「綺麗なのにゲームとしてつまらない」のがつらい『鉄拳モバイル』の無念さ

ずっと『ストリートファイターⅡ』をプレイしてきた私にとっては、どうしても『鉄拳』シリーズは受け入れられない格ゲー生活でした。でも、友人がどんどん鉄拳をプレイするようになり、羨ましく思っていたところ、大学を卒業した後に『鉄拳タッグトーナメント』が出て、ようやく吉光がしっくりくるようになって長らくプレイしておりました。そして、高齢による腕前の衰退でゲーセンでは勝てなくなり、そのまま任意引退して現在に至ります。

平凡な格ゲープレイヤー人生を送っている私は、そりゃあ『鉄拳』のスマホアプリが出ればプレイせずにはいられないので、普通に落としてきてプレイ開始するわけですよ。

しかしこの、何というか凡百な格ゲー風アプリのテンプレをそのまま踏襲したような、どうにも微妙な出来に涙するわけであります。それまでも、『Gods of Rome』のようなGameloft作品や、DCコミックス作品を題材とした『Injustice』などWarner Gamesのスマホゲームは、かねがね「理不尽な超反応するPC相手に苦労して勝つ」見返りに「欲しいキャラクターが得られたり、パワーアップする素材をかき集めて自己満足に浸る」ぐらいしかゲーム性が担保されていないのでつらいのです。

いや、格闘ゲームをスマホ向けにアレンジするからには、カードバトルや超反応CPUにせざるを得ないのは仕方がないのです。『KOF』だって理不尽超反応ボスの裏をかくルーチンを見つけ出すのもまたひとつの楽しみではありました。

そういう無理矢理な遊び方を強いられるのは致し方ない。対戦格闘は人と対戦してこそ面白い、というのは当たり前で、やはり『ストⅡ』でも向こう側から知らない人が乱入してこないCPU戦は消化試合であって、あんまり面白くないのです。

で、そういう問題からどういうブレイクスルーを『鉄拳』はスマホアプリで果たそうとしているのか、気になって仕方がありませんでした。単なるキャラゲーで終わらない、『鉄拳』ならではのブレイクスルーがあるんじゃないかと思ったんですよね。

私も私なりにかなり期待して10,000円ほど課金し、大好きなブルースの☆3を手に入れ、新キャラのロデオもかっこいいし、わくわくしながらゲームプレイを続けておったのですが。

納得いかない成長システム、大量に課金しないと絶対にたまらなさそうな最上位☆4のキャラたち、不自由なカスタマイズ、延々と作業を繰り返さなければならないイベントボス戦……。

何というか、先行する格ゲー作品が陥ったゲームデザイン上の罠をそのまま踏襲し、罠そのものになっている感じがするのが『鉄拳モバイル』なんですよね。これ、楽しい?

また、ニーナと言えば暗殺者として出て来て、これって初期の鉄拳を作るためにセガから転職してきた人がサラをモチーフに作ったかのような、それでいて平凡な金髪美人ではなく精神的にアレな感じであるはずが、今作では『鉄拳7』同様に普通の美人になってて残念なわけです。

もっとなんかいろんな薬がキマってるようなニーナであるべきなのに。やっぱり、ニーナが主人公になっていた『デス バイ ディグリーズ』とか、システム的には先駆的で画期的なのにあまり評価されずにもったいなかった『アーバンレイン』のような、ならでは感のある作品にしてほしかったです。

変に格ゲーに縛られずに、ゲーム企画をしてほしいと願わずにはいられない作品になったのはどうなのかなと。

どうしてもジャンルが確立してしまうと、そこからなかなか冒険的な作品は出づらいでしょうし、テンプレ的に先行作品を踏襲してしまう部分はあると思います。この『鉄拳モバイル』にしても、本当に綺麗に作ってあるのに、延々とボスボブ殴り続けてマイルストーンボーナスをもらうだけという残念な仕様で、かつすべてはガチャなのでほしいキャラが手に入るわけでもないという廃課金仕様では作業の先にあるベネフィットが体感できません。

正直「ここから、どう面白くしていくのだろう?」という期待半分、「欲しいキャラもそう簡単には手に入りそうにないし、損切りするしかないのかなあ」という気持ち半分、まだオープンになっていない対戦フィーチャーも残念な心持で待ちつつ、しばらくログボだけもらって大人しくしていたいと思います。レベル45まで育ててしまった自分が悲しい。

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