急速なユーザー数減少から持ち直した戦略が明らかに
『メイプルストーリー』と言えば、冒頭で述べたとおり、2003年4月にサービスが開始された人気オンラインゲーム。
日本においても、同年12月よりサービスが提供されており、スマホ向けタイトルの『メイプルストーリーポケット』(※現在はサービス終了)もリリースされたこともあり、ネクソンは知らなくてもメイプルストーリーは知っているという人もいることだろう。
今回、NDC18に先駆け、ネクソンのパートナー企業向けに行われた非公開イベント「Nexon Developers Conference for Partners 18」にて、メイプルストーリーの長期運用の歴史が語られた。
1990年代後半に流行した、アバターチャットにRPGの要素を織り交ぜた、世界初の横スクロールMMORPGであるメイプルストーリーだが、2003年のサービス開始から2006年にかけては、オンラインゲームとしての楽しさを形成していた時期だという。
ユーザーに受け入れられ、サービス開始後、順調に売り上げが伸びていったのである。
その後、2007年から2009年にかけて、新規職業の追加やシナリオ、世界観を作り上げていった。この時期を「拡張期」と定義しているとのこと。
シグナス騎士団やアラン、エヴァンなどの職業、そして本作で今なお絶対悪として存在する暗黒の魔法使いが登場したのである。
次々にコンテンツを追加していくことで、売り上げも増加していったのだ。
その後、2009年に売り上げの成長はいったんとどまるものの、2010年からは大規模なアップデートを実施。
2010年のBIGBANGアップデートで大幅な成長を遂げ、続く2011年のLegendアップデートの結果、過去最高の売り上げを記録し、本作の全盛期を迎えたという。
そして、2012年にも3種類の新職業、また、新たな舞台となるグランディスが追加されたTempestアップデートが行われたのだが、ユーザー数と売り上げはそれまでとは一転し、減少してしまう。
このビハインドを何とか挽回しようと、アイテムの獲得、成長の楽しさを高め、新規職業やボスの追加など、さまざまなコンテンツ、イベントのアップデート施策に打って出たが、翌2013年はさらに売り上げが減少する結果となってしまった。
この急激な失速について、
- 職業間のバランスの崩壊
- 難易度の上昇
- 過度な課金誘導
- 装備強化システムの失敗
などが原因でユーザーが離れてしまい、売り上げも減少してしまったものと分析。
そこから這い上がるべく、2013年から2015年にかけて、ゲームの体質を改善し基盤を固めることに集中。
キャラクターの魅力を引き出すためのシナリオ改修、ユーザーの意見を多用な経路で吸い上げるための取り組み、ゲームそのものの体質改善を行ったのだ。
メイプルストーリーの面白さの根幹をなすフィールド戦闘にも手を入れ、「ダイナミックフィールド戦闘」と呼ばれる要素を実装、2年間に及ぶ装備強化システムの改修、新規ユーザーの参入障壁を改善、職業のバランス調整など、その施策は多岐にわたる。
さらに、今後の大規模アップデートに備え、メインシナリオの強化も実施したという。
ゲームの改善と同時に、使用したNEXONポイントに応じて特典が受けられる「MVPメンバーシップ」の導入など、ビジネスモデルの改善も実施。
上記のあらゆる面での努力の結果、2014年以降、少しずつ売り上げが回復。
基盤固めがひと段落したところで、2016年に5次転職の追加や新大陸アーケインリバーの実装などが行われた大型アップデートとなる「Vアップデート」を実施。
売り上げも全盛期に匹敵するほどまでに回復するに至ったのである。
サービス開始から15年が経過した現在が、歴代トップクラスの売り上げを記録していることには驚きだが、その背景には大規模なユーザー離脱をどうにかしようとする、開発チームのたゆまぬ努力があったのだ。
メイプルストーリーほどの長期運用タイトルが、ここまで売り上げの幅が激しいのも、見切りの早いスマホゲームに触れる機会の多い筆者にとって、非常に興味深いものであると感じられた。
スマホゲームで長期運営たいとるというと、5~6周年ほど運営しているわけだが、本作と同様に、突然、ユーザーが離れてしまうことも当然あり得る。
本セッションで語られたメイプルストーリーの歩んだ歴史に、巻き返しのヒントが隠されているのではないだろうか。
(C) 2009 NEXON Korea Corporation and NEXON Co.,Ltd. All Rights Reserved.