からっぽのいえ【ゲームレビュー】

『ひとたがやし』や『ひとりぼっち惑星』などを開発した「ところにょり」氏による最新作が登場! 本作でもその独特の世界観は健在だ。ロボットと人の共生を描いた切ないストーリーを堪能しよう。

すまほしじょう もっとも せつない ほうち のべるげーむ

ゲームは、「人がいなくなった家を機械がいつまでも守り続ける」という表示から唐突に始まる。

これが本作の内容であり、すべてであるといえる。

始めはよくわからないのだが、プレイしていくうちにこれの意味するところと、その重みを理解していくことになる

ゲームジャンルを分類するのが難しい作品なのだが、強いていうなら放置ノベルゲーム。

家に近づく敵をミサイルで倒しながら、物語を徐々にひも解いていく。

ねじの形をした敵が無限に出現する。これをタップ、またはなぞることでロックオンし、指を離すとミサイルを発射する

中央のWi-Fiマークのようなアイコンをタップすると、敵が30秒の間だけ多数出現するようになる。10分経過すれば再使用可能だ

効率は悪いが、一定時間だけ無操作状態になると、ミサイルを自動で発射するようになる。さらに、アプリ自体を起動しなくても時間経過で撃破数は増えていく。

「放置ゲーム」と記したのはこのためである。

補助OSが人間との思い出の日々を語る

敵を規定数まで倒すと、本作のメインとなるストーリー部分が開放される。主人公は、家庭用汎用性ロボット「RJ6388265」とその「補助OS」だ。

人間の感情を理解する補助OSの目線から、彼らと人間が過ごした日々が少しずつ明らかになっていく。

ところにょり氏の作品ならではの、行間の空いたひらがなテキスト。切ないBGMも相まって、なんともいえない世界観を作り上げている

ロボットの中の補助OSという、独特の視点で語られるストーリーは、ときに切なく、ときに温かいもの。「ところにょりワールド」は本作でも全開だ。

母親を亡くした家庭にやってきたRJ6388265たち。二人三脚で「おとうさん」と「みっちゃん」を支えていく

感情のないRJ6388265と、人間の人格を模倣しただけの補助OS。ただのロボットであるはずの彼らが日々の中で少しずつ変わっていく

アップデートの代償は「思い出」の消去

ストーリーを読み終えると、次のような選択肢が表示される。

心動かされるような物語の直後にこの選択肢。「する」を選択しないと次へは進めないのだが……

そう、今読んだばかりの「思い出」を消去しなければならないのだ。

データを消去しなければゲームは次に進まない。消去するほかないのだが、感情移入すればするほどこの選択肢がつらくなってくる。

「する」を選ぶと思い出の1つが消去され、代わりにミサイルの装填数が増える。消した思い出は2度と見ることはできない

本作は、ミサイルによる敵の撃破とこの悲しいアップデートを繰り返していく。「もう次に進めてしまう」という逆転した感覚は、ほかのゲームでは味わえないものだ。

なぜそうまでして家を守り続けるのか

スマホ史上、もっとも切ない選択肢が登場する本作。

物語をメインにしたという印象で、やることはミサイルを撃つ以外ないといっていい。

しかし、それでも面白いと思えてしまうほど、その世界観は圧倒的だ。

人間に近い思考、行動のできるロボットが人間社会に進出しているという少し未来の話が描かれている。なかなか考えさせられる内容だ

選択肢が哀しい一方で、そうまでしてもロボットが、主のいなくなった家を守り続ける理由を知りたくなる。

進みたくはないが、続きが気になる……。そんな魅力的なストーリーと世界観を味わいたい方はぜひプレイしてみてほしい。

  • 使用した端末機種:Galaxy S7 edge
  • OSのバージョン:Android 6.0.2
  • プレイ時間:約2時間
  • 記事作成時のゲームのバージョン:1.0.0
  • 課金総額:0円

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