タコの父親にとって人間界は苦労がいっぱい!?
本作を開発したのは、若手クリエイターたちが立ち上げたYoung Horses。ちなみに、彼らは『Octodad: Dadliest Catch』のオリジナルを学生時代に制作し、それが一定の評価を得たため、クラウドファンディングの「Kickstarter」を利用して現在のYoung Horsesを設立。その後、ソニー・コンピュータエンタテインメントなどの協力を得て、2015年8月にPS4版とPS Vita版『Octodad: Dadliest Catch』(日本版は『オクトダッド -タコと呼ばないで-』)を開発し、同年11月にアプリ版を配信した。
無名の学生だったクリエイターたちがアイデアのみで勝負し、PS4のタイトルまでローンチさせたのは、ゲーム業界を目指す若者にとってうれしい出来事のように思える。日本でも同じように、世界を目指す若手開発者がドンドン登場し、もっとゲーム業界が盛り上がってくれればと、筆者のようにファミコン全盛期を体験した人は思うのではないだろうか。
なぜタコが人間になり、さらに結婚式まで挙げるのかは定かではないが、軟体生物のタコにとって地上は歩くだけでも一苦労。ちょっと進んだだけで椅子を蹴り倒し、服を着ようしても吸盤に吸いつくのはなぜかゴミ。コーヒーをいれるだけで台所が壊滅することもしょっちゅうだ。
おそらく主人公のタコもストレスをためていると思うが、そんなふうに思うようにいかないときの何とも言えない気持ちを、本作ではまさしくリアルに体感できる。
やわらかい手足を操作し、日常生活という名のサバイバルを生き抜く
プレイヤーが操作できるのは、腕と脚の2ヵ所。どれが腕でどれが脚かは置いておいて、その2つを交互に操作しながら、人間として平穏に暮らすのがゲームの目的だ。
幸いにも『Octodad: Dadliest Catch』に登場する人間たちはちょっと鈍感らしく、パッと見るだけでは、こちらをタコだと看破することはない。しかし、目の前で物を破壊したり、人にぶつかったりすると、彼らのタコへの猜疑心が増加。それがMAXになると、ゲームオーバーとなってしまう。
人間界で気苦労ばかり増えていそうなタコには、彼の命を脅かす天敵がいる。それが「寿司職人」と「水族館」だ。寿司職人は主人公がタコだと知っており、生きのいい寿司ネタにしようと、虎視眈々とその身体を狙っている。
そして、水族館はタコにとって牢獄であり、そこにいる海洋生物学者は海の生物に詳しく、主人公をタコだとすぐに見破ってしまうのだ。彼らと相対するときは、いつも以上の緊張感をもって、あわてず急いで先に進もう。
短編やユニークなトロフィーなどのおまけ要素も豊富
本作では、クリア後のステージをフリープレイでいつでも楽しめるほか、タコと奥さんの結婚前のデートなどを描いた短編ステージも収録。さらに、各ステージのどこかに落ちているネクタイを探す収集要素や、奥さんの指に指輪を投げ入れるといった面白いトロフィーなど、何度もゲームを楽しめるコンテンツを豊富に取りそろえている。アクションが得意な人でも、かなり長期間にわたって楽しむことができるだろう。
タコという異生物の生きづらさと父親の悲哀を描いた名作
本作は、とにかく操作に慣れるまでが苦労の連続だ。普通のゲームでは当然のようにできる、歩く、持つ、投げる、開けるといった単純な行動が、まるで複雑な知恵の輪を解いているかのような難解なものになっている。
たまに「何でこんな簡単なことができないんだ!」とストレスがたまることもあるが、それはまだ筆者がタコの気持ちを理解していないからだろう。きっと人間がタコの世界にいったら、同じような不便さを感じるに違いない。
また、本作に登場するタコの奥さんと2人の子供は、実はタコの正体を知らない(奥さんや子どもから視線を感じるのはそのためだ)。タコは父親として家族のために働きながらも、常に疑いの目も向けられているのだ。そんなタコの家族がどうなるのか……。結末が気になる人は、ぜひプレイしてみよう!
- 使用した端末機種:iPhone 6s Plus
- OSのバージョン:iOS 8.3
- プレイ時間:3時間
- 記事作成時のゲームのバージョン:1.0.12
(c) 2015 Young Horses Inc.