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■前回のあらすじ
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ぺい様の謀略によりヘイトMAX。
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高度な情報戦により偽情報を掴まされたVVIPに纏う不穏な空気。
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名誉挽回、汚名返上を誓うケンラウヘル(遠い目)
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■激戦の序盤
開幕の狼煙は過去でも類を見ないものになった。
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我が軍の陣地は右上。
我はマップ上では右側の防衛を任されている。
※VVIPでは拠点から見て「左」に位置するため、ここを「自軍左」と呼んでいる。
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出だしこそ相手の数が上だと思ったのだが、直前で敵は移動をしたようだ。
人数の優位性を活かして戦う、我が小隊の得意パターンに入った。
だが我の自信とは裏腹に、耳から流れてくる各所の戦況報告は芳しいものではなかった。
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「敵右はカット維持!」
「敵左もカットね!」
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拠点を奪っていない状況でのカット命令。
これは暗にVVIPの不利な状況を意味していた。
恐らく敵の狙いは我の拠点を最低人数でカットし続けることだろう。
人数をその分敵軍の拠点に回しているのが容易に理解できる。
中央は言わずもがな、互いの主戦力がカットをし続けている状態だ。
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つまりは一番敵の薄い我の拠点が最初に落とせる希望の場所になっているということだ。
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敵の数は少ないとはいえ、ランカー揃いのxGate。
この人数をもってしても拠点を確保できる気配すらせぬ。
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こうなると相手の方が有利になる。
こちらは拠点を確保するための人数を割いているのに対し、相手のカットは最小限。
その最小限でカットが成立しているため、こちらの方がパフォーマンスが低いことは明らかだ。
本来であれば早く小隊を分離し、他拠点への援軍へ行かせたいところだが、それをすると瞬く間にカットどころか拠点を奪われてしまうだろう。
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■陣形
VVIPはサークル戦で最近まで無敗であった。
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だが最近新生されたREBORN相手に敗北を喫している。
昨今の巨大サークル同士の合併により、VVIPの優位性の一つである人海戦術がこれまでのように通用しなくなってきたということに他ならない。
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だが我のような低戦力は集まることでしかその真価を発揮できない。
どう計算してもその枠外からはみ出ることはできなかった。
集まることでしか戦えない。
相手が最低限の人数を我の拠点によこし、無双されたら相手の思惑通りになってしまう。
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各部隊の目標である「拠点確保」「カット」というのは、そこに割り当てられる「人数」と「質(戦闘力)」が相重なってジャンケンのような性質を生み出す。
目標が「拠点確保」であれば自然とリソースをかけなければならない。
「カット」の場合はなるべく最低限のリソースが理想だ。
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現状では拠点をまんまと最低限のリソースでカットし続けられ、その余剰分のリソースで優位を持つ他拠点がとられてしまう事になりかねない。
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繰り返すが、我の小隊は集団でしか真価を発揮できない。
これは言い方が悪かろうが現実である。
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要約すると、
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我々はスイミーなのである。
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絵本のスイミーは本当にいい話だ。
1匹1匹は小さくとも、集団で大きく見せかけて相手を圧倒する。
実に子供に言い聞かせたい教訓である。
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だが、
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現実は非情である。
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こんな状況は何度も経験してきた。
むしろこんなことばかりだ。
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そんな弱者の戦い方も、回数を重ねることで練度を増してきた。
この絶体絶命のVVIPの希望の光は、我が軍、スイミーたちの活躍にあるのだ。
これしきのピンチを乗り切れなくて何が小隊長か。
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ケンラウヘル「自軍左」
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我は小隊に号令をかけた。
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ケンラウヘル「ソーシャルディスタンス!」
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その声に呼応して蜘蛛の子を散らすように広がる小隊たち。
一人は相手の遠距離攻撃が届かぬ距離へ、一人は相手の裏へ、一人は敵増援のさらに裏へ。
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そう、これが弱者の戦い方を続けた者たちが行き着いたVVIP自軍拠点陣形。
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SDS(ソーシャル・ディスタンス・スイミー)である。
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これは敵が少ない時に使用する兵法の一つとして練度を高めておいたものだ。
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ターゲットが分散し、各個撃破されるものの、その間に四方八方から弱者の攻撃を積み重ねていく。
こちらも数が減ったが、相手も徐々に数が減ってきた。
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勝機。
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ケンラウヘル「全員前へ!」
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そう、これが狙い。
これこそ、SDSからの最終進化陣形、
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SDSF(ソーシャル・ディスタンス・スイミー・フォワード)
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もはや魚の形を為していないのは流してもらいたい。
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なるべく拠点の遠くで相手を捕縛し、その間に刻印を狙う。
未だに他拠点は混沌の状態、ここで獲得すれば大きなアドバンテージ。
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拠点近くに残っている敵は残り1名。
明らかに敵のカットよりも小隊の拠点刻印の勢いが増している。
リスポン地点からはこちら側の方が有利。
増援のランカーたちが来る前に取り切らねばならぬ。
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この拠点の敵をなんとか皆で力を合わせて倒し切り、味方が刻印を開始する。
前方の橋からやってくるであろう敵は全て小隊が前に出て取り押さえてくれている。
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ここまでやっておいてまだ1分経っていない。
この1分は非常に長く感じた。
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そしてついに。
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xGateから先手を取ることに成功したのであった。
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「ナイス!」
「GJ!」
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それと同時に120ポイントがVVIPに入る。
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本来であればガッツポーズの1つもしたいところではあるのだが、そんな余裕は一切ない。
自軍左に敵が来ていない以上、他拠点が厳しいのだから。
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選択肢は4つある。
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1つ目、中央は激戦区であり、ここは主戦力にやってもらっているのと非常に取りにくいので増援はしないことを決めた。
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2つ目、敵の右側、つまりはマップでいう左の拠点。
これも対角線のため移動距離による空白時間が生まれ過ぎてしまうので却下。
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残るは逆サイドの自軍拠点側か、目の前の橋を超えた敵左拠点か。
自軍拠点はリスポン地点が近いため比較的有利に働くはず。
我の選択肢は1つに絞られた。
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ケンラウヘル「小隊は敵左へ進軍!」
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■紙一重
即座に敵拠点に小隊を送り込む。
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だが、その直後だった。
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同時に2つの拠点を奪われてしまう。
自軍拠点を取ってから1分もしないうちにだ。
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ケンラウヘル「小隊は敵左拠点引き続き攻撃継続!」
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本来であればもう一方の味方拠点を守るという選択肢が自然な流れかもしれない。
だが一番困るのは敵左拠点(マップ下)に対するプレッシャーがなくなることで、敵左から自軍右へ流れてくるのが最悪のシナリオと判断したからだ。
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2回目のポイント更新。
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その差はたった20ポイントだ。
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すぐに逆転されてしまう、だが焦っても我は何も手助けできぬ。
先行を許してしまうと厳しいのは以前から言っての通り。
中盤からどのような動きをすればいいのか、どこに援軍を派遣すればいいのか、頭の中でイメージを具現化していく。
そのためには状況判断が必要、さらに耳にも神経を集中させる。
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その瞬間だった。
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「自軍右取ったあああああああ!!!!」
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張り裂けんばかりの、報告というよりも絶叫に近い声が耳に突き刺さる。
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「マジかあああああああ!!」
「うおおおおおおお!!」
「ナイスすぎんだろ!!!」
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ここで一気にVCのボルテージが最高潮に達した。
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それとほぼ刻を同じくしてポイント更新が入る。
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540対520。
初動で取った20ポイント。
それをキープしている。
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まさに紙一重。
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そして同時に全員が叫び始める。
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「絶対守れえ江えええええ!!!!」
「カット、カットだ!!!!」
「中央特攻でもいいからカットね!!!!!」
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この20ポイントを守り切ることこそが、VVIP唯一の希望であった。
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■決着
手に汗握るとはこのこと。
どこが薄いか、どこが増援出せるか。
既にどこに人員を配置すればいいのかを秒単位で決断するゲームと化していた。
VCの声が熱はますますと熱を帯びていくのが分かる。
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我の拠点は敵がほぼ来なかった。
それだけどこかに敵を集中させて陥落させようとしているのだろう。
小隊を分隊させて敵拠点、中央、自軍逆サイドと指揮を飛ばし、脳内で作り上げた地図を頼りに戦術を考える。
だがそれでも、お世辞にも状況は有利とは言えぬ状態であった。
常にどこかが危うく、しばらくするとまた別の所から救援依頼が来る。
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最終的に、我は防衛に必要な最低人数すらも増援に出すことを決断した。
この紙一重をなんとか守り切らねばならない。
隙あらば刻印というのがセオリーかもしれぬが、この時ばかりは刻印ではなく「相手を引きつけて少しでも戦力をうちのウィークポイントに割かせない」という動きに集中した。
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怒号、叫び、希望、あらゆる感情が渦巻くVC。
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常に飛び交う指示。
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秒単位で変わる戦況。
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時間の感覚がほとんどないくらい、我の頭の中も興奮状態にあった。
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この膠着と興奮が15分継続した。
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その間、互いに一歩も譲らず。
このピクリとも動かぬシーソー、小石を一個乗せるだけで一気に傾くほどの緊張。
その傾きは確実にこの戦場を勝者と敗者に分け隔てる。
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最後の最後で敵は我が拠点にアタックを仕掛けてきたが、この時には既に完全防衛体制を布いていた小隊が刻印を頑なに拒んでいた。
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20ポイント差。
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激闘。
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「守れ守れ守れ!!!」
「全員バックバックバック!!!!」
「リスポンダッシュダッシュ!!!!」
「勝つぞ絶対勝つぞ勝つぞ!!!!」
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そしてついに。
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VVIP、激戦を制す。
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ブログを思い出しながら書いていたが、この瞬間の興奮は忘れられない。
やってやったぜ!という思いがオーバードライブして、自分で何を叫んでいたかも覚えていないし、誰が何を言ったかすら耳に残っていない。
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だが決して忘れないのは、この思い出であり、この興奮であり、総じて楽しいという感情だ。
このためにMMOをしていると言っても過言ではない。
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長く書き過ぎた。
そしてちょっと遅くなってしまって申し訳ない。
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この場を借りて、xGateの皆に感謝と敬意を。
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本当にVVIPで良かった。
そう思える1日であった。
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■今日のディスタンス
ブログを書きながら自分自身で撮影していた動画を見返していた。
我はふと、もう一つの新たな陣形をしていたことに気付いた。
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中盤はほぼ我は戦闘をしていない。
ただひたすらに指揮をしていたのみ。
15分間、ほぼ指揮。
しかも防衛隊を総動員しての状態。
画面には一人。
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それはまるで、
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群れからはぐれた小魚のようであった。
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以上。