サイゲームズ『ドラガリアロスト』の厳しいガチャと『白猫』殺し問題

いやまあ、東京ゲームショウあたりから、物凄い宣伝量だったので気になっていたのは事実なんですよ。何しろ、版権物ではない新規IPでスマホゲーム大作は爆死事例も多いですし、何といってもサイゲームズと任天堂の両ブランドが並立で書かれるぐらいの気合でしたからね。

実際、蓋を開けてみるとごく普通の劣化『白猫プロジェクト』状態で、ああ、まあこんな感じかと思ったわけです。

でも、いたるところのアイコンは動くし、画面遷移も微妙なもっさり感を除けば悪くないし、声優やキャラクターなど物量に関するところは驚くほどしっかりと用意してある。不必要なぐらい喋る、『Fate/GO(Grand Order)』を意識したような大量のテキスト。

どっぷりお客さんに世界観に浸ってもらおうという意欲をもって作り込みをしました、と言わんばかりの内容で、その点では凄いですよね、本当に。

もう一度書きますが、肝心のゲームの中身を見ると、どう見ても『白猫プロジェクト』です。

任天堂とスマホゲームの操作の特許を巡ってコロプラと「ぷにこん訴訟」で争っているのを知っていると、すったもんだしているコロプラ製『白猫プロジェクト』を殺しに行くために任天堂が「とりあえず、うちと組みたかったらお前がやってこい」とサイゲームズをパシリで使った作品に見えてしまいます。もちろん、業界内の穿った見方でしかないのですが。

そして、操作性では一日の長のある『白猫』のほうが安定しているという。手持ちのiPhone Xでも、ゲーム内の仕様の詰め込み過ぎなのか、操作していても思ったところに移動してくれないストレスがマッハで、まあ慣れと愛でどうにか乗り切ってよ、という部分はあるんでしょうか。

キャラクターをたくさん出すために、ストーリーも引き伸ばしたいから主人公が「第七王子」にさせられ、超子だくさんの王様の末っ子になってしまうあたりはご愛敬としても、とにかくガチャが渋すぎて、しかもキャラクターもドラゴンも竜符もいっしょくたのガチャで確率は極小。

ああ、これは完全に稼ぎに来ました。広告宣伝費を賄うために、そして『白猫』を斃すために。いずれ来るであろうガチャ規制(ルートボックス規制)のために月額課金の仕組みも用意して、ある意味で課金要素全部乗せでやってきたあたりはさすがサイゲームズ。

和ゲーの文脈でできる要素は全部載せて、テンプレ批判上等でがっつり稼ぎに来たのだなあという印象は拭えない本作ですが、ストーリーをなるだけ読ませたい気持ちが強いのか、まずはいったん全部ストーリー飛ばして後でまとめて読もうにも、各章各パートに挿し込まれるエピソードだけのステージも音声ダウンロード必須。

どうしてこうなった……売れている作品を模倣するために物量を押し込んで踏み越えていこうという意欲が前に出過ぎていて、本編ゲームを見やすくしたり、操作しやすくしようという方向には優先順位が低かったのかなあという印象を拭えません。

おそらく、『モンスターストライク』の4人同時プレイを、『パズル&ドラゴンズ』のテンプレ化した合成や育成を、『Fate/GO』の世界観に引き込む仕組みを、『Crush of Clans』の村ゲー要素を、『Crush Royale』のプレイヤー対戦要素を、そして、訴訟相手の『白猫プロジェクト』のようなソフトジョイスティックを使った見下ろし型アクションRPGを――

気持ちは分かるし、日本市場では売れ線を寄せ集めて大量の声優、大量のキャラクター、大量のテキスト、大量の演出と、大量の広告宣伝でぶん回せば、任天堂ブランドもバックについているし負けはないぞレッツゴーって話なんじゃないかと思うんですよね。

その成れの果てが、でかいプロジェクトの巨大な図体を維持するための超渋め、超低確率のガチャ、揃えるまで大変なたくさんのキャラクターやドラゴン。魅力的なものを物量で用意すればするほどに、そのコストはハマったユーザーからの売上で埋めていく以外ないのはビジネスだから仕方がないのでしょう。

しかしこれ、ゲーム業界の禁断の果実そのものであり、崖へ転落する寸前までアクセルべた踏みのチキンレースも同然ですよ。

『グランブルーファンタジー』で不思議なガチャをやって、ガチャ界隈の確率表示義務まで消費者庁当局に踏み込ませたサイゲームズの強欲な悪癖がよろしくない形で出ちゃった上に、任天堂まで巻き込んで、「ティアリングサーガ裁判」もかくやという競合潰しに打って出たぞ!! って見られてもおかしくないです。

たぶん、ここまで来たからには最後まで広告宣伝して拡大し続けることになるでしょうし、もう引き返しは効かないところまでやっちまっているのは気になります。

まあ、なんだかんだ私も課金して遊んで楽しんではいるけれど、業界目線で言うと本当にこんな感じで大丈夫なんでしょうかねえ。心配でなりません。

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