[黒川文雄のゲーム非武装地帯] 第61回: ゲームの中のバーチャルリアリティ『ドラゴンクエストVR』

ビデオゲームの楽しみは、そのゲームの主人公となって、そのゲームの中に存在する謎を解き、現れるエネミーを倒し、ミッションをこなすことにある。シューティング、パズル、RPGなど、ジャンルは異なれど、疑似的な体験をゲームというコンテンツの中でプレイヤーは体感することにある。

ビデオゲームを構築するテクノロジーが進化し、それらを基に繰り広げられる演出やストーリーなども進化したが、グラフィックが高精細、高解像度に達してもビデオゲームそのものの世界に没入、同化することはできなかった。

しかし、ゲームクリエーターやゲームプレイヤーのモチベーションは常にゲームと同化したいと思っていたし、今もそう思っていることだろう。ゆえに、日本のハコニワゲームの先駆けであった『シェンムー』の中にあったような、ゲーム中のキャラクターにゲームをプレイさせるような疑似的なゲーム内ゲームプレイを実装してきた。

このゲームの世界観に実際に入って楽しむこと、ゲーム内のキャラクターに同化してゲームをクリアすることを実現するツールとして、バーチャルリアリティ(以下、VR)デバイスとその空間が実現したのである。

それが今回紹介する『ドラゴンクエストVR』(以下、ドラクエVR)である

このところ、バンダイナムコエンターテインメント(以下、BNE)がVRコンテンツにかける比重はとても大きい。それは、VRアクティビティを新しいアーケード向けのエンタテインメントビジネスとして「当たり前」のものとして導入し、認知促進し、身近なものにしたいという商機の表れだろう。

その一端は、去る2月20日に公告された吸収分割にある。BNEが保有するアミューズメント事業をバンダイナムコアミューズメント(以下、BNA)が吸収するというものだ。

つまり、従来BNEで行っていたアミューズメント、アーケード向けゲーム開発事業を継承し、運営事業と両輪として展開するということになる。おそらく、今まで以上にVRコンテンツの導入や施設の展開は積極的に推進されることだろう。

その積極性はVR向けコンテンツアクティビティの間断のないリリースにも表れている。

2017年11月にVR ZONE SHINJUKUにVRアクティビティ『機動戦士ガンダム 戦場の絆 VR PROTOTYPE Ver.』が導入したばかりであったが、それから半年足らずで今回新作のドラクエVRの導入発表。

ドラクエVRは、BNA(当時はBNE)としてかなり早い段階から開発していたことをうかがわせる。事実、開発に関わったコヤ所長こと小山順一朗氏によれば、スクウェアエニックスの『ドラゴンクエスト』(以下、ドラクエ)担当プロデューサーの市村龍太郎氏とは、VRZONEの導入予定が発表されたことから、双方でドラクエVRの開発構想を模索していたという。

ドラクエは、1986年に第1作がリリース、すでにソフトの累計出荷・ダウンロード販売本数が7,500万本を超える国民的ビデオゲームソフトである。

今回のドラクエVRは、4人1組のパーティーを組んで体験するアクティビティで、いわば我々ゲームファンが待ち望んだ「ゲームをゲームの中で体験する」というものだ。4人1組のパーティーは、戦士2名、僧侶、魔法使いのユニットで、体験用のデバイスは専用の剣と盾、杖を携行する。

私自身は今回、戦士としてアクティビティに参加したが、剣の振り上げ、敵キャラ(スライム)への振り下ろし、剣の荷重移動の感覚はとてもよくできており、攻撃防御のメリハリを感じることができる。

今回用意されたフィールドを移動しながら、剣と盾を持ち、フルにバトルをするのはとてもハードで、後方に控える僧侶と魔法使いをガードすることもアクティビティを優位に進める重要なポイントなので、初めて体験するゲストは注意が必要だ。

それぞれに与えられた役割を理解してゾーマ城を目指し、次から次へと出現するモンスターめがけてメラを放ち、仲間を守り、攻撃呪文や回復呪文を使ってパーティーの仲間と協力してゾーマを倒す。そのVRアクティビティはゲームの結末としてのグッドエンディングと、VRアクティビティの明るい未来があるような気がした。

「ゆうしゃたちよ、たいけんせよ」

開発に携わったBNAタミヤ室長こと田宮幸春氏(左)、筆者(中央)、濵野孝正氏(右)

フィールドVRアクティビティ『ドラゴンクエストVR』

  • 稼働開始日:4月27日(現在稼働中)
  • 価格:3,200円(施設入場料別途800円)
  • 対象年齢:7歳以上 ※13歳未満の場合は保護者の同意が必要
  • ドラゴンクエストVR公式サイト

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