彼女を作るより難しかったNDCチケットの入手
――本日はよろしくお願いします。まず最初に、クォンさんの経歴やプロフィールを教えてください。
クォン・ドヨン氏(以下、クォン):私がネクソンに入社したのは2005年なので、入社してから12年になります。NDCの仕事に関わるようになったのは2008年からです。
それまでは他業種で人事業務に携わっていました。
NDCが最初に開催されたのは2007年ですので、今年で11年目を迎えることになります。そのうちの10年でNDCの仕事に携わってきました。
事務局長を務めるようになったのは2012年からです。
――NDCにはかなり初期から携わっているんですね。そもそも、NDCが開催されるようになった経緯を教えてください。
クォン:ネクソンは1994年に創業して以来、ゲーム開発を行ってきたのですが、開発者が退職してしまうと、そのノウハウが蓄積されません。
それをどう解決すべきか悩んだところ、社内でセミナーを開催してノウハウを蓄積するという目的でNDCが始まりました。
2007年に社内で試験的に開催してみたところ、参加者の反応がよく、代表理事も次年度の開催に積極的な意思を示してくれ2008年も開催しました。
初年度よりも多くの人が参加してくれて、NDCを続けていく1つの大きなモチベーションとなりました。
人事部としては、こういった社内セミナーは、スタッフの力量開発やモチベーション向上に大きな効果があるということで、1回目から運営に参加していました。
いつの間にか人事部の私が事務局長を務めるようになって、非常に重い責任を感じています。
また、2011年からは、社内だけでなく社外に対しても公開するようになりました。
それ以前も、一部分を試験的に社外に公開していましたが、開発者の間では「彼女を作るよりもNDCのチケットを手に入れることの方が難しい」という噂が広まるくらい評判になりました。
そういった経緯もあり、社外の方にも公開することにしました。
――2011年以前の試験的に参加された社外の開発者の方は、どういった経緯でNDCに参加されたのですか?
クォン:他の会社の開発者の方に、ネクソンがNDCという社内セミナーをやっていることを知り、自分も参加したいという方がいました。
その当時は非公開でしたが、そういった社外の開発者の方からノウハウを共有するというお話をいただいて、2009年にいくつかの会社の開発者の方に公開しました。
――10年もNDCに携わっておられるということですが、これまでのNDCで印象に残っているセッションはありますか?
クォン:いちばん印象に残っているのは、2014年度に行われた、韓国に最初にインターネットをもたらしたチョン・キルナム博士という有名な方のセッションです。
また、博士に加え、ネクソンの創業者で博士の弟子でもあるキム・ジョンジュ氏、現在のネクソン代表取締役社長であるオーウェン・マホニー氏、NEXON Korea代表パク・ジウォン氏というメンバーで行ったパネルトークも印象に残っています。
2012年度には、韓国で有名な漫画家のホ・ヨンマン氏と当時のNEXON Korea代表ソ・ミン氏による、「エンターテインメント産業におけるコラボレーション」についてパネルトークをしたセッションも思い出深いです。
NDCは韓国のゲームデベロッパーカンファレンスですが、技術的な問題を扱う以上に視野を広めて、さまざまなエンターテインメントに拡大してこうと考えているので、こういったセッションが特に印象に残っています。
――では、今年の注目しているセッションやテーマはありますか?
クォン:さまざまなエンターテインメントに拡大していきたいという観点から、イ・ウンソク氏の「第4次産業革命時代におけるゲーム開発」に注目しています。
どういった内容のスピーチになるのか、興味深く見守っています。
――NDCを今後どのようなカンファレンスにしていきたいですか?
クォン:NDCは、まだ世界的なカンファレンスではありません。やるべきことは山ほどあると思っています。
いいカンファレンスになるよう、ユニークな登壇者の方々を募集することが最優先と考えています。
日本の著名な開発者の方も、ぜひスピーカーとしてお越しいただければ幸いです。
学生や日本人にも広まるNDC
――日本で開催する予定はありませんか?
クォン:日本では、すでにたくさんの有名なカンファレンスが開かれているので、今の段階では、やりますとは申し上げられないです。
――セッションを観る側としてNDCへ参加するには、現状どのようにすればいいのでしょうか?
クォン:先着順で募集しています。
限られたスペースで開催しているので、ゲーム業界に携わっている人たちを優先的に募集しています。
セッションは基本的に韓国語で実施されるので、海外の方が参加するにはそこがネックになると心配しています。
――参加者のターゲットとして、ゲーム開発者になりたいと思っている大学生も対象になっていますが、これまで参加した学生からの反応はいかがですか?
クォン:極端な例ですけど、大学の試験をあきらめてNDCのセッションを聴きにくる学生がいるようです。
また、韓国は男性には兵役義務があるのですが、軍隊から休暇をもらってNDCに訪れる人までいます。
学生を対象にサポーターを募集し、NDCの運営に参加してもらっているのですが、このために軍隊の休暇をもらう学生もいます。
NDCのチケットを手に入れた学生は、Twitterのアカウント名でNDCに行くことをアピールするなど、好評を得ています。
今年は、発表を行う学生のグループもありますよ。
――韓国では、学生の頃からゲーム開発を始める人って多いのでしょうか?
クォン:高校生や大学生では結構いるという話を聞きます。最近は中学生でもゲーム開発をしている人がいるみたいですね。
――今年は、日本からクリプトン・フューチャー・メディアとコーエーテクモゲームスがセッションを行います。クォンさんから見て、日本のメーカーの印象はいかがですか?
クォン:今年、GDC(Game Developers Conference)に参加して、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』を絶対にプレイしたいと思いました(笑)が、基本的に日本と韓国のゲーム会社で違いを感じることはありません。
ぜひ日本の方を発表者としてお招きしたいのですが、ツテが少ないので、もどかしさを感じております。
また、過去に何名か日本の開発者の方に発表していただきましたが、話す内容を非常に体系的にまとめて伝えてくださると感じました。
過去にNDCに登壇した日本人スピーカー
- 2009年:三津原敏氏(ミラクルアーツ)「日本のゲーム開発会社の、ゲーム開発プロセス」
- 2011年:稲船敬二氏(Comcept)「傲慢にならずに、挑戦を続けるには」
- 2012年:下田星児氏(サイバーコネクトツー)「ケーススタディ『ASURA’S WRATH(アスラズ ラース)』(PS3/Xbox306):映画のような世界観にフォーカスをおいたゲームにとっての、Unreal Engine3とは」
- 2013年:加藤寛之氏(gloops)「日本のモバイルゲーム市場における、モバイルTCG戦略」
- 2015年:中畑虎也氏(SELECT BUTTON)「『生きろ!マンボウ!』の開発を通じての気づき」
――日本の開発者の方たちへ、何かメッセージをいただけますか?
クォン:私なんかが日本のゲーム開発者の方にメッセージを送るというのは、すごく恐縮な気がするのですが、韓国にはNDCという開発者カンファレンスがありますので、ご縁があれば発表者として登壇していただければと思います。
興味がある方はご連絡お待ちしております。
また、韓国には日本のゲームのファンがたくさんいます。
先日、ソウルで開催されたUnreal Summit 2017では、原田勝弘氏が登壇されましたが、こういった機会が増えていけば、お互いのゲーム産業がより発展していくと思います。
――最後に、NDC事務局長としての今後の目標をお聞かせください。
クォン:NDCはいつの間にか単一企業の行事であると同時に、ゲーム開発者や学会の方たちから多くの関心を寄せられるカンファレンスとなりました。
社会貢献の意味合いも帯びるようになってきましたが、ゲーム産業に貢献できることがないか、これからも探し続けていきたいと思います。
個人的には、もっとたくさんの方が、気軽に安全に楽しめる方法も学んでいきたいと考えていますし、面白い発表者の方をたくさんお招きするのが私の仕事です。
そして、単なる知識共有だけで終わるのではなく、肌で体験できて楽しく参加できる行事を目指して、事務局のみんなと悩んでいきます。
そのために、日本の開発者の方を含めて、たくさんの方々のご参加をお待ちしております。