イタズラ大好きテスラの正体に迫る
イタズラが大好きな天才発明家という設定どおり、罠カードに特化した性能を持つテスラ。
従来のヒーローとは一線を画すヒーロースキル(HS)で、『#コンパス』の戦略性をより一層広げたヒーローでもある。
テスラは夢の中/TOKOTOKO(西沢さんP)
今回は、そんな無邪気で天真爛漫なテスラの誕生秘話を、2人のクリエイターにうかがった。
鮮烈な初音ミクイラストで世界に衝撃を与えたapapico
キャラクターデザインを担当したapapicoは、イラストレーターのほか、グラフィックデザイナーとしても活躍するクリエイター。
niconicoと大きく関わりをもったのは、2014年にアメリカで開催されたイベント「HATSUNE MIKU EXPO 2014」(※1)のメインビジュアルと、2015年の「マジカルミライ2015」(※2)のサブビジュアルを担当したこと。
初音ミクの持つ淡いはかなさと同時に鮮烈なイメージを与える色使いや、ローポリゴンを取り入れた2次元でありながら3次元をも感じさせる画風で、初音ミクファンに衝撃を与えた。
※1 HATSUNE MIKU EXPO:海外の初音ミクファンに向けて初音ミク創作文化を発信していくイベント。1年ごとに世界各国を回っており、2017年はマレーシアで開催予定。
※2 マジカルミライ:国内最大級の初音ミク創作文化イベント。映像と生バンド演奏による初音ミクライブ、クリエイターによるイラストやグッズの展示、ワークショップなどが催される。
Sharing The World (Japanese.ver ) feat.Hatsune Miku/BIGHEAD
Violet feat.Hatsune Miku by BIGHEAD
ローポリゴンを取り入れたプリズムのような塗り方について「かつてアーティストのアシスタントをしていたときに特訓したデジタルの絵を、イラストに取り入れられないかと思い付きで始めたのがきっかけ」だと話す。
彼が、この技法を身に着けたのはちょうど2011年頃、UIデザインとしてポリゴンに注目が集まっていた時期であった。
「昔のゲームの絵柄を再現するドット絵職人に近い感覚で、昔、夢中になったローポリゴンの3D格闘ゲームを再現しようと思ったんです」とそのきっかけを振り返る。
いざ、イラストにローポリゴンを取り入れたところ、拡大するとただの平面だが、引いてみると立体的に見える不思議な感覚が生まれたという。
また、イラストレーターとしてだけでなく、声優の岩男潤子さんのコンサートのロゴデザインや、pixivでラジオ番組「アパピコ酒場」をスタート、10月には自身初の個展を予定するなど、精力的な活動を広げている。
精力的に活動の幅を広げていくことについて、「やらないで後悔するより、やって後悔するほうが良い」という彼の想いがあるという。
とはいえ、デザイナーとしての活動とイラストレーターとしての活動を両立するのは容易くない。ラフなどは、電車での移動時間に行うことも少なくない。
結局のところテスラってどっちなんですか?
新ヒーローとしてテスラが登場したとき、ユーザーの間で話題になったのは、性別について。
女の子のようにも見える顔立ち、短パンなどボーイッシュな服装など、一見して性別を判別できない。
結局、テスラはどちらなのか、apapicoに聞いてみた。
「テスラの性別については、明言はしません(笑)。でも、描くときは完璧に女の子として描いていました」と不敵な笑みを浮かべる。
クライアントからのオーダーを重視しつつも、それ以上に「こうすればもっと良くなる」という意見を積極的に出そうというのが、apapicoのモットー。
テスラを描く際にも、「絶対にかわいいキャラクターにするべき!」と開発側に熱烈に提案したと振り返る。
中性的なキャラクターを描くのは初めてということだが、どのような工夫がなされているのだろうか。
apapicoによると、キャラクターの性別の描き分けのポイントは、骨盤の幅。逆に言えば、骨盤の幅によって、イラストを見た人にテスラの性別がばれてしまう。
しかし、そこは資料にあったカボチャタイプの短パンを履くことでクリアしたという。
また、座り方もひねりを加えることで、動きを出して、テスラの魅力を出したという。
「いただいた資料に、カボチャタイプの短パンがあったので、これで腰回りを分かりにくいようにしています」
また、イラストでは腰にひねりを加えた座り方にして、太ももからお尻のラインの見せ方にも気を使った。
そのほか、性別以外に「工作アームズ」のリアリティにもこだわりがある。
「キャラクターとは正反対に、無機質に描くほどキャラクターが引き立つと考えました」とapapicoは明かす。
線画の段階から、「ここはこんな構造のはず」と想像を働かせながら描き上げたという。
さらに、apapicoが担当したのはテスラだけではない。カードイラストとして、テスラの姉のうち、三女エレオノーラと四女クララを担当している。
「実は、テスラの服装は、姉たちの趣味なんです。なので、割とSっ気ある子たちなのかなと思っています」とapapicoは明かす。
「あとは、仲がすごい良いんだろうなと勝手に妄想しています。特に僕が担当したエレオノーラとクララは年齢が近いこともあってキャッキャウフフしているような場面を想像しながら描きました」
テスラが姉たちとどんな生活をしているのか想像してみるのも面白いかもしれない。
軽快で疾走感あるロックを武器とするTOKOTOKO
テスラのテーマソングを担当したのは、「西沢さんP」のプロデューサー名でも知られるTOKOTOKO。
2009年にニコニコ動画に投稿をはじめ、軽快で疾走感のあるロックナンバーで、着実に注目を集めていく。
高校時代に組んでいたバンドが、大学進学を機に解散。暇を持て余していたところ、友人に薦められて「メルト」(※4)を聴いたことがニコニコ動画を見るきっかけとなったという。
※4 メルト:ryo(supercell)による初音ミクオリジナル曲。ボカロによる本格的なロックの草分けとなった
ちょうど、ボカロによってロックな曲を作るのが流行しはじめてきていた頃だった。
「これなら自分一人でも音楽活動ができるかもしれない」と思ったと、当時を振り返る。
バンド時代も作曲は経験しなかったTOKOTOKOだが、試行錯誤をしながら作曲やDTMの技術を身に着けていったという。
そして、2010年に、GUMI1周年に合わせてリリースした「泣き虫アンサンブル」でVOCALOID殿堂入り(※5)を果たす。
その後は、下北系バンド(※6)を彷彿とさせるロックやバラード、ポップスで着実に人気を集めていく。
※5 VOCALOID殿堂入り:10万再生以上を突破したVOCALOID曲に付けることが許されるタグ
※6 下北系:東京都世田谷区下北沢のライブハウスを拠点に活動してきたロック系のアーティストたち。2000年代に音楽シーンで活躍し、ブームとなった。
ハングリーモンスター/TOKOTOKO
また、ボカロ以外にも、他の歌い手への楽曲提供も、積極的に行っており、数多くのコラボを手掛けてきた。
さらに2016年には、2016年12月には、「新しいことを始めたい」という思いから、zawaso名義で自身の楽曲をセルフカバーするアルバム「zawaso maniacs」をリリース。
これまでは、歌い手のレコーディングの際に、外からいろいろと意見を言う立場だったが、逆に自分自身がレコーディングエンジニアから意見をもらう立場になることで学ぶものも多かったと話す。
恋の魔法/ぱなまん×TOKOTOKO
ハンドメイドミライ/zawaso(セルフカバー)
音楽作りの着想は、おもに生活のなかで考えたことがもとになっているが、最近は映画や漫画、小説を読んだ感想から楽曲を作り上げることもある。
また曲作りで意識しているのは、歌詞とメロディーをキャッチーに聞けるようにすること。
これには、学生時代に聞いてきた青春パンクやロック、メロコアの影響があるとのことで、聞き手が受け取りやすい曲になるよう試行錯誤をしているという。
新しい引き出しが開いた「テスラは夢の中」
テスラのテーマソング制作は、ラフ画と設定が与えられたところから始まる。開発からのオーダーは、「かわいい」「子どもらしい」といったものだった。
『#コンパス』の依頼を受けてすぐにTOKOTOKOがしたのは、他のヒーローのテーマソングを調べること。
『#コンパス』のテーマソングには、バトルゲームの戦闘中に流れても盛り上がるダークで格好良い曲が多い。
しかし、TOKOTOKOは「僕も同じように作ってしまうとテーマソングの可能性が狭まってしまうと思い、これまでとは全然違うタイプの曲にしてみました」と明るい曲作りを決意。
ただし、バトル中に流れるBGMとしては異質になってしまうだろうという不安はあったが、「かわいい」「子どもらしい」を生かそうとダメもとで作曲し始めたという。
TOKOTOKOは、テスラのイラストを見たときの第一印象について「本当に子どもっていう感じ。バトル系のゲームだというのは分かっていたんですけど、戦いにではなく遊びにいっているようなイメージ」と話す。
テスラのイメージから楽曲を膨らませ、打楽器や木琴、チューブラベル(※7)を取り入れ、楽しげな音作りを心掛けたほか、発明家らしく歯車やスチームパンクの機械のような雰囲気も落とし込んだ。
※7 チューブラーベル:筒状になった鐘を叩いて鳴らす金属打楽器。某のど自慢番組で鳴らされる鐘としてお馴染み
子どもらしさを表現するために、イントロではアコーディオンとホイッスル。曲の終わりにはパフパフラッパを入れるなど、テスラのように遊び心を込めて、愉快な音を入れている。
そして、できたのがTOKOTOKO自身も「おもちゃ箱をひっくり返したよう」と表現する楽しいマーチ曲「テスラは夢の中」。
テスラは夢の中
これまでの投稿曲にはない曲調にTOKOTOKOも「新しい引き出し開けたな」と自身でも驚いたという。
普段から曲を作りながら、「こういう歌詞が乗りそうだな」と考えながら作っているというTOKOTOKOだが、「テスラは夢の中」でもサビ頭の「ボクもこんな風に出来るはず」という歌詞から作り始めた。
「イタズラや、失敗してもめげないというイメージ」と話す歌詞にはTOKOTOKOが抱いたテスラ像が生きている。
「勝ち負けはあまり気にしない、自分が楽しければそれで良いというような自分勝手な所があるのかな。
『#コンパス』には悩みや葛藤を抱えているヒーローもいますが、この子だけは楽しんでいそう」とテスラのイメージを教えてくれた。
なお、サビの最後の「生まれた命だよ、さあ I’ll go」という歌詞には、「生まれたんなら楽しまないとしょうがないでしょう」というテスラなりのメッセージが込められている。
テスラのようにバトルを楽しんでほしい
イラストを担当したapapicoも「最初に聞いたときは『かわいい!バトルできないよ!』と驚きました。
実は、妻も『テスラは夢の中』が大好きで、家で『#コンパス』をプレイしているときに、テスラのテーマソングが流れると『テスラの曲だ!』と反応するくらいです」と夫婦で曲の大ファンであることと明かす。
ちなみに、apapicoもTOKOTOKOも『#コンパス』ユーザーでもある。
「実は、テスラのお話をいただくよりも前から、桜華忠臣・グスタフを担当していたりゅうせーさんから、『絶対、ハマるよ!』とオススメされていました」とTOKOTOKOは明かす。
テスラのテーマソング制作にあたって、実際にプレイし始めたところ、りゅうせーの予言通りハマってしまったという。
ゲーム内でもテスラ使いのギルドに入っているというapapicoは「みなさん、キャラクターを愛してくださる方が多くてうれしい」と話す。
「もっともっと新しいビジュアルを見せられたらと思っています」と意気込みたっぷり。
TOKOTOKOは、「『#コンパス』は勝ったらうれしいし、負けたら悔しいゲームだと思いますが、やっぱりテスラらしく、楽しんで使ってもらえたらと思います。
罠のスキルが得意なヒーローなので、嫌がらせをたくさんして、楽しく遊んでください(笑)」とテスラを使うユーザーに向けてメッセージをくれた。
apapico初個展「It’s not started,yet.」
10月20日(金)から、apapico初の個展「It’s not started,yet.」が開かれる。
「絵が毎回本の形に収められるのはどうなのか」という疑問から、作品はフォトアクリルやシルクスクリーン木製パネルなどイラストを越えた表現に挑戦する。
- 開催期間
2017年10月20日(金)~10月22日(日)
2017年10月27日(金)~10月28日(土) - 時間
金:15:00~20:00(最終入場は19:45)
土日:12:00~20:00(最終入場は19:45) - 会場:馬喰町FACTORY
- 入場無料
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