今作のゼルダの時系列はどこ?
3月3日、ボクが購入した「Nintendo Switch」は、赤青コントローラが付属するバージョンです。
本体と同時に「Nintendo Switch Proコントローラー」(以下、プロコン)や画面保護シート、HORI製のキャリングケースもほぼ同時に購入しました。
ソフトは『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下、BotW)、『スーパーボンバーマンR』を同時購入しました。
その他『いっしょにチョキッとスニッパーズ』をダウンロード購入しています。
まずプレイしたのは、BotWです。
新作『ゼルダの伝説』シリーズが発売されるたびに、ファンの間で盛り上がるのが、時系列の考察です。「今作ゼルダは過去作のどこにくる?」みたいな話題ですね。
ボクはこのシリーズのファンですが、初期シリーズが展開された時、ファミコンは持っていなくて、携帯機のゼルダもすべてをプレイしてはいませんでした。
なので、自分で深く考察はできないのですが、コアなファンたちの考察を読むのは楽しいです。
ちなみに、1年前に公開された任天堂公式情報としては、下記が示されているようです。
【トワプリHD】…マロだ。これはヒゲのオヤジが持ち込んだ珍品だが…これによると、この物語は時の勇者の勝利の時代とあるな。 時の勇者?…詳しいことはわからんが、みんな緑の服を着てるのは何故だ?…同じブランドだったとしたら凄い商品力だな pic.twitter.com/hmHxA5Lpfc
— ゼルダの伝説 (@ZeldaOfficialJP) 2016年1月20日
これを踏まえた上でも、ファンの間で意見は分かれているようですが、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』や『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』の後ではないか、という考察をチラチラと拝見しました。
今作は、「1万年前から栄えるハイラル王国」は「100年前の厄災ガノンとの戦闘で滅びた」といったキーワードで世界観が語られているので、まぁ、この世界には時のオカリナやトワイライトプリンセスの物語があったのだなぁ、という程度の理解でプレイを始めました。
ちなみに、上記2作はボクもちゃんと最後までプレイしているので、BotWは楽しめそうだとは確信していました。
今作BotWでは、高度な文明の恩恵で100年の眠りから覚めたリンクの冒険が描かれるのですが、そのキーアイテムとして「シーカーストーン」と呼ばれるAR(拡張現実)機能付きタブレット端末が登場します。
シーカーストーンを使って、ゲーム世界をマッピングしたり、あるいは目標地点をマーキングしたりして、シーカーストーンの画面に現れるガイドに従って旅をすることができるのです。
突然、話が脱線しますが、偶然にもほぼ同タイミングの3月2日、PlayStation 4用に発売された『Horizon Zero Dawn』(以下、Horizon)が、今作のゼルダとよく似ていて興味深いです。
Horizonでは、約1000年前に謎の大災厄に見舞われ、人類の文明は石器時代に近いくらいにまで後退してしまった世界が舞台となっていて、設定がBotWと似ています。
Horizonの世界には、機械仕掛けの動物(?)が闊歩しており、人類は彼らに怯えながら細々と暮らしているのです。
BotWでも都市が崩壊し文明も後退していて、街の外には無数のガーディアンと呼ばれる機械仕掛けの殺戮ロボットや魔物が潜んでいるのでよく似ています。
Horizonの主人公は、超文明の遺跡から生まれ出でた少女アーロイです。この点も今作のリンクとよく似ています。
そして、アーロイはひょんなきっかけから、超文明の古代遺跡にて耳に付けるタイプのARデバイスを発見。
それを身に付けることで、ゲーム世界のマッピングを行ったり、機械仕掛けの動物たちの特性や弱点を知ることができます。
BotWのリンクのARデバイスはタブレットで、HorizonのアーロイのARデバイスは耳に付けるIoTガジェットと、形状の違いはありますがコンセプトはよく似ています。
剣や弓を装備したり、ゲーム世界にある素材を採取して組み合わせて新たなアイテムを生成したりしていくようなゲーム性も、BotWと共通です。
変な話ですが、対応ハードを持っていないためBotWがプレイできない人や、BotWをクリアしてしまってBotWロスで意気消沈している人は、ぜひともHorizonをプレイしてみることをおすすめします(笑)。
BotWは自由度の高さが最大の魅力!?
話が脱線してしまいました。BotWに話を戻します。
あまりネタバレが過ぎると怒られてしまうので、そのあたりは触れないようにしておきます。
BotWは、オープンワールド型RPGと呼ばれていますが、任天堂は公式には「オープンエア型RPG」と呼んでいます。
まあ、もともとゼルダシリーズは時のオカリナ時代から、シナリオの進行による制限はあったものの、ある程度行きたいところには行けるゲームシステムだったので、最初からオープンワールド(オープンエア?)だった気はします。
とはいえ、BotWはかなり遠方までゲーム世界が見渡せるグラフィックステムを採用しているので、あらためてオープンワールド(オープンエア?)と呼びたくなる気持ちは分かりますね。
ゲームは、100年の眠りから覚めたリンクを動かして、失われた100年前の記憶を取り戻しつつも、この世界の謎を明かしていき、ゼルダシリーズ定番ともいえるラスボス、ガノン打倒を目指します。
ゲーム世界には、さまざまな動植物や無機物素材が存在し、それらを集め、組み合わせることでアイテムを作り出していくことができます。
作り出したアイテムを売却して金銭(ルピー)に換えたり、その金銭で別のアイテムを購入したりして、リンク(プレイヤー)の装備を強化していく最近のRPG特有のお楽しみも実装されています。
ダンジョンや地形を相手にしたパズルでは、このゲーム世界特有の物理法則を応用していく必要があり、解き明かした際には「俺って頭いい!」という感じのカタルシスも得られます。
ただ、なにより、序盤の冒険をクリアした後で手に入れられる魔法装備と初期装備があれば、基本的にゲーム世界のどこにでも行くことができるのが、過去作と異なるBotWならではの特徴です。
もちろん、ゲーム序盤でのリンクの体力は大したことがないので、順序的に早すぎる地域を訪れて強い敵に遭遇すると瞬殺されてしまいます。
ですが、アクション操作が得意であれば”理論上”は倒せなくはないため、あえての「苦行プレイ」に徹する遊び方もできます。
すでに、いちど正規ルートクリアを終えた上級者の間では、本作の早解きプレイ(Speedrun)が始まっていて、世界記録は50分を切ったあたりで争われているようです。
BotW発売後、ゲーム系まとめサイトから「BotWは1時間半で終わってしまう」というデマが発信されて物議を醸しましたが、すでにそのデマを越えたタイムアタックがなされているのがすごいといえます。
みっちり取り組めば何時間でも遊べるBotWですが、自分のゲームプレイに自信があればほとんどのクエストをすっ飛ばして初期ステータスでラスボス、ガノンを倒せるというのです。
このゲームデザインすらも、BotWの「自由度の高さ」の1要素という気がしてきますね。
BotWのグラフィックス表現を考察する
ボクの専門分野の1つである、ゲームグラフィックス視点でBotWを見てみます。
Nintendo Switchのメインプロセッサは、この連載の前回で解説したように、携帯電話やタブレット端末に向けて開発されたNVIDIAのSoC(System on a Chip)のTEGRAがベースになっています。
なので、メモリバスは64ビット、最新のPS4やXbox Oneが採用する256ビットバスと比較すると、4分の1しかありません。
メモリは帯域は25.6GB/sで、今から約10年前に発売された2006年発売の「PS3」程度にとどまっています。それでも、Wii U(12.8GB/s)の2倍はあります。
筆者が1月のSwitch発表会場で任天堂関係者に確認したところ、BotWのレンダリング解像度は900p(1,600×900ピクセル)で、これをフルHD(1,920×1,080ピクセル)にアップスケールしているとのことです。
レンダリング解像度は、シェーダープロセッサの総合演算パワーはもちろんですが、メモリ帯域にも左右されます。なにしろ計算されたピクセルデータを出力する先はメモリーですからね。
PS3が出力スペック的にフルHD対応だったにもかかわらず、多くのタイトルが720p(1,280×720ピクセル)~900p程度だったことを考えると、BotWの900pというのはなっとくのいく数値です。
BotWの映像を注意深く見ていくと、アンチエイリアス処理が掛かっているところと掛かっていないところがあるような、不思議な見映えになっています。
マルチサンプルアンチエイリアス(MSAA)だと、2Xか多くても4X程度の軽量設定な印象で、もしかするとポストエフェクト的なFXAA(Fast Approximate Anti-Aliasing)をも併用しているのかも知れません。
ここにあまり高度なメソッドが適用できないのは、おそらくメモリ帯域の限界からくる判断だと思われます。
BotWでは、草木の葉々の表現、特に”芦”のような細い草が密集して描かれるシーンが多いのですが、これらは比較的高品位に描かれています。
葉々の輪郭に「拡大ドット感」はあまりないですし、かなり鮮明です。こうした草木などの葉々は、透明領域を含む葉々テクスチャを適用した板ポリゴンで描画されるのが常套手段です。
こうしたオブジェクトを順不同で描画しても比較的高品位な結果が得られるテクニックである「Alpha to Coverage」が、BotWでも使われていると思います。
ただ、草木の物量が多いシーンではフレームレートがグッと下がるので、ワーストケースではメモリ帯域がいっぱいいっぱいになっていそうです。
しかし、BotWはそのメモリ性能の限界に萎縮することなく、近代的なゲームグラフィックス表現にも果敢に挑戦しています。
たとえば、多くの影はリアルタイム生成されています。おそらく技法としては、「デプスシャドウ技法」です。
かなりメモリ帯域の消費が激しい技法ですが、主人公近辺の影生成は、この技法で行われているように見えます。
もちろん、シャドウマップ解像度は結構粗めです。しかし、この粗い影にPCF(Percentage-Closer Filtering)などを適用して、ボカしてうまく”粗”を隠蔽しています。
間接光(環境光)の影生成は、SSAO(Screen Space Ambient Occlusion)で生成されているようです。
これは、レンダリング結果で残る深度バッファを探査して「凹み」と判断できる箇所に影色を付けていくようなリアルタイムレタッチ手法です。
さらに、動的な映り込み表現はSSR(Screen Space Reflection)、あるいはRLR(Realtime Local Reflcetion)と呼ばれるテクニックが使われています。
これは、レンダリング結果としての表示フレームをそのまま参照して、疑似的な鏡像を生成するテクニックです。
両方ともメモリ帯域に負荷の掛かるシビアな手法ですが、これもBotWでは、低解像度で実践するなどの工夫を行ってなんとか実践しているようです。
水面への大規模な映り込みなどは静的な環境マップを使っていたりして、クラシックなテクニックも併用されていますが、総合的に見て、Switchの性能の範囲内で、最高のグラフィックスを出せるようにがんばっている感じが伝わってきます。
おわりに
この他、BotWではサウンド表現がとても優秀でした。
サラウンドスピーカーシステムでプレイすると、環境音が360°から聞こえますし、敵や動物の足音なども、ちゃんと「それがいる位置」から聞こえてきます。
ランダムな位置に出現・消失を繰り返す敵などの出現位置が、音像の定位から判別できるほど優秀です。
しかも、この立体音響表現はヘッドフォンでプレイしていてもそれなりに体験できるのが立派です。
任天堂関係者は「ここまでのサウンド表現はSwitch版ならではの特徴で、Wii U版にはない要素」と説明していましたので、SwitchでBotWをプレイする際には、このあたりにも意識を向けてみると楽しさが倍増するかと思います。
そうそう。Switchがらみでもう1つ。
去る3月25日と26日、BotWに次ぐSwitchの注目作として期待されている『Splatoon2』の先行試射会が行われました。
こちらにボクも参加してみましたが、ゲーム自体の完成度はさすがといったところでした。
グラフィックス表現的にはWii U版の『Splatoon』とあまり変わっていない気がしましたが、果たして製品版ではどうなるのでしょうね。今から楽しみです。
さて、2回にわたってお送りしてきた任天堂、Switchがらみの話題ですが、まとめると、結局「今世代の任天堂はソニーPS4やマイクロソフトXbox Oneなどとの性能面での直接対決は避け、独自路線で挑んできた」という感じになります。
任天堂はかたくなに「Switchは据え置き機だ」と主張はしていますが、ハードウェア的には携帯機なので、明確な性能格差を、どう「ゲームの面白さ」だけで埋めていけるかに注目が集まります。
ハードウェアの性能限界を超えたソフトウェアの誕生は、これまでの固定仕様の家庭用ゲーム機用ゲームでは幾度となく繰り返されてきたので、その意味でのSwitchの進化には今後も要注目だと思っています。
次回は、スマホやゲーム機から映像の録画や配信の話題を取り上げたいと思います。これにちなんで、最近、ボクもYouTubeチャンネルを立ち上げました。
はっきりいって、実験的なもので、見ている人を楽しませようというYouTuber的なサービス精神もなく、だらだら配信しています。
あまり面白いとは思いませんが、ゲームプレイとは関係のない業界話などを話すこともありますので、睡眠導入動画として暇なときに是非ご覧下さいませ。
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