おじいちゃんの記憶を巡る旅【ゲームレビュー】

先へ進める道を作って、おじいちゃんの旅をサポートしていく不思議なパズルゲーム『おじいちゃんの記憶を巡る旅』。長い人生を絵画のような情景とともに振り返る、ノスタルジックな映画のような作品だ。

老人は人生という旅路を今日も行く

ゲームは、独り暮らしのおじいちゃんに一通の手紙が届くところから始まる。

手紙を読んで、なにやら悲しげな様子のおじいちゃん。急ぐように身支度を整え、おもむろにどこかに出かけようとする

プレイヤーは、移動させたい場所をタップすることでおじいちゃんを誘導しながら、旅の目的地を目指していく。

画面の奥、または端まで移動すると次のエリアへ進むことができるので、これを繰り返していくことになる。

おじいちゃんは、丘や坂などがつらなる場所を渡り歩いていくことができる。どう動かせば目的の場所に到達できるかを考えて、移動させていけばOK

旅の道中では、随所でおじいちゃんがもの思いにふけり、これまでの人生を振り返る。

ゲーム内ではテキストが一切表示されないのだが、おじいちゃんの表情でなんとなく内容を察することができる。心理描写の妙にも注目だ。

仲むつまじいカップルを眺めて、妻との出会いのシーンを思い起こすおじいちゃん。「ワシにもあんなときがあったのう」といった感じだろうか

丘や坂を変形させて道を作ろう

エリア内にある丘や坂などは、ドラッグすることで、なんと変形させることができる。

これを駆使して、つながっていない道を通れるようにしていくことが、プレイヤーの最も重要な役割となる。

画面内をロングタップすることで、丘や坂、建物などのオブジェクトが黄色く区切られて表示されるようになる。この状態で、変形させたいオブジェクトをドラッグして引っぱると、ある程度形を変えることができる

一見して通れないような場所があったら、プレイヤーの出番。おじいちゃんがいる場所のオブジェクトは動かすことができないので、これも考慮に入れて最適ルートを探していく。

見た目は非常にほのぼのしているが、このあたりがパズルゲームたるゆえんになっている。

おじいちゃんが通れるのは、丘や坂がつらなっている場所のみ。丸い表示があれば連結している証なので、この表示が出る場所までドラッグしてみよう

老人にとっては羊すら障害物に

旅の道中には、パズルゲームらしいギミックもいくつか登場する。

羊やちょっとした川といった、若い方なら飛び越えられそうなギミックが多いのだが、いずれもゆっくりと歩くおじいちゃんにとっては障害になる。

上手にやり過ごして旅を続けていこう。

羊の群れがおじいちゃんの行く手を阻む! 羊を逃がすルートを作って、なんとかしてすれ違いたい

川は飛び越えずに、なすがまま下っていくのがおじいちゃんスタイル(?)。自然をうまく味方につけよう

人生を想起させるような美しい風景

各マップの美しさも本作の魅力。

暖かい印象の場所も、あれば冷たい印象の場所も存在し、おじいちゃんの心理にも影響を与える。

回想がその場所に影響を受けたような内容になるので、人生山あり谷ありといったところが表現されているようだ。

そのまま切り取って絵画にできそうな美しさ。このあたりは人生の喜びを描いているのだろうか

暗く、冷たいマップも登場。回想にも暗雲が立ちこめる

映画を1本見終わったような感覚が味わえる

プレイ後に、映画館を出たあとのような不思議な充実感が味わえる本作。

テキストもなく、回想もイベントCGが1枚あるだけなのだが、おじいちゃんの表情や情景が回想とリンクしており、不思議と心動かされるものになっている。

娘や妻を置き去りにしてしまったことを悔いるおじいちゃん。このシーンは表情や情景も相まって、後悔の念がひしひしと伝わってくる

おそらく、大筋のストーリーとして感じる部分は同じなのだろうが、テキストが一切ない分、本作の解釈は人それぞれになるかと思う。

プレイした人の生き方や価値観、現在の状況などによって感じ方は変わってくるのかもしれない。そういう意味でも、映画のような作品であるといえるだろう。

ほどよいパズル要素と、心動かされるストーリー。2時間ほどでクリアできるボリュームなので、ちょっとした映画を見るような感覚でプレイしてみよう。

旅の果てにたどり着いた家には……?

  • 使用した端末機種:iPhone SE
  • OSのバージョン:iOS 9.3
  • プレイ時間:約2時間
  • 記事作成時のゲームのバージョン:1.0

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