[黒川文雄のゲーム非武装地帯] 第25回: ソシャゲの流刑地

物事に始まりがあるように、必ず終わりがある。中にはあきらめない限り終わりではないという考えもあるが、それもまた1つの終わりではないだろうか……。そういえば、「男の過去は不燃ごみ、女の過去は可燃ごみ」--知人の女性がそのようにいっていたことを思い出すことがある。男は過去に執着し、昨日のこと(女性関係も含む)を思い出しては未練がましく生きて行くことが多いが、女性は過去の出来事そのものをスッパリと切り捨てて明日を生きて行くという。確かに、自分も思い当ることもある。いつの時代も本当に強いのは女性の方かもしれない。

ソシャゲの流刑地

ソシャゲを開発してローンチすれば、ウハウハ(?)と儲かったのも、今はもう昔の話。

ガラケーからスマホへの乗り換えが促進され、「とりあえず、スマホ買ったら何かインストール」バブルも落ち着いた。

結局、数十ものアプリをダウンロードしても、定常的・定性的に利用するのはSNS系メディアであり、あとはメッセンジャー、ニュース系サービスくらいに淘汰されてきているのではないだろうか。

もちろん、ゲームもその淘汰と削除の波を免れることはない。集中して遊ぶのは2、3のゲームで、それも「かったるいなぁー」となってくると削除対象になり、遥かなソシャゲの流刑地送りとなる。

その先に、最近ではセカンダリー市場成るものが徐々に形成されつつある。

しかし、ブックオフやハードオフなどのリアルセカンダリー市場を見ればわかるとおり、要するにごみかどうかは、個人の感性や生活感に委ねられる域に達しており、少ない利ザヤのマッチポンプの生命維持装置を是とすることで、コンテンツの売り手も買い手もハッピーならばそれもよしということだろう

アップルもごみ処理に踏み切った

ソシャゲに限らず、App Storeに導入されたアプリがパブリッシャー側にてメンテナンスされないまま、放置されるケースも多数ある。

2016年初にAppleはそれらの掃除(削除)を行うことを明言したが、秋ごろまで大きなアクションはなかった。

しかし、ここへ来てApp Storeでのゲームの大掃除が始まった。その多くは、導入したがほとんどアップデートが行われない放置ごみのようなもので、いわば自治体のルールに従わない不法投棄ごみに等しい。

Appleは公式には、「審査ガイドラインに適合しないもの」「意図した作動をしないもの」「長期間アップデートされていないもの」、さらには公式には開示されていないが「バックドアなど悪意のあるもの」などを対象にしていると思われる……。

まあ、導入されるアプリの数も星の数ほどあれば、どこまで浄化対策が徹底できるかは今のところは未知数だが、その対応には注目をしたい。

隣のソシャゲは青い!?

では、国内の身近な事例に注目すると、どうかという点も挙げておきたい。

話題性が先行したものの、LINEのゲームの寿命は意外と短い。

いい見方をすればユーザー受けしないものはニーズがない=早めに撤退して新規のアプリを導入するか、今ずでにあるヒットコンテンツに販促集中するほうが利益が稼げるという株式上場会社ならではの合理的な判断かもしれない。

特に、外部協業した事例のゲームが不振なケースは、撤退が早いのが特徴だ。ネクソンとの『LINE クロスレギオン』、gumiとタッグを組んだ『LINE 三国志ブレイブ』、セガと組んだ『フォルティシア SEGA×LINE』などが挙げられる。

開始から終了まで約1年間でのサービスでは、初期開発費とアップデート費用、運営費を加算すると、双方とも回収もままならないだろうが、このまま継続するよりはこのあたりでクローズしましょうという判断が働いた結果だろう。

ちなみに、「LINE NEWS」の月間アクティブユーザーが4,100万人超を誇る強力なポータルといえども、ゲームとの親和性やゲームへの流入率は不明だが、大きな収益化につなげるのは容易ではないということだ。

もちろん、LINE以外にも多くのコンテンツが年末に向けてクローズしている、スクウェア・エニックス『ALICE ORDER』は今年の1月28日に導入されたものの、9月末日で終了した。

パクリゲーム突如終了の真相

すでに述べたように、「がんばってみたけど、ダメだった」事例は事欠かない。むしろ、このソシャゲ戦乱期、ソシャゲ収縮期に、よくぞ資金と情熱をもってエントリーしたとして称賛すべき対象といってもいいだろう。

しかし、中には、安直にコンテンツやキャラクターをそのままパクってリリースするケースもある。

つい先日、導入から撤退まで26時間という記録を打ち立てた『カオスサーガ』(11月15日12:30サービス開始、開発運営:ブライブ)がそれだ。

このゲームは中国で普通にサービス運用をされていたこと自体が驚きのコンテンツで、運営会社は中国、韓国、日本のコンボ会社というダイバーシティぶり。

マニアの間では「中国で展開しているアレは大丈夫なのか?」「まんまFFXIのキャラじゃん」などの問題が指摘されていた。

それを日本側(DMM GAMES)が内容確認をじゅうぶん(?)にしないまま、サービスを開始したことに起因するようだ。意図していたら、それはそれですごいことだが。

内容確認といっても、ゲームに詳しいスタッフが何人かいればわかりそうなものだが、今回の経緯は不透明でよくわからない……。詳しい原因究明を再発防止のため望む。

個人的に、何度かDMM GAMESの方々とやり取りをしたことがあるが、このような事例が彼らをスルーしてしまうとは考えにくい。

開始から26時間というスマホゲームの歴史の中で瞬殺、自爆例としては他に例を見ないカオスの冠に恥じない終わり方だ。

この『カオスサーガ』に関しては、中国で現在の絶賛展開中(?)とのことで、可燃ごみなのか不燃ごみなのかはなんともいいようがない。

しかし、少なくとも今回の件で第三者的な要素はあれども、今日も生まれては消えてゆくこの世の無常さを感じつつ、ごみ処理に自浄作用が働いたことは評価に値する。