テニスクラブ物語【ゲームレビュー】

テニスクラブを経営しながら世界ランク1位を目指す選手を育てていく異色のシミュレーション『テニスクラブ物語』。本作を開発したカイロソフトはこれまでも『ゆけむり温泉郷』や『開店デパート日記』など、ユニークなコンセプトの作品を数多く手掛けてきており、今作もかなり風変わりなタイトルとなっている。

懐かしい香りがする経営SLGをイマドキのテンポ感でサクサク遊ぶ!

誰かと過去のゲームの話をすると、ちょっとした拍子にジェネレーションギャップを感じることがある。ゲームにまつわる思い出は、当時の年齢や環境に大きく左右されるからだ。たとえば、Aさんにとっては「有給を使って会社を休んで、寝ないで一気にクリアした」ものでも、Bさんにとっては「親が厳しくて1日1時間しか遊べなくて、クリアにすごく時間がかかった」ゲームだったりする。Aさんは1作目からプレイしているシリーズを、Bさんは5作目以降しか知らないなんていうことも。それゆえに、一方的な視点でゲーム体験を語ってしまうと、相手にはイマイチ伝わらない。

回りくどい前説だが、それが、この『テニスクラブ物語』を語るに当たって立ちはだかった課題だ。できるだけAさんにもBさんにも伝わる解説を目指そうと思う。

経営SLGというジャンルの歴史は1980年代まで遡るが、広く周知され、ヒットするようになったのは1990年代後半あたり。数多くのタイトルがあるが、プレイステーションで『ザ・コンビニ』シリーズやセガサターンで『プロサッカークラブをつくろう!(サカつく)』シリーズなどを経験した人は多いのではないか。ザックリいうと、あんな感じの経営SLGが当時の雰囲気で遊べるのが本作というわけだ。

それだけで済ますとあんまりなので、まずは経営SLGの概要を簡単に説明すると、プレイヤーは経営者となって人を雇い、設備を整え、資金繰りし、利益を上げて会社などを大きくしていく。育てる対象こそ多種多様だし、各タイトルの特色となる独自要素もあるが、基本は「経営」をするゲームである。経営者の判断次第では「経営破たん」もあり得る反面、画策したとおりにことが運ぶと、「計算どぉ~り!(ニヤリ)」となってしまう。目標を達成したときの満足感はひとしおだ。

例えばこの施設の場合、収入見込みが7万円なのに対して、維持費用は30万円! 会社の体力がないときに作ってしまうと、すぐにクラブが潰れてしまうことに……

レトロなドット絵とBGMが「あのころ」を思わせる

本作で経営するのはテニスクラブ。500万円を元手に、無名の弱小クラブとしてスタートする。趣味で習いに来るお客さんや試合に出場する選手を抱えながら、設備や人材をテコ入れし、知名度や利益をアップさせ、最終的にはグランドスラム(国際的な4大大会の完全制覇)を達成するのが目的だ。

ゲームスタート時の所属選手は2名。名前やパラメータを自由に設定できるが、特にこだわりがなければ自動で作成してもらうこともできる

プレイヤーはクラブ運営や選手強化、試合のセッティングなどをコマンド指示で行い、時間の流れやキャラクターたちの活動(試合も含む)は自動で実行される。

豪華なグラフィックがウリになりがちなご時世にもかかわらず、清々しいまでにシンプルなドット絵を採用しているのは、前述した「かつて経営SLGを遊んだ世代」に対してアピールしているのだろう。よりタイムスリップ感を出すためか、UIには疑似コントローラも搭載され(使用しなくても操作には問題ない)、BGMはピコピコした電子音! 当時を知る人は懐かしさを、知らない人はレトロゲーム的な新鮮さを味わえるという趣向なのである。

中途半端なドット絵だと「ショボい」印象になるが、ここまでくれば立派な様式美の再現!

現代のスマホゲームならではの手軽さとスピード感

かつての経営SLGといえば、タイトルごとに事情は異なるものの、時間進行が遅い、単調になりがちなどの欠点を抱える場合も……。何より、長時間じっくりと取り組む必要があったのだが、本作は約10秒で1週間が経過するという超加速モード! ボーっと見ていると、あっという間に何週間も過ぎ去ってしまう。

せわしく動き回るキャラクターに働きかける要素もあるので、とてもじゃないけれど半ば放置して「ながらプレイ」するのは無理。むしろ、集中して遊んで短時間で切り上げるほうがいいと感じた。「スマホゲームは手軽にサクッと遊びたい」というニーズに合ったイマドキ仕様である。

なお、データのセーブに関しては、自動セーブだけでなく、試合中以外ならいつでも行える任意セーブも用意されている。任意セーブの処理は一瞬で済むので、急な事情で中断するのが容易なうえ、2つのデータをうまく活用すれば時間を巻き戻すことも可能だ。

練習しているお客さんのフキダシ「!」をタッチすると、そのキャラのパラメータがアップする

経営が安定してきたので放置していたら、テニス協会から使者が来た! 定期的に大会に出場しないと催促されるのだ

「テニスプレイヤー育成ゲーム」という側面も

ゲームのメイン部分は「経営」なのだが、うまく経営するためには試合に勝って実績を残さなければならない。各選手には細かいパラメータが存在していて、試合はそれをもとに自動進行する。そのため、選手の育成やスカウト、出場選手の選択なども手を抜けない。上質なウェアやラケットも欠かせないし、選手をサポートしてくれるスポンサーとの交渉も必要だ。

テニスにはダブルスもあるが、基本的には個人競技なので、各キャラクターの特性を見極めて適材適所で器用し、必要に応じて強化していく。そういう意味では育成ゲーム的な側面もあるのだ。「経営」と「育成」がクラブ発展の両輪となって、最終目標であるグランドスラム制覇へ向けて走る姿をイメージしてもらえばいいかもしれない。利益を出すことばかり考えて、選手への投資やケアを惜しむスポーツクラブが超一流になれるはずなどないのだから!

各選手は、6つの基礎パラメータ(スタミナ、メンタル、パワー、スピード、テクニック、コーチ)と6つのテニスパラメータ(フラット、トップスピン、スライス、ドロップ、ロブ、サーブ)を持っている

試合に勝つと賞金などがもらえるだけでなく、会員数が増えたり、知名度が上がったりといいことづくめ

  • 使用した端末機種:ASUS_Z00AD
  • OSのバージョン:Android 5.0
  • プレイ時間:約2時間
  • 記事作成時のゲームのバージョン:1.0.7

(C)Kairosoft