[黒川文雄のゲーム非武装地帯] 第52回: 『スター・ウォーズ』の話題性を活用した欧州ルートボックス規制

Eye

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。無事に2018年になりましたが、この受け止め方も人それぞれでしょう。単に日が変わっただけ、年号が変わっただけだから別にどうってことはない。まして、オンラインゲームやスマホゲームの運営に関わって、普段のキャンペーンをさらに強化したような施策を打ったりしていたら、大みそかも、元日もありゃしません。商売人ならば、人様が休んでいるときこそ、商売のチャンス、勝機の可能性があるというものかもしれない。

始まりは2012年5月5日……

2017年秋ごろから年末にかけて、再びスマートフォンアプリ・ゲームにおけるガチャ騒動が再燃した。それは日本国内からというよりも、海外からのものだった。

日本国内でのガチャ騒動のルーツは、2012年5月5日に読売新聞が報じた、ガラケーでコンテンツ展開を行っていたGREEやモバゲーのソシャゲにおける課金システム。

コインを入れてレバーを回すカプセルトイになぞらえた「ガチャポン」の仕組みをデジタルコンテンツに取り入れたもの、それが「コンプリートガチャ」(以下、コンプガチャ)と呼ばれるものだった。

この報道の後、われもわれもと、数多くのユーザーから消費者庁に苦情が寄せられました。これを受けて、数日のうちに上記2社を筆頭に、コンプガチャのシステム終了を宣言することで騒動は沈静化した……というのがコンプガチャの一連の経緯である。

JOGA+MOF+CESAのガイドライン

その後、悪質なガチャシステムは終焉も迎えたと思われていたが、当然のことながら、これらの騒動に対して何もアクションが起こらないほど業界が硬直化していたわけではない。

さまざまな課題に関して、一般社団法人日本オンラインゲーム協会(JOGA)と、一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)が2016年4月15日に共同での説明会を開催し、ガイドラインを設定。

さらには、家庭用ゲーム系の業界各社で構成される、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は、「ネットワークゲームにおけるランダム型アイテム提供方式運営ガイドライン」を4月27日付で制定し発表し、それぞれの加盟社が独自にコントロールすることを宣言した。

ちなみに、加盟各社のガイドラインへの言及は避けるが、

  • レアガチャの取得の推定金額を5万円以内とすること
  • レアガチャの提供割合確率の上限と下限を表示する

などの規定が発表された、だが、あくまでもガイドラインであるため各社への強制力はなく、各社の判断に基づくものとなった。おそらく現在も、各社の性善説に基づく判断と措置により運営されているものと思われる。

App Storeガイドラインの更新(海外版)

今回、日本の開発運営サイドに寝耳に水だったのは、海外、欧州からの事案による、Appleからの発信だっただろう。

この発端となったのは、『Star Wars バトルフロントⅡ』『オーバーウォッチ』におけるルートボックス(海外版ガチャ。何が出るかわからないボックス型アイテム提供方式)。これは、日本におけるガチャとは異なるものの、原理原則は同じで、課金することによってランダムでほしいアイテムやキャラクターがゲットできるというものだ。

海外向けのAppleのガイドラインには、「ガチャの排出率表記」を明記する項目が新たに追加されている。こちらの運用がなされると「ガチャの排出率表記」のないアプリはリジェクト(削除)されることになる。

今回の騒動は、上記2コンテンツの「ルートボックス」排出によるランダムアイテムの課金展開が「えぐい」というプレイヤーからの批判が相次ぎ、Appleが規制に入った形のようだ。

さらには、全世界的に公開されている映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の話題性もあり、この『スター・ウォーズ』ベースのゲームで規制をアナウンスする効果を見計らったという見立てもできるのはないだろうか。

また、このルートボックス自体が「賭博性」にあたるという議論もあり、その射幸性がプレイヤー一般への扇情的な効果を促進しているという指摘もある。

日本での規制はあるのか? ないのか?

現時点でAppleの日本語サイトを見る限りは、欧米で施行されたルートボックス規制のような文言は見当たらない。

もしかすると、日本はすでに業界団体による規制が入って改善されている、さらには規制が入っているという既成事実があるので、悪い方向へは進まないだろうというApple側の目論見があるのかもしれない。

うがった見方をすれば、世界でいちばん収益性の高い日本のマーケットは今のところうまくいっているので、変に刺激せず、このまま生かさず殺さずでもいいかもしれないというニュアンスの判断がある可能性もある。

しかし、本稿公開後、実際にパブリッシャーでアプリの開発管理に関わっている方から以下のような指摘をいただいた。

AppleのApp Storeのガイドラインは英語版がリファレンスであり、日本語版は単純にそれを和訳したものに過ぎないというもの。

つまり、Apple日本語版サイトに当該表記がない理由は、翻訳が間に合ってないだけということになる。Appleの日本語版は、いつも翻訳更新が遅いため、肝心なところは英語版で確認してほしいとAppleのスタッフからいわれることもあるという。

また、App Storeのガイドラインを用いてアプリの審査をするのはアメリカのApple のみで、日本独自でアプリ審査を行うことはないとのことだ。

このように、今回の案件に限らず、生命線を握っているのはAppleであり、いつなんどき変更が入り、ポータルの管理、規制の従うべしというガイドラインが付記されるかもしれない。これがポータルとしての強みであり、すべての折衝与奪の権利を保有しているという事実である。

それにともって、プレイヤーに対して真摯に向き合っていないような、あくどいアプリやパブリッシャーは当然のことながらなくなってしかるべきだと思う。

2018年も、引き続きご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

※日本国内のアプリ開発者様からの誤認部分指摘あり、文面内容を更新しました。お詫びして更新します(2018年1月9日 22:38)。

2018年も、引き続きご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。