Spider: Rite of the Shrouded Moon【ゲームレビュー】

「クモ」は特徴的な虫だ。糸のトラップを張り巡らせ、ハエやチョウが引っかかるのを待つという捕食スタイルは独特で面白い。映画『スパイダーマン』がヒットしたことからも、クモの特殊性には魅力があると言えるのではないだろうか。本アプリは、そんなクモが主人公のゲームだ。小さな体で古びた屋敷を探検しながら、糸を張り虫を捕食していこう。

不気味で不思議。クモの身になって虫を捕まえよう。部屋中に糸を張り巡らせる空中アクション

本作はクモの生態を忠実に再現したゲームだ。人間が作った屋敷の中を歩いていると、虫が飛んでいるのを見つける。家具の位置関係をうまく利用して糸を張り、虫を捕食しながら屋敷を探検するのだ。クモだって生き物だから、食事しないと糸を作れなくなる。獲物を逃せば自分の命が危ない。捕まえるか、逃げられるか。知略を張り巡らせた自然界のバトルを見てみよう。

クモをモチーフにしたキャラクターはいても、ここまでクモそのものを再現したゲームはないだろう

プレイし始めてまず感じさせられたのは、「クモの多様な行動がタップ操作でうまく表現されている」ということだった。タップした方向へ歩き、フリックすればその方向へジャンプ。クモの体をタップすれば糸発射モードになり、フリックした方向へ糸を飛ばす……といった具合だ。糸で囲まれたスペースが網となるので、虫が引っかかってくれそうな場所を狙っていこう。

スーパーボールを投げたときのような、ビョーンと飛び跳ねるさまが気持ちいい

腹が減っては糸が張れぬ。効率良くトラップを仕掛けろ

捕食した虫に応じてスコアが加算されてゆき、希少なものを捕まえれば点数も高くなる。糸を出せる回数には限りがあるが、虫を捕食できればまた補充できる。現実の生き物と同じように、腹を空かせすぎないよう適宜食事しながら進む必要があるわけだ。逆にいうと、ステージのクリア条件さえ満たせばすべての虫を捕まえる必要はない。コレといった最適解はないので、自由気ままな立ち回りが楽しめるだろう。

引っかかった虫に触れると捕食。パッと消えるだけでグロテスクなシーンはない

ここまで何枚かスクリーンショットを載せているが、きれいなグラフィックにもぜひ注目してほしい。実写映像だと生々しすぎるし、安っぽいイラストだとリアリティがない。そのほどよい中間地点を狙ってきたようなテイストだ。ゲームの舞台となっている屋敷は「ある目的のため秘密結社によって建てられた洋館」で、あやしげでありながら神秘的な雰囲気を醸し出している。

ただ絵がきれいなだけじゃない。そこはまるで本物の世界

驚くべきは、現実世界と連動したギミックだ。スマホの位置情報をもとに、今現在の時刻と天候がゲームの世界に反映される。夕方になればゲーム画面が暗くなっていくし、雨が降ればゲーム内にも雨が降る。そして、夜しか出現しない夜行性の虫、雨の日しか出現しない虫といったものまで存在するのだ。複雑な条件を満たしたときしか現れないレアな虫もいる。一度捕食した虫は標本図鑑に記録されるので、ただステージを進めるだけでなくリアルな昆虫採集も楽しめるだろう。

普段は憂鬱な雨でも、レアな虫が見つかるかと思うと楽しみになりそうだ

標本図鑑を埋めていくコレクション要素もあり、長くやり込める

部屋の仕掛けを利用するパズル、謎解き要素も

さらにもう1つ醍醐味を紹介すると、本作はただ虫を捕まえるだけでなく、部屋のカラクリを解きながら進む脱出ゲーム要素を楽しめる。ゲームの舞台は秘密結社によって建てられた屋敷であることを説明したが、暗号化されたメッセージを解読したり秘密の通路を探したりと壮大な冒険をすることになるのだ。例えば、スイッチに体当たりしてオン/オフを切り替えたり、歯車に乗っかってグルグル回したり、といった形で部屋の仕掛けを解いていこう。

正しいオン・オフを入力することで、先へ進むことができる

今までにない昆虫視点で人間社会を生き抜く壮大なアドベンチャー

1つだけ惜しいのは、本アプリは英語で提供されており、日本語化されていないこと。クモの冒険だからキャラクター同士の会話パートがあるわけではないが、メニュー項目などが英語なので慣れるまで若干手こずるかもしれない。ただ、ゲームの進行に致命的な影響を与えるわけではないので興味を持った方はプレイしてみてほしい。

私たちの日常生活では、クモといえば家の隅に巣を作って汚す邪魔な虫でしかなかっただろう。しかし、このゲームをプレイすればするほどクモに感情移入してしまって、昆虫視点で世界を見つめる不思議な体験ができた。アクションゲームとしてのギミックやグラフィックも完成度が高く、この世界にきっとのめり込めるはずだ。人間としての日常生活をちょっと休んで、クモとしての大冒険にチャレンジしてみてはいかがだろうか。

  • 使用した端末機種:iPhone 5
  • OSのバージョン:iOS 8.3
  • プレイ時間:約3時間
  • 記事作成時のゲームのバージョン:1.0

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