからは、賛否両論のようで、もっとも多い不満はネイティブ エクステンションに対応してなかった点。

広告ツールのSDKが対応していないことなど、不満に思うデベロッパーが多かったようだが、現在は対応している。

これも、無料で公開したことにより改善された点だと思われる。

ユーザーによるコミュニティも形成されており、有志によってチュートリアルビデオも制作されている。

さらに、Defoldを学習するフリーの電子書籍が制作・配布されるなど、ユーザーの動きが活発になりつつあるようだ。

Kingとしても、このようなコミュニティは大事にしたいと考えているようで、公式のコミュニティポータルサイトを作る予定だ。

こうした取り組みにより、数多くの2Dゲームが開発され、モバイルやブラウザ向けのゲーム全体の盛り上がりに期待したいところ。

また、Defoldで作られたゲームに対し、2018年内に1,000万インプレッションの広告を無償でサポートするDefold Developer Grantが実施される。

下記の条件を満たしたタイトルの中から、4つの優れたタイトルが対象となり、インディーデベロッパーにとって、リリースした作品を広める、またとない機会となっている。

  • Defoldで作られていること
  • インストール数が2,000を超えること
  • アプリストアでのレートが3.5以上
  • 翌日リテンション(継続率)20%以上

申請をしたのち、上記の条件を満たすタイトルの中から、四半期ごとに1タイトルが選出され、Kingによる広告のサポートを得られるという流れだ。

なお、落選してしまった場合でも、次の四半期に再度申請をすることも可能となっている。

これから新作の開発に着手するというインディーデベロッパーの方は、Defoldに触れてみるいい機会といえるのではないだろうか。

ベンジャミン氏は、今後もDefoldの改善やデベロッパーへのサポートに注力していく姿勢で、日本のデベロッパーにDefoldを利用してもらいたいとし、ブリーフィングを締めくくった。

(C) 2017 Defold