“孤高の殺し屋”ルチアーノはこうして生まれた
その背に棺を背負い、死を生業とする「ルチアーノ」。
高い攻撃力とすばやい攻撃速度、時を止めるヒーロースキルで『#コンパス』のヒーローでも屈指の使用率の高さを誇っている。
ドクハク
イラストレーターと歌手ふたつの顔を持つ秋赤音
ルチアーノのデザインを担当した秋赤音は、絵師だけでなく動画制作や歌い手としての顔も持つ人気クリエイター。
彼女のniconicoでの活動は、「歌ってみた」動画の投稿からスタートする。
もとからニコニコ動画をよく見ていたという秋赤音は、カラオケが好きで、音楽の授業で歌をほめられることがあったという以外は、特に音楽活動をしていたわけでもなかったという。
当時、初音ミクを使ったネタ曲が多く投稿されていたなか、kz(※1)が投稿した初音ミクが歌うテクノポップ曲「Packaged」を聞いた秋赤音は「これから初音ミクを歌う本格的な歌唱曲が増えていくんだろうなという未来を感じた」とボカロ曲のカバーのきっかけを話す。
※1 kz:ボカロブーム初期から活躍するボカロPで、livetuneというユニット名でも知られる。2011年に「Tell Your World」が「Google Chrome」のCMに使用され話題となった。「Tell Your World」は『#コンパス』では初音ミクのテーマソングになっている
そして、元からロックが好きだった彼女の心に刺さったのがryo(※2)による「恋は戦争」。
※2 ryo:ボカロブーム黎明期をけん引したボカロPで、クリエイター集団「supercell」での活動は、VOCALOIDをメジャー音楽シーンに引き上げた。現在は音楽プロデューサーとしても活動でも知られる
聞いた瞬間、「自分でも歌ってみたい」と思ったと秋赤音は当時を振り返る。
当時17歳だった秋赤音。「学生特有の力が有り余っていた」という勢いで「歌ってみた」動画を投稿。
その後、自身の投稿に手書きPVをつけはじめると、そのスラリとした美しい線が描き出すイラストで、さらに注目を集めていく。
他のボカロPの楽曲やCDジャケットにイラストを提供するなど、歌い手と絵師の両方で活動を広げていく。
大きな転機となったのは、wowaka(現実逃避P)のボカロ曲をカバーした「ローリンガール、歌ってみた」。
その伸びのあるシャウトボイスが、音楽関係者の耳に留まり、2011年、TOY’S FACTORYから両A面シングル「antinotice/花弁」で歌手デビューを果たす。
antinotice/秋赤音
FlashBack/秋赤音
その後、2012年には1stアルバム「ぼろぼろな生き様。」11月には2ndアルバム「DRAGON FLY」をリリース。
そのほか、ゆずのシングル「翔」のジャケットデザインを担当するなど、イラストレーターとしても活躍の幅を広げていく。
また、フランスや香港などで、歌、ライブドローイング、映像で魅せるライブイベントを行い、海外のファンを沸かせる。
そして、2014年に3rdアルバム「SQUARE」を発表。
四角ばかりの街に住む登場人物を描いた7枚イラストをもとにボカロPたちが楽曲を制作。
人気声優がキャラクターボイスを務めるコラボ映像を発表するなど、作りこまれた世界観で衝撃を与えた。
イラスト過程PV「RUNWAY」/秋赤音(CV:朴璐美)
また、第56回グラミー賞で4部門にノミネートされたニュージーランドの歌姫LORDEの楽曲「ROYALS」では、日本向けミュージックビデオにて、ポートレイト・イラストを描き下ろす。
ROYALS/LORDE
現在も、アイドルグループ「ベイビーレイズJAPAN」のシングル「バキバキ」の衣装デザインを手掛けるなど、クリエイターとしての活躍の幅を広げ続けている。
「渋いおじさん」というモチーフへの挑戦
そんな歌う絵師、秋赤音によって生み出されたルチアーノは、個性的なヒーローが集う『#コンパス』でも目立つビビッドピンクな髪色が目を引く、ナイスミドルなキャラクターだ。
スマホゲームに疎かったという彼女は、スマホゲームの進化に驚いたと当時を振り返る。
開発から与えられたキーワードは、「殺し屋」と「亡き妻」。そして、50代のおじさんという設定だった。
実は、秋赤音が発表した作品で、おじさんが描かれた作品は過去になく、「何で私におじさんのキャラを描いてもらおうと思ったんだろう?」と悩んだという。
しかし、「描いたことがないからこそ、逆に面白そう」と、新たなモチーフへの探求のなかにルチアーノのイメージを膨らませていく。
まずは、自身が得意とする少年や青年の顔にしわを加えてみたものの、なかなかおじさんっぽくならない。
「ただのイケメンに見えたら嫌だなという思いはありました。渋くて、妻を亡くした哀愁ある表情を描きたいと思っていました」と話すように試行錯誤を繰り返した。
海外の中高年世代の俳優の写真を参考に、「おじさんはこういうところに凹凸ができるんだな」「ここにしわができるんだな」と、入念な観察を行い、輪郭や骨格の構造までおじさんになるよう研修を重ねたという。
なお、今ではルチアーノというと髪色や衣装のビビッドピンクが特に印象的だが、なんと本来のテーマカラーはダークグレーだったという。
「秋さんらしい感じで描いて」というオーダーに対し、差し色としてピンク色をいれていったのはスタートだったという。
鮮やかな色使いのイラストを持ち味とする彼女によって入れられたビビッドピンクは、ダークグレーの暗殺者というキャラクターのイメージを広げただけでなく、アクションゲームである『コンパス』の世界に適したデザインを生み出した。
背中に棺桶を背負っているという設定は、秋赤音が依頼を受けた時点ですでに決まっていたもので、ここから神父のような服装が合うのでは、と衣装のヒントを得たという。
聖職者が身にまとうカソックをもとに、秋赤音流にアレンジして、ルチアーノの衣装に落とし込むことで、今のデザインにたどり着いた。
テーマソングの第一号となった「ドクハク」
秋赤音によるルチアーノのデザインが完成し、次はMARETUによるテーマソングの制作がスタートした。
実はこの「ドクハク」は、ヒーローのテーマソングとして一番最初にできあがったものだという。
今では『コンパス』ユーザーにとって、おなじみといえる「ドクハク」だが、ゲームのバトルBGMとして考えるとかなり異色な曲調である。
まだ、niconicoのボカロPにテーマソングをお任せするという新しい試みのなかで戸惑いがあった林Pだったが、「非常に心に残るというか、メロディーや難解な歌詞は気に入った」と話す。
あがってきた曲に対して林Pの方から注文したのは、「バトルに合うようにドラムを複雑にする」ことのみ。
MARETUからは、一部のメロディーについて複数のパターンを提案されたそうだが、MARETU自身が一番キャッチャーだと感じたもので作るよう依頼し、独特な雰囲気を持つ楽曲が出来上がった。
ちなみに、キャラクターデザインを担当した秋赤音も、「びっくりしたというか、独特だなと感じましたけど、『静かな怒り』のようなズーンとくる雰囲気がルチアーノっぽい」と感想を話す。
自分だけのルチアーノ像を見つけてほしい
最後に、現在のルチアーノの人気について秋赤音に聞いてみた。
「初めておじさんを描いたこともあり、ユーザーに使ってもらえるのかなと不安に思っていた」という秋赤音だったが、「たくさん使っていただけて、ありがたいなと思っています」と話す。
ルチアーノのイメージについて聞かれると、
「個人的には群れない一匹狼的な存在なんじゃないかなっていうイメージがありますね。
でも、別に人と関わるのが嫌いというわけではなく、失うことを恐れているというような思いがあるのではと思います」と話す。
ただし、一方でファンによる二次創作での様々なルチアーノの姿を、いつも楽しんで見ているという彼女は、自身のイメージが必ずしも正しいルチアーノ像ではないと言う。
「『俺の、私のルチアーノ』という感じで、楽しんでルチアーノを使っていただけたらと思います」と、ルチアーノを生み出した親心をのぞかせ、制作秘話を締めくくった。
新ヒーロー「マリア」も秋赤音が担当
さらにルチアーノだけでなく、9月25日(月)に実装された新ヒーロー「紅の猟兵」マリア=S=レオンブルクのイラストも秋赤音が担当している。
秋赤音らしい鮮やかな紅色に加え、セクシーさとかっこよさを兼ね備えた衣装に、目を奪われる。
さらに、今回実装されるヒーローは、niconicoで活躍する踊り手がモーションを担当する。
マリアの動きを演じるのは、自身も『#コンパス』を遊びこんでいるというみうめ。バトル中の動きにも注目したい。
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