シビアな良作SRPG『The WALKING DEAD No Man's LAND』の生き抜き方

シビアなゲーム評を売りにしている本連載ですが、今回は諸手でおすすめしたいスマホゲームを記事にできるというのは幸せなことです。そのぐらい、このゲームは面白かったんですよ。じゃぶじゃぶに課金したわけでもなく、ものすごい魅力的なキャラに渇望した感じでもないのですが、いい意味でちゃんとゲームになっている、遊ばせるポイントがしっかりとある、そういうゲームなんです。

巷では、一時期ゾンビGOともてはやされそうになったポケモンGO的位置ゲー、『The WALKING DEAD Our World』が異様なヌルさとゲーム内容の薄っぺらさで放り投げる奴が続出する中、同じウォーキングデッドのフランチャイズ(版権)でがんばってる『No Man’s LAND』の出来がよくて、結局ひと夏ずっとハマっていました。

ちなみに、私はこの『The WALKING DEAD』のテレビシリーズもそれ以外の作品も、1秒たりとも見ていません。興味ないんですよね、そういうの。

そんな私がプレイした本作品、雰囲気がしっかりと作り込まれていて趣深く、なんかゾンビが支配する世界で生き残った「生存者」たちが粗末なキャンプで肩と肩を寄り添いながら生き延びていく感があっていいのです。

どうもビデオシリーズに実在で出てくるらしい公式キャラクターは「ヒーロー」として特殊能力を持ち、一方、携帯電話使って探し出す架空の「生存者」はポートレートこそ使い回しなものの、固有スキルもランダムなため、時折ものすごい強烈なキャラが生成されて、この過酷な環境で暮らす人たちの生活に花を添えます。

私がグッと引き込まれたのは、最高ランク☆5として生まれてきた超絶ハイスキル婆さんKellyがウォリアーとして登場したことであります。ウォリアー自体は剣や刀で近接攻撃を行うイマイチ使えないクラスなんですが、ババアが来てくれたんなら話は別だ。

いちばんいい武器持って、ゾンビを倒しまくってもらおう! と思ったら、ウォリアー用のいちばんいい武器がシャベルなんですよね。どうしてこうなった。シャベルを振り回す健康なハイレベル婆さんが大量にやって来るゾンビの首を撥ねながら物資を回収して回っているのを見て、ああ私も人生がんばろうと思い、励みになるわけです。

おそらく、フランチャイズが好きで始めたプレイヤーは、ドラマに出てくるキャラクターをかき集めたくて課金するんでしょうが、ドラマが入り口ではない私はどうでもいいのでのんびり遊ぶわけです……。

が、途中からやたらに敵が強い。これはもう、その辺のお粥のような難易度の和製SRPGとは比較にならないぐらい、容赦なく強くなっていく敵。また、キャラクターを強化するためのXPポイントは、キャラ本体を集めたりレベルアップさせて強くするよりも、武器を強くするためにやりくりする方が大変です。

また、キャンプを維持するために施設を強化するわけなんですが、なぜか必要な資源がトマトの缶詰なんですよね。農場建てるのも通信塔も武器強化用の建物も全部缶詰。いっぱい食え、缶詰。まあ、それはわかる。

ところが、キャンプ集会所の次のレベルに必要な缶詰の数が75万個とかいってるんです。お前ら、缶詰好きすぎだろ。さらに、次の缶詰が93万個とか、この退廃とした世界のどこにそれだけの缶詰が。ミッションで得られるのは缶詰、ゾンビ倒しても缶詰。缶詰、缶詰、缶詰……。いくらなんでも毎日缶詰食べて暮らしてるなんて辛すぎない?

このゲーム、ミッションをおっぱじめるのに一定量のガソリンが必要とされるのですが、いわゆるスタミナであって、10分で1回復するゆったりさの割に、リアルマネーをぶち込んでも都合よくガソリンが増やせるわけではない、というあたりが「あー、分かってるな」って思うのです。

ゾンビを全滅させるよりも、ゾンビをかわして出口に向かう技法も、缶詰とXPと物資っていうわかりやすい3つの資源でゲームサイクルが成り立っているのも、キャラクターよりも武器や防具の方が成長に時間がかかるのも、非常に高いレベルのコンテンツにしようと考え抜かれたものなんだなあと思います。

きちんと抽象化させた結果、缶詰というアイコン1個にいろんな意味を押し込み過ぎて、大量の缶詰で施設が建つというのはアレだけれども。

そして、いずれ飽きは来る……。やっぱり、次の施設に必要な缶詰数を見たときの絶望でしょうか。ああ、また私はババア以下キャラを率いて大量の缶詰を集めて回るプレイを続けることになるのか……。

非常に素敵なギルドに入れたのでゲーム自体はとっても楽しかったんですけど、ここでがんばって缶詰集めても、代わり映えのしないレベルアップしたゾンビ相手に駆けずり回る日々になるのかと思うと、アプリを起動するためにタップするのもしんどくなるんですよ。一時期は夢にまで見たのに。大量に積まれた缶詰を。

ただ、ゲームとしてはお手本になるぐらい、よくできています。世界観も、ゲームサイクルも、バトルシステムも。PvPはあまり盛んではありませんが、それは単にガソリンがタイトであることと、PvPで得られる物資をかき集めたところで、別に新しいキャラが次々と手に入るというわけでもないので、別のゲームモードの方が圧倒的に効率がいいからにすぎません。

過度にガチャ依存ではなく、プレイヤーの工夫で本当の意味でいろんな難ステージが突破できる、そういうゲームに久しぶりにお目にかかれました。私としては100点満点を出したいぐらい、おすすめのスマホゲームです。マジで。

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