【西川善司のモバイルテックアラカルト】第16回: スマホをBluetoothテザリングでカーナビ接続して交通情報を取得する

ボクは車自体も好きですが、カーナビも大好物です。よく仲間内からカーナビの相談を受けるのですが、「どの機種にすべきか」の話題よりも、最新のカーナビの多くが搭載している交通情報サーバーへのアクセス機能をスマホ経由で実現するための方法について話題が多いです。

スマホでカーナビ接続する方法

先日、名前にスーパーの付くカー用品店に知人のカーナビ購入に付き合ったときの話です。

カーナビ売り場担当の人が、「交通情報サーバーにはそのカーナビの機種専用の通信モジュールを利用しないとアクセスできません。スマホは使えません」と説明していたので、販売店の人も意外に知らないようです。

結論からいうと、カーウィングス(日産)とかスマートループ(パイオニア)などの交通情報サーバーは、少しコツが入りますが、ちゃんとスマホ経由でアクセスできます。

今回はあまりゲームとは関係ないですが、そんな話題をお届けします。

最新カーナビはユーザー各車の走行情報を集約して交通状況を分析

現在のミドルクラス以上のカーナビは、自車がどこからどこまで走ってきて、どのくらいの時間がかかっていることをサーバー側にフィードバックする機能があります。

これはサーバー側にリアルタイム集積されて、「今、日本全国のどこがどれくらい混雑している」という情報を算出しています。いわゆるビックデータ解析ですね。

この情報(データ)はユーザーが取り出すこともでき、現在案内しているルート上に渋滞があるとわかったときには代替ルートを算出してユーザーに提案することもあります。

このサーバーへのアクセスにはいうまでもなくインターネットを利用します。

といっても、カーナビにLANケーブルを接続するわけもいかないので、携帯電話網などを利用することになります。

これを利用する最もシンプルな手段は、冒頭で触れたような、各カーナビ製品に標準設定された通信モジュールを利用する方法です。

まぁ、これはいってみればモバイルルーターを1回線契約するようなものなので、よほど車に乗る機会が多い人でないと割高な感じになってしまいます。

しかし、現在、我々はスマホを使っていますから、車に乗ったときだけ、カーナビがスマホ経由でインターネットを利用して交通情報サーバーにアクセスしてくれればコストパフォーマンス的にベストです。

交通情報サーバーとの通信を行うための専用モジュール。実はこれ、携帯電話回線(この製品の場合はFOMA回線)を利用するデータ通信機器である

交通情報サーバーへのアクセスにBluetoothテザリング機能を使う

ではなぜ、スマホを利用する方法があまりメジャーになっていないのでしょうか。これには理由があります。

スマホの普及率が急上昇した2010年前後のころは、まだカーナビとスマホの無線接続形態の標準スタイルが確立されておらず、カーナビはガラケー(フィーチャーフォン)と有線接続して、ガラケー経由でインターネット接続して交通情報サーバーにアクセスする設計になっていました。

次第に、ほとんどのスマホにBluetoothが搭載されるようになり、カーナビもBluetooth機能を搭載するようになって、両者をBluetoothで無線接続し、カーナビがスマホ経由でインターネット接続することは技術的には可能になりました。

しかし、すべてのスマホがこの手法に対応しているわけでもなかったため、個別サポートが面倒だったカーナビメーカー各社は一様に「スマホ経由の交通情報サーバーへのアクセスは動作保証しません」というようになったのです。

メーカーが「動作保証なし」といえば、販売店もそんな方法をお客さんにすすめるわけにもいかず、「技術的には可能になった」ものの、一部の「情報通」にしか利用されなくなってしまったのです。

そもそも、Bluetooth経由でカーナビとスマホをつないで、交通情報サーバーにアクセスするのがなんで動作保証外になるんでしょうか。

カーナビがスマホ経由でインターネットにアクセスするためには、スマホがインターネット接続をBluetooth経由でテザリングできる機能をサポートしていなければなりません。

これに対応している機種は、当時は皆無に近く、現在でもあまり多くの機種が対応しているわけでもないので、依然と動作保証はしづらいのでした。

スマホのインターネット接続をBluetoothテザリングするためには、DUN(Dial-up Networking Profile)が必要になります。

これがスマホの多くの機種に搭載されていないことが原因なので、ないならば、そこはそれ、せっかくのスマホなんですから、アプリで追加してしまえばいいのです。

カーナビとスマホをBluetooth接続(ペアリング)すること自体の難易度は高くはない。しかし、接続できても、ハンズフリー通話(音声データ通信)のみの対応の場合が多い

DUNアプリを使って見よう(FoxFiとCobaltblue3)

ボクが使ったことのあるDUNアプリは「FoxFi(WiFiTether w/o Root)」と「Cobaltblue3」の2つです。

いずれも、カーナビとスマホとをBluetoothペアリングしたあとに起動して使うことで、カーナビがスマホ経由で交通情報サーバーにアクセスできるようになります。

日産純正ナビ(カーウィングス)の場合は、動作テストは「渋滞情報ダウンロード」を手動実行するといい

このような画面が表示さればカーナビとスマホが通信できている

ちゃんと交通情報サーバーにアクセスできればこのようなメッセージが出る

パイオニア系のナビの場合は、動作テストは「渋滞情報」-「情報取得」を手動実行するといい

このような画面が出ればカーナビとスマホが通信できている

正しく交通情報サーバーにアクセスできればこのようなメッセージが表示される

FoxFiとCobaltblue3……どちらを使うかは好みによります。

特に優劣はありませんが、ここ4年ほどにわたってのボクのカーナビ数機種、スマホ数機種の組み合わせ経験では、カーナビあるいはスマホごとに相性があって、「FoxFiはいけるけどCobaltblue3はだめ」とか「その逆」とかもありました。

FoxFiもCobaltblue3も数百円の有料アプリですが、試用期間があるのでいろいろ試してから購入する方がいいでしょう。

ちなみに、両方を同一端末にインストールすると、競合して動作がおかしくなることがあったので、インストールはどちらか一方にとどめておくことをおすすめします。

「Activate Blutooth Mode」をオンにすることでBluetoothテザリング(DUN)アプリとしての機能を実践。試用版では30分毎に機能が停止する(手動操作で再開は可能

Cobaltblue3の画面。[ON]にするとDUN機能が有効になる。試用版では1回の通信ごとに機能がオフになるが、有償版だとこの制限が解除される

どちらのアプリもうまく動かないときは、そのスマホに標準でDUNアプリがプリインストールされている可能性があります。

ボクが、ソニーの6.4インチスマホのXPERIA Z ULTRA(au版)を使っていたときのことです。あるときまでは普通に「FoxFi」が使えていたのに、OSアップデートを行ったら急に使えなくなってしまいました。

調べて見たところ、Android OSアップデートの際に、「カーナビデータ通信設定」というau製のDUNアプリがプリインストールされてしまい、これとFoxFiが競合していたようです。

結局、Android OSアップデート以降は、FoxFiをアンインストールしてau謹製の「カーナビデータ通信設定」の方を使っていました。

XPERIA Z ULTRAをアップデートしたら、自動インストールされたau謹製のDUNアプリ「カーナビデータ通信設定」がこれ。「強制終了」することで機能をオフにすることができ、この状態にすればFoxFiやCobaltblue3は使えるようになるが、おすすめはしない

この連載の前回で、FREETELの「KIWAMI」にスマホをMNP機種変したことを報告しましたが、この機種ではCobaltblue3の方を使っています。

現在、一部の機種で採用が始まっていますが、将来的には、多くのカーナビでWiFi接続できるようになるので、そうなればDUNを使ったBluetoothテザリングをせずとも、スマホ自身が持つWiFiテザリングが利用出来るようになって、より汎用性が高くなるはずです。

それまではDUNアプリを使ってBluetoothテザリングを使っていきましょう。